バイエタノール遠く

今でもバイオエタノールがECOだと思っている日本の政治家や役人は多い。実際、サトウキビやトウモロコシから作るエタノールは二酸化炭素の排出量ゼロの(二酸化炭素をリサイクル出来る)ECOな燃料と言う理由により、世界的な規模で普及していた。いや、正確に表現するなら「普及させようとしていた」。

日本はガソリンに3%のエタノールを混ぜて販売してる。電気自動車の燃焼式ヒーターの実証実験の取材をした際も「1台は入手容易な軽油ですがゼロエミッションにこだわる人も居るのでもう1台はエタノール用を開発しました」。かくいう私だってバイオエタノールをガソリンの代替エネルギーだと考えていた次第。

しかし! 旗振り役となっていたアメリカが方針を変え始めている。理由は二つ。まず「動物用の飼料の高騰を招く」というもの。この数年、干ばつや洪水などで作物の収量が減るとなるや、とうもろこし相場はイッキに高騰。動物用飼料ばかりか、発展途上国だと食料となるのトウモロコシ相場まで上がってしまった。

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E85というエタノール85%の燃料も使えるクルマ

結果、クルマのために餓える人も出てしまう始末。二つ目に価格。大型プラントにより「アルコールの生産コスト」は低くなったけれど、原料となる穀物の相場が上がってしまった。結果的にガソリンより高い状態。そんなことからアメリカでバイオエタノールの消費量伸びず、今や完全にダブついている。余っちゃったのだ。

加えてシェールガス革命により天然ガスの価格は大幅に下がった。こうなると人や動物の食料として使える穀物でクルマを走らせるより、エネルギー源にしか使えない天然ガスでクルマを走らした方が妥当。そらそうだ。かくしてアメリカは『E85』などバイオエタノール濃度の高い燃料の販売を止めようとしています。

おそらく今後も人や動物とバッティングする穀物を使うバイオエタノール燃料は厳しいと思う。ヨーロッパのひまわり燃料だって「ひまわりと食料、どちらが良いか?」という選択を迫られることだろう。ちなみにアメリカは天然ガスにより発電した電気でクルマを走らせる方向を目指した始めた。この流れ、強そうだ。

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5 Responses to “バイエタノール遠く”

  1. アミーゴ5号 より:

    日本では、食用穀物ではなく廃材・雑草の発酵や藻での油生産が研究されていると認識しています。円安でガソリン代が高騰すれば、競争力がでてくるのではないかと、ちょっこし期待しています。
    シェールガスはアメリカ産を輸入するにも、液化や運搬にコストがかかりそうですね。
    日本近海には、メタンハイドレートなる凍ったメタンが埋蔵されているそうですが、採掘技術がまだ確立していないようですし・・・。
    国内は、まだまだ多様な技術競争が展開されそうですね。

  2. 小林 英弘 より:

    さすがはアメリカ。非常に合理的かつクレバーな方向転換だと思います。
    「バイオエタノール燃料業界」もそれなりの政治的勢力だったりお抱え政治家が存在してたりだと思いますが、現在及び将来を見据えて「最善の政策」にグイッと方向転換出来る政策実行力は素晴らしいですね。アメリカの底力を感じます。
    これによってアメリカは「脱石油エネルギー」のクルマを2種類確保する公算になりましたね。
    1. 天然ガス使用のクルマ
    2. 天然ガスで発電した電気を使用する電気自動車
    これでアメリカは次世代エネルギーの分野で一歩先に出ましたね。供給に関する政情不安や紛争によるリスクや埋蔵量等から考えても、石油と天然ガスの「将来性」は比較になりませんので。
    日本はどうなるのでしょうか? 今は全く分からないので、とりあえず純ガソリンDOHC-VTECエンジンをお腹一杯楽しんでおこうと思います(笑)。
    PS:かくも合理的思考の持ち主のアメリカですが、分野が変われば我々日本人には全く理解出来ない思考を持ち合わせているのも事実です。以下は『GUN Magazine』2013年2月号の記事です:
     (前略)声高に野生動物の保全を叫び、日本の捕鯨に対してもヒステリックな反応を見せる欧米の価値観は、日本人からは不思議に見えて仕方がない。
     スポーツ・ハンティングを伝統文化として愛し、大量の家畜を屠殺し、毛皮を身にまとう。アメリカのバッファローを絶滅寸前まで追い詰め、サイやトラなどが絶滅の危機にあるのも、中国人の漢方薬と欧米のハンティングによるものだ。
     今でも南アフリカなどではプライベート・ファームということで高い金をとってゾウやサイのハンティングをさせている。クジラは食べるためだから野蛮というのであれば本末転倒と言わざるを得ない。(了)
    分野が変われば「何でこうなるかな〜」なのですが、まぁ「文化の違い」でしょうね。ただその「文化の違い」を他国に押し付けるのは勘弁して欲しいです。

  3. kine より:

    新潟ではJAが”米”からエタノールを作る試験プラントが動いていて、5%?(これより少ないかも)を混ぜたガソリンをJAのガソリンスタンドで売っています。
    エタノールを作るための多収穫の米(品種は忘れました)も近くで栽培(減反対策)していましたが、去年は見ていない気がします。

  4. G35X より:

    バイオ燃料とシェールガスやシェールオイルとの根本的違いはバイオ燃料が二酸化炭素中立ということです。政治的にアイオワ州など穀物生産州の議員のごり押しでバイオ・アルコールのガソリン混合が行われていますが、一応大義名分があります。 しかし、昨年度の米国国内の乗用車と小型トラックの販売ランキングを見ると1位のフォードF-150 (645,316台)と2位のGMシルヴェラード(418,312台)とトラックで100万台を超え、3位にトヨタ カムリ、4位ホンダ アコード、5位ホンダ シビック、6位ニッサン オルティマと続きます。これでは二酸化炭素削減云々を言っても白々しい限りです。この傾向から判断するとメーカー各社、特に米社、は課徴金を伴う企業単位の平均燃費を極力下げるために嫌々高効率のエンジンを開発しているようにしか見えません。ここに日本メーカーの活路があります。中国とインドの25億人、インドネシアとタイで3億人...この人たちがみな化石燃料自動車に乗り出したら現在の地球温暖化はぬるま湯のようなものです。そこに高効率エンジンの必需性があります。日本メーカーに頑張ってもらいましょう。

  5. ヤス より:

    >E85というエタノール15%の燃料も使えるクルマ
    エタノール85%の間違いではないですか?

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