ロードスターRF紹介&試乗(永田)

今年3月のニューヨークモーターショーで公開されたロードスターの電動ハードトップを持つバリエーションであるRFの予約受付(契約&注文)が11月10日から開始され、12月22日から発売(デリバリー&納車)されます。

電動ハードトップのロードスターは、ロードスターとしては3代目となる先代モデルの途中で加わり、先代ではソフトトップと同じようにルーフ全体がオープンになるRHT(リトラクタブルハードトップ)でしたが、現行モデルの電動ハードトップは頭上がオープンになるRF(リトラクタブルファストバック)と呼ばれるタルガトップになりました。

電動メタルトップの形態をRFとした理由はズバリ「カッコいい電動ハードトップのロードスターにするため」だそう。確かに今になって先代ロードスターのソフトトップとRHTを後ろや側面から見比べてみると、RHTはピラーの形が美しく見えなかったのに対し、RFではファストバックスタイルによる美しさを実現している点は素晴らしいと思います。

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機能面はソフトトップよりもユッタリと走るという走行シーンが多いであろうRFの性格に対応し、6速MTと6速ATと組み合わされるエンジンはアメリカ仕様のソフトトップに搭載される2ℓ直4(158馬力&20.4kgm、アイドリングストップ付きでJC08モード燃費はMT、ATともに15.6㎞/L)を積み、サスペンションは電動パワステを含めRF専用のチューニングとなっています。

またRFはクーペとして使われる際の快適性も配慮し、吸音材や遮音材も追加されています。結果、RFの車重はソフトトップに対し80㎏増しの1100㎏(6速MT、6速ATは1130㎏。重量増の要因はエンジンの2ℓ化で15㎏、電動ハードトップで45㎏など)となっていますが、RFの性格を考えれば納得できる範囲で、依然として軽いクルマです。

RFのグレード体系はベーシックなS(324万円)、Sに革シートやドアミラーの死角となる斜め後方を監視するブラインドスポットモニタリングなどの安全装備が加わるVS(357万4800円)、VSの装備内容にビルシュタインダンパーやレカロシートといった走りの装備が加わり6速MTのみの設定となるRS(373万6800円。価格はすべて6速MTで、6速ATは2万1600円高)の3つから構成されます。

RFには各Web媒体に記事が出ているように、ナンバー付きの最終試作車の乗る機会があったのでレポートしたいと思います。

まず注目の2ℓエンジンは、いい意味での共鳴音のようなエンジン音を響かせながらレッドゾーンまで実に気持ちよく回ってくれるソフトトップのロードスターの1.5ℓに対し、同じ4気筒で排気量が増える分回り方などが雑、大味な方向になるかと予想していたのですが、レッドゾーンが7000回転と1.5ℓより500回転低い以外は音質、回り方ともに1.5ℓと同じような印象で、いい方に期待を裏切られました。

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その反面で重量増が影響しているのか、中低速のトルク感や高回転域でのパワー感も1.5ℓと同等に感じたことも意外でした。動力性能に関しては、流れの早い幹線道路や幹線道路くらいのペースで「ギアを落とさずに加速する」といったケースなどでは2ℓのトルクの太さの恩恵を感じられることもあるかもしれません。6速MTは2ℓも1.5ℓと同じものを使っており、相変わらずの抜群のシフトフィールでどこのギアにもスコスコと入り、つい無駄なギアチェンジを繰り返えしてしまいます。

足回りは、私はNR-A(ナンバー付きワンメイクレースのベース車)を除くソフトトップのロードスターが、荒れた路面での乗り心地の悪さやステアリング操作に対するクルマの反応が過敏過ぎ、エンジンとミッションはいいのに乗っていてあまり楽しくない点に強い不満を持っていました。

それに対しRFのRSは専用チューニングされたサスペンションと電動パワステの効果なのか、乗り心地は高級感を感じるNR-Aには遠く及ばないものの納得できるくらいには改善され、ステアリング操作に対し過敏すぎるクルマの動きもなくなりました。RFの開発で得た成果がなるべく早くソフトトップにも盛り込まれるのを期待したいところです。

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またクローズド状態だと静粛性の高さにも驚かされます。静粛性と乗り心地の良化でRFはなかなか快適なクルマに仕上がっており、GT性能が高そうなこともソフトトップに対する大きなアドバンテージです。それだけに残念だったのが、RFにはクルーズコントロールの設定が一切ない点です。

私は自分の86に後付けをするほどのクルーズコントロール好きという個人的な嗜好もありますが、RFと同日に発表されたソリオ対抗のトヨタタンク&ルーミー、スバルジャスティ、ダイハツトールの四兄弟にはクルーズコントロールが多くのグレードに標準装備されるのを見ると、余計にガッカリしてしまいました。

試乗中、オープン状態を試すこともできました。RFの電動ハードトップはマツダの調べでは電動ハードトップとしては世界最速の13秒という速さでルーフが開閉され、ルーフ開閉の際の動きも大変静かかつスムースです。オープン状態で走るとオープンカーらしい解放感は当然ソフトトップに劣りますが、私個人はオープンカーがあまり好きではないこともあり、RFでも解放感は十分に感じました。さらにRFは後方のピラーがある分で風の巻き込みや風の音がソフトトップに対し劇的に軽減されているので、オープン状態を長時間楽しめそうなところもRFの魅力となるでしょう。

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短時間ではありましたが、VSのAT車にも試乗しました。ソフトトップのロードスターは排気量が1.5ℓと小さいせいなのかATだと実用域の加速に若干ストレスを感じていたため、2ℓとATのマッチングには興味がありました。乗ってみるとAT車だとプラス500㏄の威力は絶大で、街乗りであれば2000回転以下の低回転域で粛々と走ることができ、RFの性格にATはよく合っています。またロードスターにATで乗りたいのであれば、それだけでもRFの方がお勧めです。

日本製ダンパー(メーカーは日立オートモーティブ)を使うVSの足回りは、日本製ダンパーを使うソフトトップのSグレード系に比べると、前述した不満は改善されてはいますが、合格点には届かずといったところで、乗り味という観点だとRSがベストチョイスと言えます。しかし現在RSのATは設定がなく、「インテリアはVSの方が好み」という人もいるでしょうから、RFはプレミアムなロードスターでもあるのも踏まえると、RSのATやビルシュタインダンパーのVSへのオプション設定いった選択肢も今後広げて欲しいと思います。

全体的にロードスターRFはマツダがソウルレッドに続くイメージカラーとしてアピールしているマシーングレーがよく似合うシックなカッコよさに加え、機能面やインテリアを大人向けとし、オープンカーのネガティブな部分を減らしたユーザー層の間口が広いロードスターというコンセプトを忠実に実車に落とし込んだクルマといえます。

VSとRSでは総額400万円級となる価格(書き遅れましたがRSには32万4000円でフロントのブレンボキャリパーと鍛造のBBSアルミホイールのセットオプションもあり、車両だけで400万円を超えます)は絶対的には高いと言わざるを得ません。しかし電動ハードトップを持つ300万円台のクルマというのが他に思い浮かばないのも事実で、そこはロードスターRFの強みとなるでしょう。そういったことを考えると、RFは案外堅調に売れるクルマとなるのかもしれません。

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