ホンダ中国に新工場

ホンダは中国で新しい工場を立ち上げるという決断をした。売れ行き好調で依然として慢性的な供給不足が続いているからだ。こう書くと「日本で生産す
ればいいじゃないか」と思うだろうけれど、中国は完成車の輸入に対し高額の関税をかけているため、輸出したら価格競争が出来ない。

一方、日本人からするとホンダが中国に工場を新設するというニュースは決してマイナスのイメージじゃないと思う。されど現実を見ると最悪の流れと言ってよ
い。なぜか? アメリカやヨーロッパなどレーバーコストの高い地域に工場進出する場合は、部品調達率50%を超える程度。

複雑な部品は現地で作るより、日本で作って持っていった方が安いからだ。したがって今まで海外に20万台規模の工場作ると、大雑把に言って日本で10万台作
るくらいの経済効果を得ていた。海外に進出している部品メーカーも、コストの掛かる基幹部品は日本で生産して輸出してました。

しかし中国となると全く状況が違う。すでに円高やレーバーコスト(労働賃金)の上昇などで日本の生産コストは高い。したがって部品の工場も続々と中国に進出
し始めている。中国とFTA(自由貿易協定)を結んでいるアジア諸国の増加により、ベトナムやタイなどに進出する企業も出て来た。

こういった国でレーバーコストの掛かる部品(ワイヤーハーネスやタイヤなど手作業の多いもの)を作れば、日本より安く作れてしまう。当然ながら日本で生産するクルマに使われる部品も、早晩、中国やアジア製に切り替えよう、ということになる。ここまで読んで頂ければ解るだろう。

中国への工場進出は、日本という「国家」にとって全くプラスとならないのだ。いや、日本で生産してるクルマの部品まで海外から輸入するようになったら、もはやマイナスになってしまう。海外で作ったクルマを日本に持ってくるようになってしまったら、部品も完成車も、という超マイナスになるワケ。

工場流失を防止するには3つの方法しか無い。まずレーバーコストの低減。時給を20%くらい引き下げれば国際競争力も出てくる。とはいえこいつに関しちゃ対応不可能に近い。社会主義国家を願うマスコミ達も許さないだろう。日本の自動車メーカーだって期待してません。

二つ目が極端な円高の是正。コンスタントに1ドル=130円。1ユーロ=160円。1元=18円くらいになれば、日本で生産しても何とかなる。これまた財務相が円高の是正をコメントしたらボコボコに叩かれるお気楽なお国柄なので(大手マスコミに責任ある)、全く期待できない。

三つ目に「海外で作れない高度な部品を作る」というもの。実際、ハイブリッド技術や高度な制御システムを持つクルマは日本でしか作れない。でも今や高価なクルマより、シンプルで安価なクルマのニーズが大きくなってきた。落ち込んだ分をハイテクで取り戻すのは容易じゃないと思う。

また、ナビなども高級化より普及化が進み、中国や韓国で生産する程度の製品で十分問題なく使える。「飛び抜けた技術」で勝負しなければ追いつかれてしまう。皆さんどう考えるでしょうか?            

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13 Responses to “ホンダ中国に新工場”

  1. lucky より:

    いつも拝見させて頂いています。
    ホンダの新工場ですが、中国側の出資50%、ホンダ側40%、現在のホンダと中国の現地の会社で10%です。残念ですが、ホンダの看板を付けた中国側の会社と言う事です。
    日本の部品メーカーの件ですが、既に海外移転してる会社も多く、東海エレクトロンなどは海外の部品を輸入し製品にして国内外に納めてる所もあります、昨年のエルピーダメモリーの件のように韓国メーカーを買収など、日本メーカーも頑張ってます。
    日本国内は、政治も経済も良くなる気配がありませんが、頑張って行くしかありません。

  2. いひゅもん より:

    今や、政治に期待出来ない日本企業としてはやむを得ないのかも知れませんが、寂しいですね。昔の様に、新興国で需要が大きくなってきて日本からの輸出だけと言う訳には行かず現地で造ろうのケースならいいのですが。
     シャーシメーカーがこうなると部品メーカーは更に大変なことは言うまでもありません。それでなくとも、トヨタを筆頭に信じられないほどのコストダウン要求が部品メーカーになされているのですからどうなることやら!部品メーカーの再編成も進むでしょうがそれは一般ユーザーにはあまり影響がないでしょうが更なる国内空洞化も避けられないでしょうね。部品メーカーも10年以上前から、その構成部品の一部を海外子会社から輸入する政策を進めてますが最悪は完成部品まで全面移管することもあるのかと空恐ろしくなります。国内は本社と開発機能だけになるのでしょうか?
     国会が国策を論ずる場でなくなっている国の国民としても何か出来ませんかね!
     これまでも、企業努力や技術力で何とかして来たのだから多少の傷は残しても企業は生き残ると期待してはいるのですが・・・。

  3. samine より:

    堅いコト言わずに、素直に「円安が望ましい」と言ってくれた菅財相には個人的には拍手したいですね。現実的に閣僚の誘導発言は一定の効果が認められるようですし。政府は市場不介入が望ましいと考える人が多いのでしょうが、金融危機以来ですが、現実に日本の円は不当に高いのですから。
    逆に中国の元は不当に安いくらいですが、中国政府は日本がプラザ合意で高度成長を止められたのと同じ轍は踏みたくないのでしょうから、暫くはこのままでしょう。
    しかし、政府や世界に虐げられながら、今だにコストダウン等「頑張らなきゃ」と言っている日本人を見ると涙が出ます[E:weep] クソ真面目も良いのでしょうが、たまには金融市場の我が国に不利な状況を打破する様、政府に怒りをぶつけることも必要でしょう。
    日本人はもう学習すべきじゃないでしょうか?世界ではゴネ得は「常識」で、そうでない日本だけが「非常識」だと[E:coldsweats01]

