韓国で整備したインドネシア海軍の潜水艦、全電源喪失により打つ手無く圧壊
インドネシア海軍の潜水艦『ナンガラ402』がバリ島の北海域で全電源喪失という決定的なトラブルに見舞われ沈んでしまった。潜水艦は基本的に沈む重量バランスになっている。なぜ浮いているか? ダイビングで使うBC(バランシングベスト)は浮いているときに空気を入れておく。そして潜る際、空気を抜く。すると沈んで行く。潜水艦も同じことをやっていると思えばいい。
データ/BBC
ただ潜る時に空気を排出すると音が出る。そこで潜水艦の場合、魚の浮き袋と同じく、艦内にある「気室」の体積を小さくすることで浮力を落とす。浮くときは逆に圧縮していた空気を「気室」へ入れ、気体の体積を増やします。これまたダイビングをやったことのある人なら解る通り、空気量をビミョウにコントロールしてやることで”水中に浮いた状態”をキープ可能。
いずれにしろ気室に空気を出し入れしなければならず、その際、動力が必要になる。ナンガラ402は潜行を始めた時に全ての電源が落ちたらしい。大容量バッテリーを搭載しているため(水中ではディーゼルエンジンが使えないためモーター駆動)、オリジナルの設計なら予備電源もあったと思う。ちなみに製造はドイツです(1978年製)。2012年に韓国の大宇造船で大改修を行っている。
退役した「あきしお」
韓国での改修内容は不明。とにかく全電源が落ちたようだ。気室の体積を増やさない限り浮力はマイナス。駆動力を持っていれば「旋舵」と呼ばれるフィンを上向きにすることで上昇出来るものの、モーターまで動かなくなったら沈むのみ。韓国での改修により安全深度(本来なら機密事項のため公開されない)は260mになったというが、バリ島の北方海域は800mくらいある。
どうやら500mくらいで圧壊(押しつぶされて壊れること)したようだ。圧壊深度は安全深度の2倍程度あると言われているため、事実なんだろう。53人の乗組員にとって耐えがたい時間だったに違いない。御冥福を祈ります。それにしても全電源喪失など潜水艦にとって最も危険な状況。韓国でどんな改修が行われたのか今後大きな争点になるんじゃなかろうか。
呉の「あきしお」は「ナンガラ2」より大きい全長76m。排水量2300t
ちなみに日本の潜水艦は安全深度500m程度と言われている。潜水艦救難艦『ちはや』に搭載されている深海救難艇の性能が1000mとのこと。日本の潜水艦、1000mくらいの圧壊耐久性を持つ? 今回、ちはやの出動要請など無かったというから、インドネシア海軍は早いタイミングで圧壊を知っていたと思う。日本の潜水艦、潜水してる時の事故は一度もありません。
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