次々とやってくる刺客。韓国車と中国車だけでなく国交省も強敵だ!

現代自動車の国産戦略車『ツーソン』にオーストラリアで一週間ほどジックリ乗ったら、完成度の高さに驚いた。性能も燃費も日本車と遜色ないばかりか、乗り心地は上回る。この仕上がりなら日本車と同じ価格帯であっても、上手なイメージ宣伝をすれば売れると思う。むしろデザイン面など日本車を凌ぐほど。

改めて確認するまでもなく、家電に代表される日本の基幹産業の多くが韓国や中国との競争に敗れた結果、今や自動車の一本足打法になってしまった。パナソニックですら自動車関連部品を稼ぎ頭にするべく注力している状況。その自動車産業も、遠からず韓国や中国との激しいバトルになること間違いない。

まず台頭してきたのが韓国勢だ。今や現代自動車と起亜自動車の販売台数は、471万台ホンダをはるかに凌ぐ776万台(2016年)。本来なら日本車の「取り分」になるような「市場の伸び」を着実に奪っている。TVなど白物家電のようになったら非常に厳しい。実際、着実に世界中でシェアを伸ばしていた。

しかし直近になって失速傾向。中国市場の大幅減こそ中国政府の露骨な嫌がらせ(日本も一時期反日運動されて大きく台数を落としている)によるものながら、アメリカ市場や欧州市場でも破竹の進撃が止まり、やや減少傾向になりつつある。なぜか? 新型ツーソンに試乗して納得した。

大きな伸びを見せていた時の韓国車は部品にキッチリお金を掛けており、日本の自動車メーカーも口を揃えて「まいった!」。けれど新型ツーソンを見てビックリ! 普通、このクラスはインパネにソフトパットと呼ばれる柔らかい素材を使う。なのにコンパクトカーと同じような固い樹脂なのだ。

「この道はかつてきた道」で、日本勢も10年くらい前までコストダウンのため中型車に樹脂ダッシュボートを採用することもあった。けれど今やそんなことしない。むしろ日本車は品質を向上させている。一時が万事で、直近の韓国車と日本車を比べれば、明らかに日本車の方が上質だ。

日本車の弱点は安っぽい乗り心地の要因になっている『ダンパー』と『シート』くらいになった。白物家電を見ると価格競争力だけでなく性能や販売戦略でも負けた。自動車の場合、この二つさえ世界レベルになれば、多くの点で韓国車に勝てるかもしれない。

また、アメリカの場合、韓国車も日本車も現地生産する。ヨーロッパやアジアでも同じ。部品を現地調達するためコスト的にイーブン。レーバーレート(工場で働く人の給料)も韓国車だって安くなるワケではない。知恵比べということ。むしろ韓国車より日本車の方が価格競争力もあると思う。

ここにきて大きな脅威となりつつあるのが韓国車より中国車かもしれない。日本車のお得意さんであるオーストラリアやタイ、中米などに中国車は橋頭堡を気づきつつある。例えばオーストラリアで『チェリー』。タイでも『MG』のディーラーが増え、さかんに宣伝を行うようになってきた。

すでにオーストラリアで販売してるチェリー

中国車は韓国車より品質で若干劣るものの、とてもリーズナブル。品質で10%劣っても、価格で20%安価ならお客さんはいる。その戦略を使い南米でシェアを奪いつつあるから驚異だ。中国が本気になって海外進出を始めれば、着実に「本来なら日本車を買ってくれるお客さん」を奪っていくだろう。

こんな時こそ新しい電子技術などを積極的に導入して差を付けなければならない。例えば赤信号を無視したらアクセル戻すような制御は、どの国であっても歓迎されることだろう。日本の自動車メーカーも実現しようしているのに、国交省は根拠もなく「ダメ!」と言い張り、足を引っ張る。

はたまた完成車検査など30年以上前の工場で必要だったシステム。日産をかばう気はないけれど、内容自体、時代遅れ。工場出荷時の完成検査の方が厳しいほど。だからこそ日本以外の市場で販売されている日本車は何の問題も無い。それを東京モーターショーの日にブツけてくるなど意地の悪さしか感じない。

このあたりで真剣に自動車産業について考えるべきだと思う。繊維、鉄鋼、家電のように自動車産業が衰退したら、次の大きな基幹作業は育っていない。観光立国やアニメ&ゲームだと自動車の代わりにはならないだろう。
 

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