プロジェクトXでアイサイトが取り上げられた。国交省から「認可できない!」と言われていたことは無視

NHK『プロジェクトX』でスバルのアイサイトが取り上げられた。放送をスバルの皆さんを含む自動車業界の人たちと見ていたのだけれど、いろんな意味で興味深かった。まずスバルの皆さんはとっても嬉しかったようだ。私も1999年に発売されたレガシィ・ランカスターの頃から(当初はアダプティブクルコン。ADAと呼ばれた)、このシステムを見てきた。

1999年のランカスターADA

高価なオプションの上、機能も限られていたため販売台数伸びず。制御はアクセルペダルをアクチュエーターで動かしていたため、アクセル戻すときに「パタン!」という音がするなど質感も低く社内から「やめちゃえ!」と言われていた。私は1980年代からクルコンの人だったので(何にでもクルコンを付けたい。先日買ったハーレーもクルコン付いてたのが決定打です)、大支援。

試乗レポートでADAの可能性について積極的に書いたし、スバルの役員から評価を聞かれたら「絶対に開発を続けるべき!」と言い続けた。2001年に日産がレーダー+カメラのレーンキープADASを出し、ホンダも2003年に『CMS』とネーミングされた追突低減ブレーキを発表。インスパイアに実装している。CMS、性能的には完全停止まで出来たけれど、国交省に拒否されてしまう。

自動ブレーキ制御を実現したが国交省から蹴られる(2003年)

ということでアダプティブクルーズでの停止制御は2001年に日産が確立しながら国交省のダメ出しを喰い、自動ブレーキも2003年にホンダ開発しながら国交省から拒否された。その時点で日産もホンダも「安全のため一生懸命開発してきたのに国交省がダメと言ってる。こら無理か」と開発体制や、開発意欲を大幅に後退させてしまう。というタイミングでスバルは開発を続けた。

大きく潮目が変わったのは2009年だ。スバルも2008年に技術的に自動停止可能なアイサイトVer1を出していたけれど、国交省は「ダメに決まってるだろ!」と一蹴。しかしボルボが欧州から人を連れてきて談判するや、あっさりOkを出す。かくして2009年にボルボが停止まで出来る自動ブレーキの認可に風穴を開けた。スバルは「いいの?」となり、2010年のアイサイトVer2で停止制御まで入れた。

慌てたのが先行しながら開発規模を極端に縮小していた日産とホンダだ。急いで開発を再開するも、ホンダは2013年10月のアコード・ハイブリッド。日産が2013年11月のスカイラインになってしまう。しかも自動ブレーキの総合性能は圧倒的にアイサイト優位。アイサイト、当初から歩行者も対象にしてましたから。2018年くらいまではアイサイトの性能がライバルを凌駕していた。

現時点でもアイサイトのアダプティブ制御はボルボと並びベストである。トヨタですら2021年発売のMIRAIだと渋滞時は先行車が車線変更したりすると、その前に走ってる車両あるのに加速するなど全く油断できない。2023年発売の新世代ADASを採用しているノアだってアイサイトに届いておらず、2019年発売のボルボXC60より信頼できないです。スバルとボルボ、タイしたモンだと感心しきり。

当時ライバル社は「カメラなんかダメ」という主張を繰り返す

プロジェクトXだった。国交省が門前払いしていたためADASの開発で日産やホンダの開発に強いブレーキを掛けたことや、ボルボという黒船によって解禁になったことは全くふれず。クルマのことを知らないシロウトさん達からすれば「スバル凄い!」だけに終わる印象ながら、自動車業界を俯瞰すると「NHKにも公正な内容は期待できないのね」。大きく失望しました。

参考までに国交省が拒否した理由と言えば「そんなことが出来たらドライバーはブレーキを踏まなくなるから」でした。悲しい。

<おすすめ記事>

12 Responses to “プロジェクトXでアイサイトが取り上げられた。国交省から「認可できない!」と言われていたことは無視”

  1. アミーゴ5号リボーン より:

    見ました、プロジェクトX。あらゆる困難を乗り切ったスバル技術陣に、オイラ、素直に感動しました。

    そして頭にありましたよ、国交省。例によって、海外からの圧力で自動ブレーキを認めたことは、こちらの記事で知ってましたから。

    同じNHKで、若くて優秀な官僚達が、頭の悪い政治家の我欲に振り回されて、腰を据えて政策を練り上げることができないというレポートがありました。

    諸悪の根源は、ここでしょ!

