リレーアタックの”泥棒用電子道具”が20ドルで流通し始めていた!

盗難防止に決定的な効果を発揮すると言われてきたスマートキー(暗号電波で車両との交信を行いドア開閉やエンジン始動を行う)ながら、ここにきて「リレーアタック」という方法を使えば簡単に突破できることがアムステルダムで開催された『HITBSecConf2017』に緊急課題として挙げられた。動画を見ると10秒ほどでエンジン始動し、盗まれてしまう。

もう少し具体的に説明したい。スマートキーは1mくらいしか飛ばない微弱な電波を常時出している。スマートキーを所持している状態でドアノブなどに触れると、車両側から電波を発射。スマートキーと通信してドアロック解除するというシステムだ。この電波の中に暗号など含まれているため、同じスマートキーでないと稼働しない。

リレーアタックはこの特性を逆手に取る。スマートキーを持った人が買い物など自分のクルマから離れるとしよう。スマートキーの1m以内に接近し、常時出ている微弱な電波を中継器でキャッチ。そいつを増幅し、車両の側にある受信機に飛ばし、スマートキーと同じ電波を出す。その状態でドアノブに触れば「近所にスマートキーがあるとの同じ」状況。

車両側はドアロックを解除する。そのまま乗り込んでプシュボタン押せば、これまたキーも「ある」と判断しているためエンジンだって掛かり、あっという間に窃盗出来てしまうのだった。1度エンジン掛かったら、止めない限りどこまでも走れる。もちろんエンジン止めたら再始動出来ないものの、今や盗難部品のビジネスも盛ん。バラして売ってしまう。

全て自分のクルマのキーです

自動車メーカーに問い合わせたら、複数のメーカーが「防犯の観点からノーコメント」。この盗難手口、2014年から欧州の大学の研究機関で取り上げられ、2016年にドイツのJAFに相当する『ADAC』で実証試験を行っている。日本では今まで盗難事案が確認されていないということもあり「そんなこと知らなくてもよい」と考えている?

しかしアムステルダムで発表されたのは中国製の”リレーアタック用道具”の存在で、驚くべきことに約20ドルで売買され始めたという。2013年に中部地方で中国人の窃盗グループによる大量の車両盗難が発生したけれど、中国で『イモビカッター』という窃盗装置が流通した直後だった。今回も同じような状況にあると考えるべきかもしれない。

上は家の中にあるスマートキーの電波を使われたドイツでの実例

防ぐ方法はあるのか? 現時点で考えられる唯一の防御方法は、スマートキーから微弱電波が盛れないようにすること。最近、病院内などに携帯電話など持ち込む際に『電波遮断ポーチ』(通信販売で600円程度から購入可能)というのが販売されている。1m以内に人が近づいてもおかしくない人混みなどに入る時だけ売れておけばOK。

それにしても自動車メーカーの情報開示姿勢は問題があると言わざるを得ない。命を預ける製品ということもあり、これまで自動車メーカーの広報対応は他の業界より開かれていた。ここにきて自動車メーカーも都合の悪いことを隠すようになってきている。情報無いのに突如被害者になるようなことがないよう、情報開示をして欲しい。

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