なんでお金使って時間使って苦労して将来があるワケじゃないWRCに出るのか?
「何のためにWRCに出るのか」と聞かれると答えに窮す。上を目指せるワケじゃなく、仕事にだって直接関係ない。それでいて危険を伴い、しかもWRCに出るという荒技を仕掛けようとすればお財布が気持ちよく痩せる。プライベーターで出てる人は本物のお金持ちだ。やらない方が楽だし利口だ--といつも考えてる。しかし! 人間って厳しい修行に飛び込みたがる奇妙な生き物である。
月曜日からレッキ(下見走行)が始まった。本番で走るコースを2回走り、ペースノートという「説明書」を作る。「右に曲がってる」とか「見通しの利かない丘の向こう側はすぐ左に曲がってる」とか喋ると、隣の人がメモしてくれる。2回目は1回目の内容を読んで貰いながら制限速度60km/hで走る。レッキ、当然ながら世界で一番速い人と同じ日に同じ場所で行う。上はエヴァンス選手。
多くの人はスポーツや趣味の分野で尊敬する人を持つことだろう。そのジャンルの最上位の人って神様のような存在じゃなかろうか。私の趣味の最上位って「世界で一番運転が上手な人」です。WRCのレッキに行くと、目の前に世界一運転の上手い人が居るのだった。皆さんの好きなスポーツや趣味をイメージして頂きたい。そこでの神様が目の前に居て、同じことをしてる。
もちろん同じスピードで走れるワケじゃないけれど、少なくとも同じ体験が出来る。こんな幸せ、他じゃ得られない。とはいえ今回も参戦にあたり、紆余曲折ありました。出るのを止めようと思ったことだって4回や5回というレベルじゃない。ただ止めるのは簡単だし、いつでも出来る。今年はベストカーがバックアップしてくれることになったので、何とかこの場に残れた次第。
誰かの援助が無ければ自動的に出られなくなる。ということで来年はどうなるか現時点で全く予想出来ない。壊さなければクルマはある。でもエントリー費100万円。ホテル代100万円。経費100万円。部品代100万円の400万円を工面できなくなったら自動的に終了でございます。昨年もそうだったけれど、今年も最後になると思い、クルマ趣味の王道を存分に堪能しようと思う。
ちなみに昨年は雨で滑り易い道を「自分が気合い入れて出せる最高の速度で走る」という超リスキーなロアシアンルーレットを3日間続け、何とか生き延びた。楽しかったかと聞かれたら,瞬時も迷うこと無く「辛かった」とか「怖かった」。幸い今年は雨のない3日間になりそう。日曜日終わってどんな状況になるか全く予想出来ないけれど、手伝って頂いた皆さんが楽しめたら100点です。
<おすすめ記事>