中国市場の魔力

以前から「韓国や中国勢が驚異である」と書いているけれど、中国市場の「伸び」や「大きさ」は古い企業の持ち味さえ変える
パワーを持っているかもしれない。好例がVW。この会社、直近の20年間は海外で大成功した経験を持っていない。アメリカ市場でさえ伸び悩んでしまっている。よってガンコだった。

すなわち「ドイツだとこの性能が必要なので変えるつもりはない」という主張を日本を含めたどこの市場でも繰り返
してきたのだ。しかし! 今や中国はVWにとって最も大きな市場に育っている。昨年の販売台数140万台! VW全体の3分の1を占めるそうな。VWの3
台に1台は中国で売れているワケ。

VWにとって初めての経験といってよい。ちなみに中国の今年1〜3月期の販売台数はVW36万台に対
し。トヨタが16万台。2009年の数字だとVWのシェア17%で、2位現代自動車10%。3位GMで9%。4位トヨタ8%といった具合。圧倒的な強さを誇っている。VWが中国にチカラを入れるの、当然かと。

現時点で公表されている今後の投資金額は6800億円! トヨタが500億円なので一桁違う。2倍のシェアを持つ企業が10倍の投資をしたら結果は予想出
来ると思う。「いつか騙される」とビビりながら投資している日本と、政治をバックに勝負できる国の差、と言い換えてもいいかもしれない。

さらにVWは低コスト化や新興国の開拓が重要だと判断。素早く動き、スズキを助っ人に付けた。スズキの技術さえあれば新型車を安価に作れるし、中国に次ぐ市場であるインドも足がかりを付けられる。VWは「2018年に世界一の自動車メーカーになる」という目標を掲げた。

手負いのGMも強力なコンデンターだ。すでにビュイックは良いブランドイメージを確率しており、さらに安価なモデルも加えてきた。これまた投資を中国に集中しており、手強い存在。「今後数年で中国に於ける日本車のポジジョンは低下傾向になる」と予想するアナリストは多いけれど、妥当な評価です。

いよいよお尻に火が付いた。踏ん張らなくちゃならないのは今である。私も20歳若ければ中国と勝負したのに。これからの若者は英語と中国語を操るくらいの国際感覚を身に付けるべきでしょう。

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2 Responses to “中国市場の魔力”

  1. lucky より:

    いつも、拝見させていただいています。
    国沢先生の思っている通り、VWは投資し、成功してます。
    中国国内は、上海・北京などの一級都市は、上がり過ぎた不動産も、下がり初めてて、開発はすでに休暇に入ったみたいです。
    二級都市の、中山 などは、数年前から開発が始まり20年前の、横浜駅周辺みなとみらい地区?でしょうか?
    また、地方の何も無かっ所に、鉱山の開発が始まり、蜃気楼じゃない、オアシスが出来たりしてます。
    日本も中国のインフラ開発で、頑張ってますよ、中国の高速鉄道は、日本の旧型新幹線です。しかも中国国内に生産工場も造り、中国の人を大量に雇い、中国国内から材料を仕入れ、一緒に造り、お互いの国に利益をもたらしてます。
    開発が、地方へ移り初めてますが、一級都市は、中国人にとって、憧れの場所、日本人も成功したら、田園調布?芦屋?都市に住みたい、横浜の山手に住みたい、みたいな事と思います。
    実は地方二級都市は、今がバブル開発真っ盛りです。月給1000円だったのが一年後8000円に成ったりしてます。
    世界中から投資を受け、中国も頑張って?ます。余ったお金を、資源の多いアフリカに投資して、至る所に、チャイナタウンがあります。
    本当に羨ましい限りです。皮肉になりますが、もとのその投資、メーカー本国に投資した方が、国民に喜ばれると思います。
    中国は、既に一人立ちできる、経済規模に育ってます。
    日本は、臨場感溢れる隣国と上手く付き合いたいものです。

  2. 真鍋清 より:

    中国の自動車事情について気になることを一つ。
    目下、中国では経済の伸長を背景にEセグメント高級車が続々現地生産を開始しておりますが、それらは全てロングホイールベースであるということ。
    現にBMWの新型5シリーズも535Liから523Liまで、全長5038mmのロングバージョンのみで、オリジナルより12cm!も長く7シリーズの亜流みたいなものである点が一つ。また、クラウンも新型が昨年以来中国で現地生産されておりますが、日本で言うクラウンロイヤル/アスリート・シリーズを用いずに全てマジェスタ・ベースの全長5000mmのボディに6気筒二種とV8一種を組み合わせたバージョンであり、聞くところによると従来型ゼロ・クラウンは全長が4840mmと日本仕様のままで、同クラスのトップセラーたるアウディA6L(5m以上)が9万台弱を売上げたのに対してクラウンは4万台強、全く勝負にならないために新型はロング仕様としてマジェスタ系のボディを流用したそうです。
    これらは中国社会の構造上、Eセグメント分野は国家の幹部クラスや企業の経営者がショーファー付きで乗るケースが大半を占めるためであるのは事実ですが、逆にこの40万元から上の価格クラスでは「全長5m以上ないとカタワと見られ相手にされない」風潮が根強いあたり、中身より押し出しという新興国らしさが感じられて微笑ましいのと同時に、機動性や引き締まった外観を重視するオーナードライバー層がEセグメントまでは育っておらずやはり途上国の限界というものでしょうか?

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