ホンダF1厳しい

F1ヘレステストの4日目が終了。マクラーレンホンダは厳しい状況を抜け出せないまま、簡単に対応出来ないタイプの燃料系トラブルにより早めに切り上げることになった。ここまでの流れを見ていると「初期トラブルはどこのパワーユニットでも出た。仕方ないかもしれない」と思えるものの、だとしたら「開発に専念し1年遅れの参入」というメリットは全く無いということになる。

特に信頼性や電気関係の技術を売りにしている日本の自動車産業からすれば、キチンと走ってナンボの評価。ちなみにパワーユニットが安定して稼働しないというアブダビのテストで出た大きなトラブルは、ホンダ筋によれば「マクラーレンが電気関係をテスト直前に変更したため」ということだったけれど、ヘレステストの1日目と2日目も同じような状況になってしまう。

3日目は午前中だけ走れたが、やはり午後はすぐに対応出来ないトラブル発生のためテストをキャンセル。4日目になり「5周くらい走ってピットに入る」を繰り返すという、本来なら1日目に行う予定だったろうデータ取り走行を始めたが、やはりトラブル発生で終了。4日間で79周しか走れなかった。このうち、半分以上はアウトラップとインラップ。走れたのは3分の1くらいだろう。

ヘレステストの4日間で行わなければならない内容は多岐にわたるけれど、パワーユニットのセッティングに時間を取れなかったのが辛かったと思う。ホンダにとってたくさんの課題を抱えるアンチラグの使い方は、最も煮詰めなければならない点だと考える。WTCCの場合、WRCのノウハウを持ち込んだシトロエンは最初からトップクラスのパフォーマンスを見せた。

マクラーレンホンダのエンジンは排気タービンと圧縮タービンの距離が常識では考えられないほど長い。タービンの回転数を排気ガスで急に高くしようとしたら、二つのタービンを繋ぐシャフトがねじ切れてしまう。そこでモーターを使ったシステムで常時タービンを高い回転数に保つ。このシステムがアンチラグにもなる(アクセル開けてからトルク出るまでの時間を減らすシステム)。

アンチラグを効かせすぎればアクセル戻しても全くエンジンブレーキが掛からない。そこでモーターを発電機として使い回生制動を行うのだけれど、効率良く回生させようとすると、ブレーキフィールを犠牲にしなければならない。これまた複雑。セッティングは走り込まないと出来ない。だからこそ初日は走って書き換え。走って書き換えという作業をしなければならないのである。

タイヤの摩耗や燃料搭載量についてのデータはマクラーレンが持っていると思うが、とにかく1レース分の距離をキチンと走れないことにはいかんともしがたい。開幕前、マクラーレンはホンダに対し、あまり良くない意味で「今までと違う」という印象を持っていたという。ホンダ社内でも「このままで大丈夫なのか?」という意見が激しく出ている。危惧した通りになった。

エンジンと車体両方を作った第3期のチャレンジも最初から様々な意見がホンダ社内で出ていた。思い切って体制を変えようという意見続出だったのに、そのまま続けてしまう。最終的には「いかんともしがたい」ということになり、ブラウンにシャシ開発を依頼。モータースポーツに「れば」「たら」は無いけど、もっと早い時点で体制を変えていれば全く違う結果になっていたかもしれない。

F1専門のメディアが楽観的な評価をするのは当然だろう。ホンダF1ファンからすれば、厳しい意見なんか聞きたくないでしょうから。でないと本を買ってくれないし。マクラーレンホンダ好きは私の情報など全く気にしなくてもOKだ。ただ一般的なクルマ好きからすれば、甘い話だけでなく厳しい情報も聞きたいことだろう。さまざまな情報を得て、最後は自分で判断すればいいと思う。

伊東社長にインタビューした時にF1について聞いてみたところ「今回は長くやります」。もしかして「参戦直後から絶好調」という状況は難しいかもしれないが、ダメなら早めに体制を刷新して頑張ってほしい。現時点で一番フラストレーションたまっているのは、すでに今のF1の開発体制を厳しく評価しているホンダ社内の人達だと思う。

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