人間力

引き続きモータースポーツと人を考えてみたい。ホンダは第一期F1の終盤、オールホンダで戦うか、他の技術を取り入れるか本田宗一郎社長と現場を任された中村さんの間の意見が全く分かれてしまう。RA300でローラのシャシを使うなど海外の技術を取り入れた。それを面白く思わなかった日本サイドは、オールホンダのRA302を作る。

エンジンは空冷。順調に開発できず、現地の中村さんも「勝てない」。限界を感じたのだろう。これが日本側の反感を買ってしまう。日本側は純日本で戦いたかった。現場は勝ちたかった。どちらが正しいのだろう? こら難しい。ただ自動車メーカーがF1に出る意義って「勝つ」だけじゃないです。RA302についちゃ「成功しなかった」という事実が残ったのみ。


のあたりを上手に切り盛りしたのは、トヨタの福井さんだ。現在、ベストカーに短期連載をしているが、いろんな意味で興味深い。モリゾウさんの父上である豊
田章一郎さんの判断力にも感心してしまう。三菱自動車の木全さんも素晴らしい! お祭り騒ぎの現場と、堅い組織である自動車のメーカーの間を上手に動き回
り、ラリーを続け、WRCの魔力に負けなかった。

スバルの久世さんもWRCと丁々発止でやりあった。いや、丁々発止というより「うなぎのようにぬるぬると」と表現してもいいだろう。強い存在でこそなかったものの、WRCの関係者から一目置かれ、ヤリ手で知られるデビット・リチャ-ズに絡め取られなかったのだから凄い! WRCという鉄火場で活躍し、それでいて自動車メーカーの人間として踏みとどまった。


ヨタも三菱自動車もスバルもWRCから撤退したのは、福井さんや木全さん、久世さんのような「侍」が出てこなかったからだと考える。この御三方、オイル
ショックという決定的な環境の中、ワークス活動を存続させたのだから凄いとしか言えない。福井さんなどトヨタの役員会の決定を事実上骨抜きにしてしまった
のである。残念ながらホンダと日産にはこういった「人物」がいない。

福井さんも木全さんもトヨタや三菱自動車の元代表として活き活きと当
時を語り、メーカーの利益になっている。久世さんだって御存命だったなら、スバルのラリーの話をいくらでも語ってくれただろう。ホンダでムカシのF1を語
れるの、川本さんくらいかと。日産にも国際的なモータースポーツを語れる人は居ない(桜井真一郎さんのレース談義は最高に楽しかった)。

皆さん高潔で、人間として立派です。モータースポーツにありがちな金銭スキャンダルとも無縁。それ以後の人たちは綱紀こそ守ったが、欧州の文化と「戦っちゃった」のだ。勝つことだけに執着したり、日本の技術だけで戦おうと思ったり‥‥。自動車メーカーがF1やWRCに参戦する時に最も大切なのは、技術力じゃなくて「人間力」なのかもしれません。


3 Responses to “人間力”

  1. 白木 晴幸 より:

    国沢さんの仰ることは真理を語っていると思います。ただ欧州の文化と「戦っちゃた」というのは技術者・勝負師としてはやはりチャレンジしたくなるのでは…?そしてそのコトは受け止める人の価値観によっても良し悪しが解れると思います。
    F1やWRCって今でも「走る実験室」だと思います。これらのレースから市販車にフィードバックされる技術は今でも高度な水準を保っていますしこれからも高度な進化が期待されています。モータースポーツの世界で求められるのは技術力の向上とレース全体を仕切れる優秀なトータルマネージャーが求められるのでは…(もちろんそうした人たちの下には優秀な技術者も込ですが)。  

  2. たかっち より:

    こんにちは。いつも拝見しています。
    懐かしいお名前が並びましたね。国沢さんが解説していたWRCに皆さん出演されておられましたね。
    あのような番組がなくなって、寂しい限りです。
    ますますのご活躍期待しております。

  3. COLT より:

    モータースポーツ参戦のサスティナビリティを考えると「蓮舫力」が必要かもしれません。
    アベノミクスのイケイケムードで参戦→また撤退では文化になりませんよ。

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