ホンダ伊東新社長

ホンダの伊東新社長の共同記者会見が行われた。話を聞いていて意外だったのは、本田宗一郎イズムを強く打ち出してきたことである。もう少し解りやす
く書くと「迷った時は宗一郎さんならこうしただろう」と考え、判断していくということ。私は以前から「そうしたらいいのに」と書いてきました。

例えばF1。伊東新社長は明確に「宗一郎さんなら現在のF1に興味を示さないだろう」と言い切る。「けれど新しい概念での競技があるなら参加することを躊躇
わない」。その通りかと。クルマ作りについても、ハイブリッドに主軸を置く。そして小型車が大事だと言う。NSXの開発に関わった経歴を持つものの、動力性能にこだわらない。

2輪については「他と違う商品を作りたい」。徹頭徹尾、私がイメージする宗一郎さんの考え方であります。なぜか? 記者会見の後、じっくり考えてみた。私は宗一郎さんの人物像をプラス面でしか認識していない。マイナス面を知らないからだ。おそらく伊東新社長も同じなんだと思う。時期的に生身の宗一郎さんを知らないハズ。

キリスト教もイスラム教も、教祖の没後しばらくは、様々な解釈あって揺れたと言われている。しばらく後の世代の人たちによって教典である聖書やコーランが完成し、洗練されてきた。ホンダの場合、2代目社長である河島さんは宗一郎さんの教えをキープ。しかし3代目社長の久米さんになって、大きく方針変換します。

宗一郎イズムからの脱却を計るのだ。これは狙い通りにならず、メディアからも支持されなかった。私自身、久米さんの話を聞いていて面白いと思ったことがない。けれど4代目の川本さんになり、再び宗一郎さん的になっていく。川本さんの時代、ホンダの業績が急回復する。川本さんの話はめちゃくちゃ面白かったで
す。

続く吉野さんと福井さんは宗一郎イズムというより、普通の企業のような路線を選択する。イケイケどんどんの時
代だったので、結果的に悪くなかった。されど今や再び真剣勝負の時代。企業は理念を持っていなければダメだと思う。河島さんや川本さんより”洗練された宗
一郎像”を持つ伊東新社長の理念は、私から見ると気持ちよい。

実は一つだけ伊東新社長に聞きたいことがありました。「技術の蓄積をどう考えるか?」ということ。宗一郎さんが残せなかった教えの一つは「技術の継続」であります。というより初代だったので、継続や蓄積など無かった。されど今やその気になれば「過去の失敗に学ぶ」ことだって出来る。なのにホンダを見ると、経験を活かしておらず。

「浅い」と言い換えてもよかろう。インサイトを見て「浅い」と感じてしまうのだ。経験に捕われない新しい考え方も大切ながら、動かせない真理や定説というのもある。そいつを次世代に伝えれば、高い位置からスタートを切れ、より技術を深くすることができるんじゃなかろうか。伊東新社長のファーストインプレッショ
ンは120点であります。

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6 Responses to “ホンダ伊東新社長”

  1. 5108 より:

    ホンダがやっと忘れていたものに気がついたのですね。
    宗一郎イズムを基にして、物を作る。車、エコ・カーだけでなく、ソラー・パネル、ロボットなども、ホンダらしさを織り込んだ製品を世の中に送り出して欲しいものです。
    私の中の本田宗一郎は、負けず嫌いの人です。二十数年前、ヤマハと国内トップ・フォ-ミラを争っていた頃、富士のロイヤルBOXでお忍びで予選を観戦しているのを見ました。その時、ヤマハにポールを取られましたが、その後驚異的にホンダは復活しました。きっと、工場で大きな雷が落ちた結果だと信じています。

  2. アマチュア部員 より:

