トヨタ「電気自動車を出すタイミングじゃない」

トヨタの『GR』というスポーツブランドの発表会で、突如出席者リストに出ていなかった豊田章男社長が登場。予定になかった囲み記者会見も行われた。その際に出た質問の多くは「電気自動車の開発で出遅れている。どうするのか?」というもの。多くの一般メディアがそう思っているようだ。

「電気自動車でライバルに先行されている」という認識はトヨタ車を販売する現場の不安にもなっている。顧客から「トヨタは大丈夫か?」と言われた時に、言い返す材料もない。日産の大がかりなアピールを受け、電気自動車技術が最先端だと認識している人も増えてきた。果たして厳しい状況なのか? 

客観的に評価すると、出遅れている状況ではないように思う。電気自動車で重要とされる技術は4つ。言うまでも無く1)モーター。そして電気のコントロールを行う2)インバーター。走行エネルギーを電気に代えリサイクルする3)回生ブレーキ。最後が4)安価で性能の良い電池、である。

このうち、トヨタは電池を除き世界TOPの技術を持つ。例えばモーターはハイブリッドに使われており、20年前から大量生産している。モーターのサイズも小型電気自動車に使えるアクア用の61馬力から、レクサスLS用の224馬力まで揃う。どのサイズの電気自動車にも使えるラインナップを持つ。

直流のバッテリーと交流を使うモーターの電力コントロールに必要な「小型大容量インバーター」(自動車業界以外では使われない難しい技術)もトヨタが得意としている。これまた20年間の技術的な蓄積とコストダウンをしてきており、高性能インバーターを驚くほどリーズナブルに生産中。

ライバルを圧倒する決定的な技術が「協調回生ブレーキ」だ。ブレーキ系を完全電子コントロールしており、ペダル踏むと回生と油圧ブレーキの配分を自動で行う。これはテスラなど全く出来ない技術。いや、完全な電子制御ブレーキを実現しているのは自動車メーカーでもトヨタだけである。

このあたりをGRの発表会に出席していた友山プレジデントと、技術を担当する定方常務理事に話を聞いた。LS600hの開発も担当したことのある定方常務理事は「電気自動車を作る技術は全て高いレベルで持っています。しかもここ数年、ハイブリッドのレーシングカーでル・マン24時間を戦ってきました。高性能車も作れます」。

続けて友山プレジデントは「ハイブリッドや電気自動車で楽しいクルマが作れるのならすぐ取りかかります」。言い方を変えれば「トヨタとして電気自動車の時代になっていないと考えている」ということらしい。確かに電池技術は日進月歩。3年前の電池が今や旧式になってしまっている。

そんな技術を最短で10年以上の耐用年数が求められる自動車に採用しても、どんどん陳腐化するばかり。5年もすれば買い換えることが普通の携帯電話やパソコンと全く違う。だからこそ6年前に350万円もした日産リーフは、すでに下取り査定額9万円という酷いことになった。

友山プレジデントに「ユーザーのために少なくとも電気自動車を作る技術は持っているということをアピールすべきでは?」と聞いてみたら「良いも悪いもそれがトヨタという会社なんですかね~(笑)」。といった直後に「宣伝や広報で少し考えるべきかもしれません」。正しい状況は伝えたらいいと思う。

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