  4. まつもとちえこ より:

    昔、日本車をハンマーで叩き壊して火を着ける、そんな映像を見た事が有りますけど・・・。
    今の日本で、ユニクロの服を燃やしたり、エイサーのPCを叩き壊すだなんて、見た事有りませんね。
    同じ保守同士が足の引っ張り合いをして、利権を守ろうとする。
    それがこの国の本質・国民性なんでしょうから、なるようにしかならないんでしょうね。

  5. 小林 英弘 より:

    う〜ん…難しいですねぇ…。確かに「コスト」だけを見れば中国等がイイのでしょうが、それによって日本の産業が空洞化してしまうのはちょっと…と思いますが。でもクルマ会社は所詮一般企業ですから、利益とコストを考えて方針を決めるのは当然でしょう。要は政府がこのような状況をどう考えて、どういう処置をするかでしょうね。本当に日本国の未来を考える政治家の出現を待つしかないのでしょうね。企業は企業の論理で収益UPありきの行動を起こす訳ですから…。さて!民主党政権はどう出ますか?。多分何もしないでしょうが…(笑)。

  6. 日本海3号 より:

    ご懸念のほとんどは、近い将来、元が切り上がることで解消されるでしょう。そうしないと、中国も持ちません。現在の中国の繁栄は、10年、慣性も含めて20年は続くでしょう。その間、どうやって彼等に物を売るかを考えるべきです。
    中国の出生率をご存知でしょうか?中国はある時点から、急速に少子高齢化が進みます。それに伴う政治的混乱もあるかもしれません。中長期的に、中国は脅威ではないと思います。日本としては、ここ10年、踏ん張れるかどうか、正念場ですね。10年後、大陸から英知が渡ってくる日本になっていれば、もう一度高度成長出来るでしょう。

  7. 松田 より:

    > エイサーのPCを叩き壊すだなんて
    細かい話ですがACERは台湾の企業ですよ。
    台湾じゃ日本車のCMで日本語をバンバン使ってるぐらいですから中国みたいな事は無いでしょう。

  8. 阪神ファン より:

    中国は侮れないと思う反面、数年前の国営遊園地を思い出します。ミッキーやドラえもん姿がいた、あの遊園地です。また、社会主義国家ですが資本主義国家の企業がたくさんあり複雑そうです。
    円高は輸出企業にとって良くないかもしれませんが、個人消費にとってはプラスではないでしょうか。
    原油価格が少しづつ上昇している中、最近までガソリン価格の変動が小さかったのは円高のおかげだと思います。原油価格が現状維持だとしても円安方向に行けば、間違いなくガソリン価格は上昇するはずで、それが様々な価格に反映され物価が上がると思います。
    円高・円安どちらにもメリット・デメリットがあり難しいところだと思います。マスコミは、どちらにしろ叩きにかかると思います。
    そういや中国製のパソコンが売れていると新聞記事を見ました。

  9. あーさん より:

    部品コストの低減
    部品コストはレーバーコストが下がっても材料コストより下がる事はありません。
    材料コストを下げる為に樹脂化などを検討する。
    部品の樹脂化は簡単ではありませんが樹脂化が進めば部品コストの低減と軽量化が可能です。
    部品点数の削減
    部品コストが下がり、組立工数も少なくなるのでレーバーコストの低減になります。
    レーバーコストが原価の数%以下になれば日本国内の生産も可能です。
    特許
    ハイブリット技術のように基本特許を取得して他社が作れないようにするか特許収入をえる方法もあります。
    法人税の低減
    日本の法人税を中国並みの25%とは言いませんがドイツと同じ約30%以下にするべきです。
    税収の不足分は消費税を上げても良いと思います。
    本当は自動車関連税が税収の20%と偏った状態も是正してほしいのですが・・・・
    日本メーカーは、設計と製造のすり合わせを得意しており改善活動を国内でやめる事はないでしょうが、高度な部品(低コスト高品質)を高度な生産技術で作る事もしてほしいと思います。
    年内に円安になるなど期待出来ません。数年先には人民元が高くなるでしょうが待てませんので自動車メーカーが努力するしかありませんが、政府も空洞化しないような政策が必要です。

  10. まつもとちえこ より:

    >ACERは台湾の企業ですよ。
    無論知っています。
    PC88やFM-7を駆逐したのは台湾メーカーだと思っているので書いただけです。
    国内で珍しくイメージ戦略に成功した、シャープの亀山工場もすでに中国に売却される(された?)様ですし。
    別に中国に限らず、どんどん浸食されていくのを憂慮しているだけです。

  11. 国沢光宏 より:

    まつもとさん>ユニクロの服を燃やすという意味は? 

  12. まつもとちえこ より:

    >ユニクロの服を燃やすという意味は? 
    店内ほぼ100%中国製の製品という意味です。
    それをごく普通に当り前に受け入れる。
    日本車を壊し火を付けて自国車を守ろうとしたアメリカとは違うんだなという事です。

  13. とし より:

    財務相の円高是正発言なんてありましたっけ?
    民主党政権になってから、円高容認内需喚起で
    マスコミがフルに擁護していたと思いますが。
    民主党政権は本当に最悪で、企業は皆外に出て
    行きますよ(-゛-メ)
    もしかして、菅さんの事仰ってますか?
    あの人はノンポリだと思います。

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