  2. ひまわり より:

    NHK繋がりですが、今の大河ドラマの中で役人はやたらに
    「前例の無いことは出来ません」というセリフを連発してます。
    私は歴史には詳しくありませんのであれですが、脚本家の意図を勘ぐってしまうのは私だけでしょうか。

  3. まどか より:

    以前、国交省の航空機鉄道事故調査委員会次官だったおじさんは、航空機部門でしたが事故は徹底的に調べると言っていました。
    わたしは、事故は未然に防ぐことが重要だと思っています。
    国交省は、まずは第一に国民の安全を考えてほしいと思っています
    科学は人を救い命を守り幸せにするためにあると思っています
    素晴らしい技術を埋もれないように、また日本の知的財産として企業などどきちんとタッグを組んでほしいと思います。
    すみません、記事を読んだ感想です

  4. しんぶんし より:

    民間放送でもそうですが、スポンサーの悪口は放送しませんから

    • 各省庁は解体して再構築の必要大 より:

      私もそう思っていましたが、
      認証不正問題で大スポンサー様であるはずのトヨタを各社取り上げていましたよ。
      それより、どのメディアも自動車メーカー非難ばかりで国交省に問題有りとしたのが、
      ほぼ無かった方が気持ち悪かったですね。
      国家権力>>>スポンサー

  5. かずぽん より:

    国交省は技術的には確立しているにもかかわらず未だに赤信号や一時停止標識で自動停止を認めていないと聞きました。これも多分海外メーカーが行えばなし崩しで許可されるんでしょうね。

  6. ほしはすばる より:

    NHKはこんな番組より国のやった「プロジェクト☓」(エックスではなくバツ)を企画すべき。

  7. 川口太郎 より:

    このサイトで国沢さんの業界話を読んでいる人なら、国交省の
    認証手続きの問題も自動ブレーキ制御を実現したが国交省から
    蹴られた話の延長上で見る事が出来るので「ああ、またか」と
    しかならないけれど、一般の方々は大本営発表を受け売りするの
    マスゴミの「自動車業界はまともな認証していない」を鵜呑みに
    できるのかも?

  8. JINJIN より:

    6月22日テレビ朝日放送の「池上彰のニュースそうだったのか」でも国交省の件、やってましたね。
    池上さんは専門外のことでも解説しているので痛々しくて見てらんないことが多いのですが、本件では国沢様よりの解説をしていたように感じました。
    ただし、国交省への突っ込みはイマイチ、イマ二でしたけど。

  9. evファン より:

    「失われた日本の三十年」の実態と言えるかもね。
    で、今も同じグズっぷりで、空飛ぶクルマも無人運転タクシーも遠い彼方。
    国交省崩壊してませんか?この、超慎重役人の骨折りは、いつ頃の未来に開花するのでしょうかね。

  10. 一休 より:

    1993年当時、他のメーカーは2センサー2チャンネル、良くても4センサー2チャンネルのABSを着けてたところ、スバルはレガシィには4センサー4チャンネルのABSを装着していた。
    しかし、事故を起こしたクルマのABS C/Uをスキャンすると誰もブレーキを踏みきって(パニックブレーキ)無い事が分かった。
    当時の機構設計課長の石関さんは、それが分かって、「どうしたらブレーキを踏んでもらえるんだだろう?」と悩んでいたという事も出て来なかったなぁ。

  11. 風の中のSUBARU より:

    番組で紹介されていた車両もADA搭載はBP型が初みたいな構成だったし、GCインプの始動音が軽自動車みたいな音だったし、やっつけ編集感が出てましたね。

コメントを残す

このページの先頭へ