思案橋

昨日行われたトヨタの社長会見で興味深いコメントがあった。財務責任者である小澤副社長は「今の円高だと日本でのモノ作りが限界に来ている」。一方、豊田章男社長によれば「気持ちだけではやっていけないと理解している。でも震災で日本でのモノ作りを実力を再認識した」。こういった意見の齟齬、大いに好ましい。

本来、トヨタのような企業体制なら、役員以下、社長のイエスマンであってもおかしくない。
かつてないほど厳しいタイミング行われた記者会見に於いて違う意見を述べる、というのは素晴らしいことだと思う。社内で闊達な意見交換を行っており、それぞれ自分の立ち場でモノを言える雰囲気になっているいうことです。

直近の状況を冷静になって評価すると、ECOカーアジアでレポートした
通りライバルも一杯一杯になってきた感じ。破竹のイキオイで伸びていた韓国勢すら、コスト的に厳しくなりつつあるということです。確かにカローラ級のクル
マに6速ATを投入したり、インテリアがあきれるほど凝っていたり、お金掛かっている。

日本の自動車メーカーのエンジニアは口を揃えて
「あんなにお金を掛けて利益が出るならお手上げ」。もしかすると背伸びしちゃったのかもしれません。今年のソウルショー取材の時に紹介した通り、円高と言われる現在の円/ウォンレートでさえ、韓国の物価や韓国企業の年収は日本と比べ安くない。

もし韓国で日本よりクルマを安く作れるなら、そ
れこそマジックのようなもの。といったことを考えると、ここにきて韓国車が急激な値上げを繰り返す理由も納得できる。ひょっとすると韓国車のピーク、過ぎたのかもしれません。今以上のウォン高局面になると、日本車より高コストになってしまうだろう。

といった事象を考えると、確かに現在の円高じゃ厳しいかもしれない。でも10%円安に振れたら(80円台後半)、何とかトントンでやっていけるようになる。20%円安に振れ、90円台後半ともなればイッキに価格競争力出てきます。100円台だと、間違いなく世界トップクラスの物作りが出来る国になる。

ここで辛抱たまらず本格的に海外へ出て行くと、こういった有利さを失った上、物作りのレベルまで落とすことになります。日本の雇用だって戻ってこない。といったことを総合して考えるなら豊田章男社長の主張は個人的に正しいと思う。今の苦境を耐える自信がある、ということなのかもしれません。

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7 Responses to “思案橋”

  1. アミーゴ5号 より:

    また政府の悪口になりますが
    「何で輸出ができないこんな時まで円が高いんだよ。いい加減、勘弁してよ!頼むよ!」というトヨタから政府へのバカタレ苦言と理解しました。

  2. かず より:

    今の政権なり与党の一番弱いところを今までは、震災という非常事態であやふやにして来ましたが、だからと言って改善された訳でも有りません。
    震災の日に辞めてたかもしれない総理大臣でしたから…。
    経済対策だって切迫を通り越しております。
    日本は加工貿易国って、子供の頃習いました。
    大方の答え自体は、判っているはずなのであとは政治がそれを国益と成るように、直ちに行動し注力する時かと思います。
    日本はたくさん売り物が、ありますょ〜。
    企業を国が邪魔する事無くサポートしないと‥

  3. satbody より:

    誰もが何故円高になるのか腑に落ちない。やはり、一番大きいのは当局のなすがままの態度。地震と津波だけでも勘弁して欲しいのに、原発、更に悪いことにはその前年に民主党が政権を取っていた。悔やまれる国民の判断。

  4. もん より:

    ある意味、今、円高なのは日本にまだ技術力、モノ作り力があるからだと思います。
    しかし、これが100円に戻る事態が起きた時に、果たして日本に技術力が残っているのか、それが怖い。
    技術力はちゃんと若い世代に継承されているでしょうか?あと10年ぐらいで、最後のマイスターが退役したらモノ作り力ガタ落ちなんて事にはならないだろうか?
    円安に振れた時は製造業が二度と立ち上がれない時のような気もしています。

  5. kanbutan より:

      風通しの良さはその会社にとって大切な資質です。 空気が澱まない事が大事で、先が見える前提条件です。 トヨタはクリアという事なんですね。 何だか安心しました。

  6. jun より:

    ジェネシスで始まったHyundai&KIAの快進撃は、実は危うい綱渡りのような状態にも感じます。
    中国メーカーが台頭する前に、ブランドイメージを
    日本メーカーレベルまで引き上げたい、と焦るのは判るのですが…。
    日本メーカーは「そろそろ転ぶだろうな。」などと、覚めた目で眺めているのかも知れません。

  7. ナナシ より:

    現代自の昨年度の利益、思った程なかったと思います。
    2000億円前後かと。
    台数の割りに利益が出ていないことと、
    現代自の開発の方向が、コスト低減にかなりむいている
    ようです。シャーシーの絞り込み、開発期間の短縮など。また、現代自の経営陣も近く代わるみたいな記事がありました。(会長が交代?) 私も現代自はターニングポイントに来ていると考えています。

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