アップルは自動車を作れないが……

アップルが自動車作りに乗り出すというウワサになっている。結論から書くと無理だと思う。なぜか? 自動車作りの本質はアップルの得意分野である制御系ではなく、大量生産にあるからだ。最もシンプルな構造を持つ日本の軽自動車を見ればよくわかる。

御存知の通り軽自動車は現在日本に於いて売れ筋になっており、魅力的なモデルを出せば相当の確率で売れます。なのにスバルは軽自動車の生産から撤退。マツダも軽自動車の生産に乗り出さない。すでに相当の台数を販売している日産ですら独自生産に踏み出さないほど。

参考までに書いておくと、日産が昨年販売した軽自動車の台数は24万台。つまり年間24万台規模では軽自動車を作る工場を維持できないということだ。どうして24万台も作って利益を上げられないのだろう。これは簡単なこと。自動車がクリアしなければならない条件は多岐に渡る。

アップルが作るのは電気自動車であれば排気ガス規制に代表されるエンジン関係の開発予算的にそれほど大きくないかもしれない。ただ衝突安全性などは必ずクリアしなければならず、これは高い難易度を必要とする。こう書くと「テスラはクリアしたではないか」と思うだろう。

テスラの場合、非常にコストのかかる構造で衝突安全性をクリアしており、安いクルマでは難しい。それなら「高いクルマを作ればいい」と考えるかもしれない。ポルシェやベンツと真正面から戦うことを意味し、もっと難しい。テスラもどうやらニーズは一巡したらしく、ここにきて販売台数落ち、赤字になるという。

テスラに乗ると解るけれど、ホビーの域を出ていない。ボディの剛性感は低く、どこかグニャグニャしている。今や当たり前の装備になってきいる「事故を防止するための技術」(自動ブレーキなど)も選べない。加えて生産コストを低くすることはできないため、高価。

スマホなら部品を組み合わせることにより、比較的簡単に商品となる。多少のトラブルが出てもユーザーは許すし、そもそも生命の危険はない。自動車はアイフォーンと同じようなサービス体制だったら、100%間違いなくユーザーが怒る。トラブルや欠陥は生命に関わる。

また、自動車を作って輸出しようとしたら、必ず税制の問題が出てくる。自動車を無税で持ち込めるのは世界中探しても日本くらい。他の国には様々な輸入規制があり、だからこそ日本の自動車メーカーも工場進出してるのだった。

アップルが自動車販売に乗り出す作戦を考えるなら、既存の自動車会社を傘下に入れるしかないと思う。現在、アップルなら買えそうな自動車メーカーはいくつかある。ただ買収しても、魅力のある賞品を作れないだろう。どの国も自動車業界にはTOPクラスの人材が揃ってます。ここが本質的な難しさだと思う。

アイデアで切り抜けられる業界ではない。

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