クジラと衝突して危機一髪の体験をした盲目のセーラーに話を聞きました(25日)
ラリーだけでなく海を知って貰うのも私の使命だと勝手に思っている。ということで日本の企業に勤めている中国の人がフネに乗ってみたいというので「ぜひどうぞ!」。中国、御存知の通り面積の割に海岸が少なく、しかも沿岸地区は遠浅で砂か泥底。日本のような変化に富んだ海、無いです。イメージとしちゃ群馬県や岐阜県の人に近いと言われる。
といっても今回は時間の関係で太平洋まで出られず東京湾奥巡りです。聞いてみたら、こういったちっさいフネに乗るのは初めてと言うことで大いに楽しんで頂いたようだ。驚くべきはフネのネダンを聞いてもフネの置き場所の料金を聞いても「これだけ楽しめるのなら高くないです」。もはや中国の上から10%(といっても1億4千万人くらいいます)は層は日本人の水準を超えてる。
夕方から会員にさせて頂いている『東京ヨットクラブ』の餃子パーティへ。ゲストは盲目のヨットマンとして著名な岩本光弘さん。TVキャスターの辛坊さんと太平洋横断にチャレンジ中、マッコウクジラに衝突してヨット沈没。海上自衛隊のUS-2で救助されたことを覚えている諸兄も多いことだろう。先日、太平洋横断の夢を叶え、サンディエゴから福島にやってきた。
欧米だと「ヨットクラブ」って冒険心を持つ紳士の社交場です
興味深い内容ばっかりでした! 最大の「凄いね!」は今回、岩本さんと一緒に「ブラインドセーラー世界初の太平洋横断」にチャレンジしたダグラス・スミスさんという日本在住のアメリカ人。スミスさんは”ほぼ”ヨット歴無し。岩本さんの失敗を見て「私が手伝いたい!」と思ったそうな。この時点で荒唐無稽な話です。考えて欲しい。辛坊さんが叩かれた理由に「経験少ない」。
つまり「ヨット経験少ない辛坊さんが盲目の人となんでそんな無謀なことをしたんだ」ということ。スミスさんと比べれば辛坊さんは超ベテランです。もう少し掘り込めば岩本さん、本格的なセーラーなのだ。鍛え上げられた上半身の筋肉など57歳とは思えないほど。こういったアクシデントを見て手を引くのが日本人。それに対し、チャレンジ魂を燃やすのは欧米人だ。
岩本さんに事故当時の話を聞いた。すると「3回衝撃がありました。クジラにあたったことはすぐ解りました」。続けて「メディアは海に落ちていたコンテナを避けられなかったなどと報じましたけれど、マッコウクジラの姿がハッキリ見える映像で証明出来ました」。このあたり、目の感覚を加味する私らより敏感なんだろう。大型のマッコウクジラ、ヨットと同じくらい大きい。
私は不可抗力だと思う。この事故の後「目が見えないのに無謀なことをするな」とか「救助隊を危険な目に合わせた」や「救助に税金を使った」等々さんざん叩かれたそうだ。実際、救援のため私が知る限り自衛隊と海上保安庁は最大限の体制を取ってます。1200kmという極めて遠い海域だったため、岩国基地から2機US-2を厚木まで移動させ、1機は昼前に遭難現場到着。
波高4mだったとか! US-2、世界一の性能です
そして上空で対潜哨戒機P-3Cが波高の少ない海面を探すサポートを行う。しかし波は高く断念。それでも自衛隊は諦めず、2機目を飛ばす! もちろんP-3Cも! 非常に厳しい海況だったものの、奇跡的に着水に成功。後で漏れ伝え聞く話によれば、パイロットが最終判断をしたそうな(状況は行間を読んで頂きたい)。日没寸前のタイミングで収容出来た。
ところが着水時に波がプロペラを叩いてしまい4つ付いているエンジンの1つが使えなくなった。けれど自衛隊きっての水上ヒコウキ乗りだったらしい。見事離水して帰還した。当然ながら救助隊を危険な目に合わせたし、税金も使ったと思う。でも考えて欲しい。救助隊員は人の命を救うため訓練をしている。そのための装備も持っている。出番が来た、ということです。
対潜哨戒機P-3C
実際、救援隊に20年所属していても人命を救助出来るケースは少ないそうな。それでも訓練する。この時に出動した岩国の救援隊に知人がいるという読者の方から聞いたのだけれど、皆さん「命を助けられて嬉しかった」という思いしかないという。加えてこのチームは素晴らしい実績を残した。訓練じゃ絶対に出来ないと思う。US-2という装備の実力もチェック出来たことだろう。
自衛隊も海上保安庁も警察も、国民を守るためなら自分の命を賭けもいい、と思っている人が大半を占める。もう少し詳しく書くと、しっかり訓練をしてるから自分が死ぬことなど無いという自負も持っているのだろう。頼もしいし素晴らしいこと。普段は官憲に厳しい私ですら、日々厳しい訓練をしている人達のことを思うと感謝の気持ちしか無い。
東京ヨットクラブの皆さん
ということを海に出ることの多い私達は日常的に感じています。そして岩本さんのようなチャレンジャーがいるからニンゲンって素晴らしいと改めて思う。そんなこと考えているから私もお金が貯まらないのね、と納得。お金使って危険なラリーなんかやってどうする、ってことです。でもできる限りのことをやるべきだと思う。経済規模で中国に負けてもキラリと光る国になりたい。
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