スズキの課題

「VWがスズキを買収しても意味がない」と考える人も少なくないようだ。そんなことありません。日産を見ればよ〜く解る。
あれほど借金まみれになっていた日産だったが、ポテンシャルや資産たるや日本人が意識しているより遙かに高かった。あっという間に黒字化し、莫大な金額を
株主配当としてルノーに献上。

結果、投資した6千億円以上の金額を株主配当として受け取り、以後、日産はルノーの稼ぎ頭になっている。スズキを見ると当時の日産より圧倒的に健康的な経営状況。借金だって皆無。申し分無し。今のスズキの状況を伸ばしてやるだけでVWは莫大な株主配当を受け取れるようになることだろう。

ちなみにスズキの時価総額は9千億円。すでに1800億円(19,9%)はVWが持っている。計算上2700
億円分のスズキの株を買えば過半数に達す。スズキをコントロール出来るようになれば、スズキが持っている工場を使えるようになる。特にハンガリーとイン
ド、インドネシア、タイの工場など有望。

スズキの生産技術は世界有数。VWにとって文句のない生産拠点になることだろう。実はズズキにとってもハンガリー工場は大きな課題になっている。GMとの絶縁でカナダ工場を手放したように、ハンガリー工場もGMとの関連が深い。オペル向けの『アギーラ』を失うと稼働率をキープ出来なくなってしまう。

また、インドネシアは日本の自動車メーカーの激しい競争が始まっている。日産は5
万台だった規模を18万台に引き上げ、ダイハツはスンター工場を年産30万台に引き上げ、さらに10万台規模の工場を新設。ホンダもインドネシア工場の規模を大拡大しようとしているようだ。いろんな意味でスズキは厳しい。

インドもトヨタやホンダ、日産、VWなど他社の参入で伸び悩む気配。
だからこそ「元気なウチにVWと組んで」と考えたんだと思う。VWはスズキを買収するメリットを持つ。けれどスズキは今のままだと厳しい。お花畑思想の日本人的感覚だと「スズキよくやった!」とVWとのケンカに拍手を送りたくなるのだろうが‥‥。

冷静になって考えてみれば、VWと別れてもスズキの課題はそのまま残る。いや、スズキにとって重要な市場でVWをライバルにしなければならないため、一段と厳しい。ただスズキだってしたたか。民主党の前原議員のような「負けるケンカ」はしないと思う。周到な準備をしていることだろう。

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4 Responses to “スズキの課題”

  1. 小林 英弘 より:

    今回の様に解りやすく解説して頂くと、素人の私にも内容がよく理解できてありがたいです(笑)。
    なるほどスズキがVWと手を切っちゃったのは「あまり上手くない」選択だった様ですね。世界市場での自社の現状や他メーカーの状況等を総合的に分析した上で「敢えて傘下に入る」更には「敢えて買収させてやる」方向を選んでいた方が将来的にはベターな選択であった様に思えます。まぁスズキにしてみれば決して面白い話ではないでしょうし、その気持ちも判りますが(どんな組織も上層部の人達というのは保守的ななものですし、人間、高齢になればどうしても思考の柔軟性がなくなってきますからねぇ)。
    今回の話をふまえて考えると、前々回の「GMアベオ」の話で国沢さんが言わんとしていた事も判ります。「未来っぽい内装」「シャープな足回り」「出来のいいシート」「取り回しのいいサイズ&排気量」で「造ってるのが「あのGM」」となれば売れるでしょう。特に「あまり個々のメーカーに対する過度な先入観のない=漠然としたイメージしかない」国々では「GM?あの有名な?いいんじゃない?」となるのは容易に想像できますね。「ホンダのフィット(海外ですからJAZZかな?)って乗り心地がゴツゴツするよ?ボディがギコギコいうよ?ボツ!(←私は元オーナーですから)」とか(笑)。
    …多くの方々のコメントが国沢さんの期待に反して「…」になるのは「お花畑思想」というよりも、単純に、そこまで広い視野で世界情勢を俯瞰して思考するための「知識や情報」を持ち合わせていないからでしょう(←もちろん私もその一人です)。というか、国沢さんのこのWEBより詳しく解りやすくクルマ業界の情勢を教えてくれる情報源ってないでしょう? 『ベストカー』を含むクルマ雑誌も結局は今日本で買えるクルマに関する事しか書きませんから(インドネシアでのクルマ販売事情を大ページを割いて報じても売れないでしょう?それよりも「今度のレクサスIS-Fの改良点は○×△…」みたいな記事を載せるでしょう?)、私を含む一般の素人の方々のコメントが「日本車寄り」になるのは仕方ないでしょう。…まぁ先の養老さんの様な「重度のお花畑思想」の方も世の中にはいるのでしょうが(笑)。

  2. さね より:

    なるほどねえ。優良企業でも単独では生き残るのは大変なんですね。M&Aは成功例もいっぱいあるけど、失敗例もありますし。ただ敵対的買収はどうなんですかね?だれがいいだしたかは知りませんけど、計算どうりいかないのが世の中だし…スズキが納得いく形でなければ将来遺恨がのこりそうだし、まあドライなんだろうなビジネスって。スズキも挑発しすぎだし簡単に株相手にもたせすぎな気も…よほどパートナーとして信頼してたんでしょうVW。ここいらは金だけでなく人間が働いてる訳だし。金だけで企業としてユーザー無視、株主様々マネーゲームだけなら、どうなるんですかね?お互い冷静に話し合ってほしいです。車は民族性が特徴やブランドイメージがでる製品なだけに。VWは国営企業みたいに守れた存在だし、単に1大企業が小さい企業を買収するとは、意味合いが違うんだし…マナーよくモラルをもって、スズキと仲良くしてほしいです。

  3. 那須与一 より:

    日産はホント、ルノーと組んで良かったです。
    品質の日産?提携前もそんなに良くなかった印象ですので、今の個性的なクルマをガンガン出せる日産は好きです。
    スズキとVW。まだスズキに力があったということでしょうね。下馬評と同じですが、会長次第では、スズキの未来も変わりそうな感じです。

  4. 団塊eurasia より:

    買収されるのを含めて、VWの傘下に入るのは得策ではない。 国沢さんの言われるようにVWの狙いはスズキが新興国でもっている工場を自由に使えるようにするのと、インドでの販売シェアだと思います。 ここは、踏ん張り所、スズキの得意な小型(マイクロ)車に特化して単独で世界に打って出てください。 スズキは過去にスズライトTL、初代アルト(軽ボンバン47万円)、初代ワゴンRと合理的で魅力的な車を開発し、市場をリードしてきた実績があります。 2CV、ルノー4、初代パンダのようなシンプルで合理的な魅力的デザインを持ち、且つ低価格で整備の容易な現代の車を開発すれば、絶対に世界で需要はあると思います。 世界の大メーカーとの真向勝負ではなく、独自路線をあゆむ日本メーカーが一つぐらいあってもいいじゃないですか。 
    自信を持って、がんばれスズキ!

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