韓国で開催されたトヨタとヒョンデの共催イベント、いろんな意味で興味深し! 評価は?
初めて韓国を訪れたの37年前の1987年だった。現代自動車は三菱自動車の技術援助により作られたポニーⅡ(2代目)を出し、起亜自動車がマツダ・フェスティバの生産など始めた頃である。当時「韓国は危ないから行くな」といろんな人に止められたけれど、私も29歳。メディアとしての探求心から何のツテもなく訪韓した。当時、日本と韓国の技術力差は圧倒的だった。
起亜『プライド』
以後、ずっと韓国の自動車事情を継続してみてきた。直近の状況といえば、燃料電池やADASに代表される先端技術力でホンダといい勝負。日産より規模の小さい自動車メーカーは全て抜かれてしまった。気がつけばヒョンデと起亜自動車を合わせれば世界3位の販売台数である。これでF1に出てきて勝つようなことがあれば、ホンダですら技術力で負けと言うことになります。
ヒョンデの燃料電池スポーツモデル
また、ヒョンデからすればトヨタというメーカーは創業時、はるか遠い存在だった。20年くらい前から「トヨタのような企業を目指せ!」を目標にし、2010年代に入ると「トヨタに追いつけ!」となり急速に成長していく。加えて日本と韓国は政治でも経済でも微妙な関係が続いており、解りやすく表現するとトヨタにしてもヒョンデにしても世界で最も厳しい敵対関係という解釈でよかったと思う。
長い前置きになった。そんなヒョンデとトヨタがファン向けのモータースポーツイベントを共催するという。しかも豊田章男会長と、現代財閥の会長の意向だという。韓国に詳しい人は口を揃えて「信じられない!」とか「時代が変わった!」的な印象を受けたようだ。かくいう私も「コレハトンデモナイコトニナッタ!」だ。またもやメディアとして探究心盛り上がる!
果たしてどんなイベントになるだろう、と思いながら会場に行く。最初の”出しもの”が上の動画。ハンドル握ってるの、豊田章男さん。ここまでは驚かない。ナビシートに乗ってるのが現代グループのチョン・ウィソンさんでした。日本人だと「そうなの」程度の印象だと思うけれど、韓国の人や、ましてや現代グループ(財閥と言った方が解り易い?)の人からすれば「何が起きてる?」。
壇上でご挨拶ということになるのだけれど、モリゾウさんはいつもの通り明快! 最近の言葉で言えば「陽キャ」ということになります。大きな声で韓国のファンに向け「楽しんでください~」。方やチョン会長は気持ちが全く読めない。私、人の気持ちを案外読む(きつい発言も気持ちを読んでのことです)。なのに何を考えているのか解らないのだった。おそらく観客も読めないかと。
WRCドライバーの間でもモリゾウさんは超人気!
財閥特有の対応なのかもしれません。確かに感情を出すと、いろんな解釈をされてしまう。それよりポーカーフェイスの方がいいということなんだと思う。以後、これが今回のイベントを象徴することになる。簡単に言えば「今まで打ち合わせしてきたことをそのまんま淡々と成し遂げましょう」だ。モリゾウさんはアドリブが大好きだ。可能な限りファンのリクエストに応えようとする。
「みんなで楽しみましょう!」という恒例の決起挨拶
日本のイベントではファンのリクエストで記念写真も撮るし、サインもしてくれる。何よりファン(タレントじゃありませんでした。笑)との距離を縮めようとします。これはタイのイベントに行っても同じ。けれど韓国では「予定にないこと」とされる。考えて見たらモリゾウさんのキャラが人気になると、チョン会長とのバランスを取らなくちゃならない。されど難しい。
今回のイベントの評価は韓国のメディアや韓国の皆さんがどういう印象を持ったか、ということで出ると思う。楽しんで貰えれば大成功! 課題あれば検証すればいい。私の関心事はチョン会長の本当の気持ちだ。モリゾウさんのような陽キャ路線を目指すか、それとも韓流ドラマにありがちの「財閥の会長様」になるのか? いろんな意味で韓国は興味深いです。
ヒョンデの次世代スポーツ電気自動車。これ手強そう
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今までの国沢さんの投稿の中で、特に解釈が難しい記事だと感じました。
根本的な理由は、自分に韓国との接点が何も無く、韓国の立場から考察ができないから。
ただ直感的にですが、日本でも韓国でも、妙チクリンな解釈をされないことを願っております。
言葉足らずですみません。
解釈が難しいのは、イベントの方でございます。
m(__)m
歴史的なイベントといっても良いかもしれません。
ここでもチョン会長の態度・姿勢は、「まだどう出ればよいのか決めかねてる」ような戦略的かつ自己防衛的な状態だったのかもしれませんね。
それに比べてモリゾウさんのパワー。
トヨタの未来もまだまだ明るいんじゃないかって希望を持たせてくれますね!
お互いの利害が一致してますよね
トヨタは現代に認められることで、韓国国内での忌避を低下させられる
現代はトヨタと肩を並べるどころか、自国に呼びつけた形になって、上に立ったことを国内にアピールできる
儒教の国相手のビジネス対応としては良いのではないでしょうか
政治ではこうはいきませんが
ヒョンデのチョン会長、檀上で笑顔を振りまく豊田会長を見ながら、どうすれば良いのか戸惑っていたのでは?
豊田さんとしては、WRCを支える2社として韓国国内でもモータースポーツを盛り上げたいとの考えでイベントに参加したように見えます。韓国ではWRCでの勝利が販売にはつながっていないようで、ハッチバックなど小型車は人気無いんですよね、相変わらず。
Ioniq5nや、国沢さんが動画で紹介したスケルトン使用の5n?など、ワクワクする車がヒョンデから出てくるので、豊田さんとしては「ヤル気だね~。それなら、一肌脱ぐか」的な感じで韓国に向かったのでは。
会場には、サムソンやハンコックの会長も来ていたようで。韓国経済界にいかにインパクトがあったか、分かりますよね~。
ただ、チョン会長の「戸惑い」から来るだろう無表情は、Ioniq5nの誕生が、MBA幹部たちのマーケティング優先(ドリフト文化を狙ったBEV)の賜物で、開発をBMWの元Mシリーズ主幹にNを丸投げ(想像ですが)していることにあるかと。
前政権時、韓国の顔サムソンは労組が無いこともあり左派政権から徹底的に叩かれました。(現在は労組有)チョン会長はこの機を逃さず「韓国No.1企業」を目指し、販売台数至上主義に走ったように僕には見えています。強引にBEV戦略を変更せずに新モデルを矢継ぎ早に販売するのも、こんな一面があるからかも。
そして今年、チョン会長はNo.1企業の座を手に入れました。