    「小型車が大事」伊東新社長、とてもいいお考えのようですね。
    まぁ、現在のメインマーケットは中国や北米だったりするので、私のような好みのユーザーはグローバルマーケットの中では少数派なんでしょう。
    それでも日本的なサイズのクルマに力を入れてくれるのでしたら大歓迎です。
    しかし、ただ5ナンバーサイズだったらいいってもんじゃないことは何度も書かせてもらっていますね。
    インサイトは何度か試乗しましたが、やはりモーターのみで発進することが出来ないのが一番の問題だと感じております。
    フットブレーキから足を緩めた時点でエンジンが掛かる、それからクリープする力が発生する。この一連の動作に1〜2秒のタイムラグが発生するので、特にSTOP&GOの多い都市部で運転リズムが乱される感じがします。慣れないと極低速での右左折でギクシャクした運転になることもありました。
    その点、モーターのみで発進加速できるプリウスはそういったギクシャク感は皆無ですね。(私が試乗した範囲では)
    私が心配なのはインサイトやプリウスに限らず、各社の新型低燃費車の耐久性です。エンジンを止めたり掛けたり頻繁にする訳で、素人考えでは、それだけでも耐久性にマイナスのように思います。
    よくメーカーの方は「すぐ壊れるようなものを売れば、自らの首を絞めるようなものでから、耐久性は問題ありません」と仰います。しかしどうでしょうか?
    しっかりテストした筈?の直噴リーンバーンエンジンにカーポンがたまったり、燃費効率を重視するため採用したCVTのスターティングクラッチからジャダーが発生したりと、ちょっと思い出すだけでも、かなり自ら首を絞めているクルマがありました。
    おそらく、目標性能(燃費性能)を達成するには無理をしないと出来ないのかもしれませんね。
    「ドライバビリティーも耐久性もコストも損ねず燃費性能を上げるのは魔法でも使わない限り無理!」と半ばヤケクソになった開発者が上記のような不具合車を作っちゃったのかなと想像しております。
    いずれにしても、ハイブリッド車はもう少し待つと多様なニーズに対応する車種が続々と登場するのではないかと思っております。

  3. しろとら より:

    伊東新社長は、初代のCR-Xにも関わられていたのですね。
    20数年を経て、CR-Zをリリースされるのは、感慨深いものがあるのではないでしょうか。
    個人的には、ハイブリッドなしの軽量CR-Zに乗ってみたいのですけれど。

  4. Tomo より:

    本田宗一郎イズムにこだわるとうことは、
    逆にすこし大丈夫なのかなと不安感を感じます。
    それは、本田宗一郎が生きているときは、
    そこにはカリスマがあり、つるの一声で物事がきまったのかもしれません。
    また、そのときのホンダと、
    今のホンダでは規模が違いすぎると思っています。
    そして、
    新社長のつかみとしてはよいかもしれないですが、
    いささか経営者としては、無責任な発言に聞こえました。

  5. アミーゴ5号 より:

    元来ホンダは、世界中の庶民のために商品を開発販売する会社だと思います。
    かつて宗一郎さんが社報に書いた三つの喜びは「造って喜び、売って喜び、買って喜ぶ」の順番でした。
    でも最近のホンダは、喜ぶ順序が「売・買・造」になりさがっていましたよね。
    現在会社として掲示している本当の順番は「買・売・創」になっており、順番と表現が変わています。
    そもそもホンダのアイデンティティーは「造」であり「創」でしょう。本田技研工業は物造りのプロです。お客様本位はわかるけど、製造業の企業理念なのに「造・創」が最後っておかしいですよ。
    企業理念なんだからプライドを持って、かつて宗一郎さんが社員に呼び掛けたオリジナル「造・売・買」で、世界に宣言して勝負欲しい。
    「俺らは、独創的でECOで安くて良いものを造って、お客様に喜んで使って頂く事が仕事なんだ!買ってもらう事ばっかり考えてたら、お客様の期待を遥かに越える商品なんて造れっこないだろ!このバカヤロー!!」って、宗一郎さん、天国で叫んでいると思います。
    ちなみに直近でも、インサイトにターボを搭載して、排気エネルギーの回生と高性能の両立を図るとか、円高なんだから欧州シビックタイプRを200万ポッキリで売ってみるとか、クルマ好きがワクワクする事が経営判断でいくつも出来そうです。
    伊東新社長、是非とも一般庶民をいーっぱいワクワクさせてください!早くしないと、ホンダファン達が欲求不満で、プリウスに流れちゃいますよ。

  6. ijiok より:

    マツダがトヨタと組むことが報道されましたが、
    やはりインサイトよりプリウスを比べてでしょうか?
    それとも、デンソーが絡んでいるのか?
    ところで、レクサスハイブリッドのニュースで、たまたま国沢師匠を初めて拝見いたしました。
    予想していたよりも、紳士的な方で、女性的なお声なんですね。
    文面からのイメージでは、少ししゃがれていて声が大きい方と想像していました。
    我ながら勝手ですね。失礼があったらどうぞお許しください。

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