低性能スタッドレス

寒波到来の度に多数発生するスリップ事故を問題視した国交省は「スタッドレスタイヤは4輪全てに装着するよう」という注意喚起を行った。実際、タクシーなど中心に駆動輪だけスタッドレスタイヤを履いているケースも多く見かける。しかし。実際に発生しているアイスバーンの事故の多くは、4輪にスタッドレスタイヤを履いている地元のクルマだ。なぜ今シーズンは事故が多いのか?

そもそも性能の低いスタッドレスタイヤを4輪に履いているクルマが多い。

あまり考えないと思うけれど、同じ雪道でも圧雪とアイスバーンでは「食いつく」理論が全く異なる。圧雪の場合、長靴の底のように凸凹した形状を雪に押しつけてグリップを確保する。一方、事故を起こすケースの大半を占めるアイスバーンでは、タイヤのゴム性能で「氷を掴む」。プラスティック製のトングで濡れた氷を掴むのは難しいが、乾いた布で拭いた直後の氷なら簡単に掴める。それと同じ。

スタッドレスタイヤの使用限界はタイヤの「残りミゾの深さ」で決まっている。つまり「圧雪の時」の性能しか考えられていない。

減っていなくても、10年以上使ったような硬化したスタッドレスタイヤや日本の雪道で十分なテストを行っていない海外の製品は、ゴム性能が低いためアイスバーンでのグリップ性能という点で最初から低い。

先日、新潟県の越後湯沢のショッピングセンターの駐車場でスタッドレスタイヤのチェックを行ってみた。

タイヤメーカーによって異なるが、スタッドレスタイヤとしての性能を発揮出来るのは3~5シーズンだとアナウンスされている。タイヤの溝が残っていても、アイスバーン性能を決定づけるゴムの硬化は避けられないからだ。なのに5シーズンを過ぎたスタッドレスタイヤなど当たり前(タイヤ側面には必ず製造年月が刻印されている)。圧雪なら問題なく走れても、強風で表面の雪が飛んだアイスバーンだと厳しい。

価格の低さを売りにしている新興国製のスタッドレスタイヤも急増中。新興国のスタッドレスタイヤは圧雪路なら日本製スタッドレスタイヤと大差ない性能を持つ反面、表面が黒光するようなアイスバーン(ミラーバーンとも呼ばれる)でのブレーキテストは十分行えていない。数年前に行った急ブレーキテストでは日本製タイヤの2倍以上の制動距離になってしまう銘柄すら珍しくなかったほど。

ヨーロッパブランドのスタッドレスタイヤも、ヨーロッパの乾いた雪なら抜群の性能を発揮するが、今シーズンの日本の雪のように湿気多く、気温上がる昼間に一旦溶けたようなアイスバーンだと意外に滑る。

ということで国交省の注意喚起の内容である「4輪にスタッドレスタイヤを」と同じくらい「優れた性能のスタッドレスタイヤを良いコンディションの状態で使う」ことの重要さを考えて欲しいと思う。タイヤはハガキ4枚ほどの面積の上に大事な命を乗せている。節約も理解出来るが、命はプライスレスだ。

自分のスタッドレスタイヤの性能の低さにより対向車線に飛び出すことなど考えれば、自動車という危険な道具を管理する側の努力義務かと。

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