こらダメでしょう

朝方急ぎの仕事を済ませ、11時に中野へ。すると本来なら開店の準備終わってなければならないのに、何も出来ていない。後で聞いたら、叔母が遅く来た上、助っ人にきた板前さんと組合の若社長相手に話し込んだのだという。急いで店内を掃除。お吸い物を仕込み、漬け物を盛る。いわゆるテンテコ舞いってヤツ。

何とか12時半くらいにノレンを出せました。しかし! 値決めで大騒動勃発! 叔母の頭の中は突如10年前に戻ってしまったようで、猛烈に安い! 板前さんが「それじゃ赤字になりますよ」と言うのを頭ごなしに怒り「ウチは父の時代からそんな悪どい商売をしてない!」と昨日の50%安の値付けをしちゃう。

といったモメごとを店内で大声出しながらやってるんだからお客さんは苦笑いです。しまいにゃ板前さんもお手上げになり「好きにやってください」。15時くらいまでに来店された方はいつもよりワンランク上のうなぎを食べられました。お客さんに損をさせなかったのだから良かったですけど……。

また助っ人の板前さんは何店舗も展開している有名なうなぎ屋さんに居た方で(皮が固い天然のうなぎを扱っていた)、深蒸し流。江戸のうなぎにも流派があるのだった。違う美味しさがあるから店内で食べて貰うにはいいのだけれど、少しチカラを入れると簡単に割れたり串から外れたりしてしまう。

叔母はそのあたりの機微が解らないため、いつも調子でうなぎを扱うモンだから壊すことも。私の昼ご飯を続々と作ってくれます。そんな食えないぞ! ただお持ち帰りの串売りも多いため、これだと普通の人だって扱えまい。そこで多少蒸しを浅めにするよう頼む(それでも柔らかいです)。

14時過ぎにうなぎが売り切れたため2階で気合いの原稿書き。をしていたら板前さんが呼んでいる。急いで降りると、叔母は串売りのお客さんの対応でテンパッてます。というか、お客さんとケンカ腰で対応しちゃうのだ。板前さんにしてみれば何でそんなお客さんにケンカ売るのか全く解らない。

昼に板前さんに「少し忘れっぽいのでよろしくお願いします」と言うと「ボクの親も厳しい状態だから解りますよ。絶対に怒ったり意見したりしたらダメです」。と理解してくれたのだけれど、あまりにパワーある上、性格的にキツい。このあたりから徐々に板前さんもトゲトゲしくなってきた。

夕方になって再びお客さんが増え出すと、いつもは奥の座敷でTV見たり居眠りしてるだけの叔母が采配をふるおうとする。「串は売り切れですか?」と聞いてくるお客さんに向かって「夏は売れるので待ってくれないと困る!」と怒り、昔名話をするお客さんに対し「ケンもホロロの扱い」。

バイトの窪田君が来たので店を頼んで2階で原稿書き。本日中の締め切りを抱えているのだ。やがて下で大声! 降りていくと叔母が「もう来ないでくれ!」と怒鳴ってる。聞けばお客さんの注文を聴き、そいつを何度か忘れたみたいなのだ。「さっき頼んだでしょ」というコトバで切れたらしい。

もはやダメでしょう。安売りするから利益は全く上がらず(助っ人の板前さんは高い)、調理方法もウチと違う。さらに叔母のケンカ。これじゃ評判を落とすだけ。せっかくグーグルで『うなぎの名店』を検索すると、最初の検索結果のリストに出てくる「美登里」ながら、創業した祖父の意志は継げていない。

火曜日は定休日。水曜日は営業すると言っているけれど、休むよう勧告した。といっても5秒で忘れるので10回ほど勧告したが、忘れちゃうんだろうなぁ。22時までほぼ付きっきりで叔母の”介護”をしていたら心身共にドロのようになってしまった。このトシになってこれほど厳しい修行が待っているとは思わなんだ!

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3 Responses to “こらダメでしょう”

  1. 覇王(仮名)と より:

     国沢先生の心中、お察しします。
     私は九州某県で、精神科の医師をしております、覇王(仮名)と申します。中学生の頃からベストカーガイド等で先生の記事を多数拝見し、勉強させていただいておりました。最近では30プリウスのブレーキに関して、自動車評論家でおそらく唯一かつ迅速に的確な再現実験をされておられたのが、大変印象的でした。(妻の車が初期型30プリウスなので人ごとではなかったのですが、メディアの報道が錯綜しており、他の自動車評論家も揶揄するか模様眺めといった輩ばかりで、「国沢さんさすがやなー」と妻と感心しておりました)
    ところで叔母様の精神状態ですが、やはり認知症の進行と共に日々厳しくなっているご様子。釈迦に説法かも知れませんが、認知症は記銘力の障害や、易怒性(おこりっぽさ)の増悪のみならず、そもそもの病識(自分が病気であるという認識)が薄いか、ないのが特徴です。日々苦労されておられる国沢先生のご様子を拝見するのは大変心苦しく、またこれ以上は本業に影響するのではないかと拝察致します。
    以前の記事で、ご親戚はすべからく非協力的のようですから、まずは認知症病棟をもつ精神科の専門病院に「家族相談」という形で受診されてはどうでしょうか。ご本人の健康保険証を持参されれば、保険診療が可能です。そして場合によっては、国沢先生が家裁にて保護者選任の手続きを取られ、医療保護入院にて的確な加療を検討される時期に来ているのではと僭越ながら拝察致します。
    最後になりましたが、これからもますますのご活躍を。九州の片田舎から祈念しております。
    覇王(仮名) 拝

  2. ビッケ より:

    お疲れ様です。
    近いうち食べに行きます。
    ストレス発散できるラリーに何か協力できればと思います。

  3. ちゃりきち より:

    国沢先生
    いつも先生の記事を楽しく拝見しておりますが、このコーナーは辛すぎます。
    私は、父親の若年性痴呆がわかってから、就職して別の地域に移り住んだのですが、母親が介護に疲れて自ら命を絶つという最悪の結果になってしまいました。私もそうしたゴタゴタに耐えきれず離婚してしまいましたし。
    こんな私に何も言う資格はないのかもしれませんが、国沢先生にはご自身にしか出来ない仕事があり、私も含めてそれを楽しみにしている方が日本中に居ります。
    介護をプロに任せることは、悪いことではありません。プロにしかできないことと身内にしかできないことの両方があります。
    大半はプロに任せつつ、国沢先生が余裕をもって叔母様に接してあげることは悪くないと思います。
    本人の病識についてはよくわかりませんが、すくなくとも私の父を見ている限りでは、本人はとても不安に感じているようで、それ故に勘定が不安定で怒りっぽくなっていたように見えます。素人の見解ですが。
    認知症を見てもらうために精神科に行くことに関しては、本人は激しく抵抗するでしょう。ですので、心療内科のような少し軽いところで、診察してもらい、詳しい検査をしたほうが良いですよとお医者さんに言っていただくといいかもしれません。年輩の方は、お医者様と言った権威には従うかと。あるいは、私の父の場合は、不眠症を見てもらうということで、脳神経外科に行きました。ストレスでも、メニエールでも多少こじつけでも良いので、一旦、お医者様と相談するきかっけを作るとよいと思います。
    僭越ながら何かのお役に立てればと思います。
    国沢先生のお話は、心を痛めつつも、その度量に敬服いたします。
    これからもご活躍をご祈念いたします。

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