トヨタ、燃料電池の将来を中国に託す。難しい判断だったろう。インパクトある選択だと思う

今になって考えると、トヨタは2020年時点で「日本に於ける燃料電池の普及は当面ない」と割り切ったのだろう。4年前にこんなリリースを出している。その時は規模感など解らず、とりあえず中国とのお付き合いくらいの内容かと思っていた。しかし! 9月にも本格稼働する工場は150kWのスタックを年間1万ユニット生産出来るという! こらホンキです!

トヨタのスタック生産規模、数字はMIRAIの世界販売台数しか公表されていないものの、2023年で4023台。2021年の6000台程度から落ちてしまった。燃料電池バス用などにスタックを作っているものの、生産規模って上を見て5千ユニットくらいだと思う。トヨタも相当努力しているが、石油利権をバックにした政策により将来を潰されてしまっている。

実際、MIRAIに乗っていると、水素インフラさえ整えてくれれば電気自動車より使い勝手が良いとはっきり解る。3分くらいの充填で500km近く走ってくれますから--ということを石油利権はしっかり認識しているので水素の扱いに対する厳しい厳しい規制を緩めない。このままだと巨額の開発予算を投じて実用化した燃料電池技術が塩漬けになってしまう。

確かにリチウムイオン電池のように遠からず中国勢にブチ抜かれ、ゴミの技術となります。ホンダが開発した2足歩行ロボット、当時は「凄い! 信じられない!」とされていたのに、今や本家は店じまい。そして映画もかくやと思うようなアクロバチックなマニューバも出来るようになっている。もちろん燃料電池技術を中国に持ち込めば、模倣されることはトヨタだって承知だ。

アシモのような無駄遣いで終わらせるか、捨てるなら有効利用すべきか相当迷ったことだろう。出した結論が「前向きに考える」だったようだ。熟考してみると、トヨタにとってのデメリットは無い。中国に出ていかなければ燃料電池の開発に今後予算は付けにくい。中国で開発の拠点を作っておけば、世界TOPを走り続けられる。燃料電池技術をキープ可能。

写真/中国新聞網

中国政府に対する「恩」も売れる。中国、イヤなトコロばかりじゃない。ムカシほどじゃないまでも、恩はしっかり返す。中国にとって「余った電力を水素に変えて使う」ことは重要。晴天率多く未使用の地域で太陽光発電し、水素作ってパイプラインで送れば天然ガスのように使える。もちろんバスやトラックを動かすエネルギーとしちゃ最適だ。

そしてトヨタに対する評価は上がると思われる。もちろんトヨタとしちゃ何の見返りも期待していないだろう。技術屋さんって政治家やビジネスマンでは無い。育てた子供を潰すという選択肢などありませんから。ちなみにトヨタの出資比率は65%。これだけあればトヨタが主導権を握りながら(撤退することもトヨタで決められます)、技術開発出来る。

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