予想出来なかった結末(その4)

小沢整備班長も国沢搭乗員も戦っているが、木原搭乗員だって同じ! 普通ならペースノートを読むだけで精一杯だ。加えて木原さんクラスになると、直線が長ければコーナーまでのカウントダウンを正確に行ってくれる。しかし! 今回はスピードメーターからの信号が入ってこない。速度計とナビ計器、動かないのだ。

そこで急遽ガーミン製PNDのGPSの機能の一つである距離計を使ってカウントダウンしているのだけれど、左右だけでなく上下に激しく揺れる車内で小さいGPSの液晶画面を操作しなければならないハメに。それだけで一杯一杯だろう。なのに今日から新たな仕事が加わった。右手使って2速ギアの保持です。

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木原さん激闘中

昨晩の打ち合わせの際「やってみましょうか」というのでお願いした次第。100個以上のタイトコーナー全て2速ギアというSS11の後半で試したところ、予想以上にウマく行く! 木原さんが2速を保持してくれていれば、私はサイドブレーキ引いてコーナーに飛び込んでいけます。成果はハッキリとタイムに出た。

終盤試したSS11はTOPから1分12秒も離された。なのに同じコースを走るSS14じゃ40秒差に縮まったから笑える。木原さんが32秒稼いだワケ。というか普通なら2速を保持しなくていい。これでアブガスでアンチラグ付いて、しかも4WDだったら‥‥。いかんいかん。そんなこと考えても良い方向にはなりません。

サービスに戻るとさらなる衝撃が待っていた。今回のランエボは『プロフレックス』という120万円以上するショックアブソーバー付きということだった。小沢さんがリザーバータンクに触ってみたところ、本来ならチンチンに熱くなっているのに人肌だという。機能してない。小沢さん、目を丸くして驚いていた。だからハネるのね。

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そもそも車高が左右で違ってきてしまっている

何から何までシビれる。それでもラリーは続く。搭乗員は今や「どっからでもこい!」になってる。舗装が12kmくらい混ざっているSS15なんかノッキングを感知すべく全身これ耳になってジンワリとアクセル踏んでいく。そしたらTOPの2秒遅れだって! ホントかね? 満身創痍の愛機が頼もしい。

●SS15(15.00km)
1位 No.3グリーン選手      9分09秒
2位 No.1ウィッタヤ選手     9分11秒
2位 No.2国沢選手        9分11秒
4位 No.5のタイ人ドライバー  10分20秒

そして最後のSS。ウィッタヤ選手は7分6秒と最後までアタックしている(同じコースを使うSS13のTOPはグリーンさんで7分14秒)。グリーンさんだってタイムアップ。そして我がミツビシも搭乗員の気持ちに応えてくれたんだろう。壊れずゴール! オマケに望外の速さ! どうなってるんだ?

●SS16(10.76km)
1位 No.1ウィッタヤ選手    7分06秒
2位 No.3グリーン選手     7分13秒
3位 No.2国沢選手       7分16秒
4位 No.5のタイ人ドライバー  7分51秒

辛くもフィニッシュ! いやいや信じられません。いろんな人から「よく走りきった!」と言われる。誰も完走できると考えていなかったらしい。搭乗員だってそう考えてましたから。たくさんのラリーを見てきているマリー・ブラウンさんやシモ・ランピネンさんからまで「ラリーの面白さを思い出したよ!」。

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ナビ計器の覆いは紙製

こうなるとみんなから「けっこう良いクルマだったんじゃないの?」となるのが常。小沢さんにだけは乗って貰いクルマのコンディションを知って欲しかった。これこそ何とか完走したかった最大の理由だったりして。壊れちゃったら乗れないのですから。どうだったか。降りて来るなり「もうダメ。どこが壊れてもおかしくない状態」。

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ミラーは手鏡

どうやら全て紙一重で持っている状況らしい。足回りは全てガタが出ており、サスペンションも抜けている状態。「よく帰ってこられたモンです。最初から航空燃料使ってハイペースで走ったら持たなかったかもしれませんね。こんなラリーは2度としなくないけれど、とっても楽しかったです」。小沢さんにそう言って貰えば本望です。

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イタズラ好きの神様が今回のラリー修行を支えてくれたくさんの人の気持ちに応えてくれたのかもしれません。

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14 Responses to “予想出来なかった結末(その4)”

  1. typicalanasian より:

    国沢さん、無事完走おめでとうございます。
    毎日拝見していて、今日はアポロ13を思い出しました。
    「偉大なる失敗」ではありませんが、苦労が多い分感動をいただきました。
    また、鰻も食べに行かせていただきます。

  2. GRB親父の懲りない面々・・ より:

    初コメです。
    国沢師匠!無事ご帰還おめでとうございます!
    満身創痍の3位表彰台感動しました。
    ラリーの難しさと楽しさ満載でしたね!
    次回があるならば、是非GDB復活でお立ち台の一番高いところに!

