「燃料電池は普及する?」答えが見えてきた
露木茂さんがアンカーマンをしているBS11の『報道ライブ21』という生番組に出た。同席のゲストは大場紀章さんという、政府と自動車メーカーの水素事情を全て知っているという『テクノバ』というシンクタンクの若手の方。このシンクタンクが相当の役割を果たしているそうな。
率直な印象を書くと、水素に対する私の評価は間違っていなかったと思う。水素の大きな弱点をキッチリ認識した上で、いろんな事象が進行している、ということです。成功するかどうか聞かれたら、私もトヨタと同じ立場に立つ。「ボールはインフラ作りの方にありますよ」と。
興味深かったのは大場さんも放送中にコメントしていた「100カ所の水素ステーション作りも順調では無い」ということ。そらそうだ。実質的な負担金ゼロで作れる電気自動車用の急速充電器も、予算の10分の1程度の状況で進まなくなってしまってます。設置するメリットがないからだ。
現時点で5億円掛かると言われる水素ステーションだって同じだろう。半分補助金出しても2億5千万円。しかも稼働させても利用率低いだろうから間違いなく儲からない施設である。そもそも当面の予定である100カ所という数も少ないと思うが、100カ所出来るのか?
トヨタは燃料電池車の量販を前提としているが、具体的な生産ライン作りは検討中という段階。加藤副社長も「どこの工場で作るのか?」という質問に対し、ノーコメントだった。おそらく「手応えあれば本格的な生産ラインを作る」ということなんだと思う。インフラの本気待ちです。
一方、FCVを買った人に対するフォローという点では全く心配していない。そこがトヨタというメーカーの凄さだ。電池の信頼性に問題を抱えていた初代プリウスのフォローは文句無し。プレジャーボートの分野ですら、不安な点があるからと大規模な対応を行っている。
特に章男社長になってから、トヨタの原点回帰は明確になった。当面FCVを買うのは既存の水素ステーションの近所の人や企業だと思う。既存の水素ステーションは10年やそこら稼働するだろう。その間のトヨタのアフターサービスの心配だってしなくていい。
「買った人に迷惑を掛けない」という覚悟をしているワケです。前述の通り今やボールはインフラ作りの側にある。考えてみたら自動車メーカーはクルマ作りが本業。燃料電池車が普及するかどうかは「インフラが作れるかどうか」という一点になったと思う。
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