  3. yanma より:

    お疲れさまです。
    久しぶりに、モータースポーツの記事で熱くなりました。
    このようなレポートを見ると、
    ますます 86ほしくなってきました。
    ちなみに、私は、ギリギリ車変態世代の 41歳です。

  4. まさやん より:

    いつも楽しく読ませてもらっています。本当に、ほんとうに、ホントーーーにあなたはすばらしい!いろいろ云いたい事はありますが、とりあえず、率直な気持ちだけ書かせていただきました。では元気に帰国してください。

  5. JJJ より:

    お疲れ様でした!
    そして、夢をありがとうございました[E:happy01][E:scissors]

  6. sin より:

    今回ばかりは・・・と思っていましたが、まさかの結果に驚きました。
    さすがとしか言いようがないですね!
    人と運に恵まれ、車だけが恵まれなかったという感じでしょうか。 
    何はともあれおつかれさまでした。

  7. プレマシー大好き より:

    ラリーの完走おめでとうございます。日ごろの行いの良さが出たのでしょう。神様が味方してくれたように思います。あと、タイの水害に対しての義援金を渡せることができて良かった。日本のマスコミではもうタイの報道はありません。国沢さんは偉いと思います。微力ながらお手伝いが出来て嬉しいです。これからも無理せずに頑張って下さい。

  8. applefanjp  より:

    こだわり・・・それは大切なことだと思います。
    筋を通す、これも大切。
    でも、それは頑なとは違います。
    物事、こだわっていてばかりいては
    何も前に進みません。
    しなやかな思考があれば
    筋違いなことをすることもありません。
    皆さんのご活躍に、そんな「しなやかさ」を
    発見できました。
    ありがとうございます。

  9. 車に情熱をかける32歳 より:

    完走おめでとうございます!
    良い飛行機乗りは必ず帰ってくるんだ。と信じていました。
    厳しい荒行なのに国沢さんはともかく(笑)皆さん楽しんでいる事にとてもびっくりしました。あの小沢さんまで楽しそうにしているなんて・・・・
    WRCも何度も見に行きましたが今回のラリーの結果報告の方がかなりワクワクドキドキしました!

  10. Kimura より:

    お疲れ様でした。
    表彰式にも行けばよかったと大後悔。
    SS16スタート地点でお話すればよかったと後悔。
    でも昨年に引き続き良い思い出になりました。
    チームワークで困難を乗り切っての完走。
    素晴らしいです!
    またどこかでお会いできたら宜しくお願いします!

  11. みんすけ より:

    ラリー・マスト・ゴー・オン!
    いやいや素晴らしいの一言です。いつも自分の境遇に文句ばかり
    垂れてまわりのせいにしている我が身を反省…
    第二次世界大戦の戦闘機基地の喩えも面白かったです

  12. たいしょう? より:

    ラリーお疲れさまでした。
    当初想定していたよりもはるかに厳しい環境の中
    完走してしかも表彰台に登ってしまうとは、やはり
    レースの神様はいるものだと思いました。
    今日、ようやくタイの浸水が解消されたとのニュースを
    ネットで見ました。 まだまだ、これから大変でしょうが、微力ながらも役に立てたのであれば、良いのですが…

  13. ナベック より:

    ご尽力に、なんだか涙が出てきそうです・・・。
    古い言葉ですが、「艱難辛苦」とか、
    「臥薪嘗胆」なんて言葉が浮かんできます。
    ちょっと古すぎましたかね。
    いずれにしても、状況を知れば知るほど「3位入賞」の重みが胸に刺さります!
    本当にお疲れ様でした。
    そして、ありがとうございました。

  14. ステッカーチューン より:

    コングラチュレイション的なことはみなさんいっぱい書いて下さると思うので、お疲れ様でした。またいろいろなことを楽しみに待っております。

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