マツダ、ガンコ勢力が少し柔軟になれば売れ行き増へ(6日)

マツダの弱点は「悪い意味でのガンコさ」にあると書いてきた。「レシプロエンジンしかやらない」という判断、スカイアクティブコンセプトを打ち出した時までよかったと思う。されど時代はドンドン変わっていく。その後、何度か”ガンコ勢力”に質問してみたが、もう全く話にならない。「やらないと決めた」ですから。

けれど「電気自動車もやりたい」とか「電気自動車は絶対必要」という技術者だって少なくなかった。聞けば、私らに対する返事と同じく「やらないといったらやらない」と答えているそうな。この流れ、モータースポーツにもいえること。”ガンコ勢力”が全く話を聞いてくれないという。ダーウィンの否定です。

マツダの人や、マツダに詳しい人であれば、ここまで読んで「あの人達ね」と解って頂けることだろう。動いたのは小飼社長である。「どうやらおかしい」と認識したのだろう。もしかしたら件の”ガンコ勢力”に「電気自動車はどうなっているのか?」と聞いたかもしれません。当然ながら「やってません」かと。

小飼社長は自分なりに調べ、危機感を持ったに違いない。それがトヨタと提携する少なからぬ理由になったと考える。もちろんアメリカ工場を引き払い、メキシコに工場作ったのも小飼社長の判断じゃありません。今回の流れでマツダの”ガンコ勢力”が少し柔軟になったら販売も伸びると思う。

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以下、上野カメラマンのレポートその2です

グレートレース、スタートの朝がやってきた。前日の悪夢が解消したためか、ドライバー国沢さんをはじめスタッフの顔は一様に明るい。数日過ごしたジャクソンビルのホテル駐車場に別れを告げ、スバル360国沢号はスタート会場にその小さな勇姿を並べる。その途端、質問攻めだ。

「スバルだね。知ってるよ」「可愛いクルマね」「僕も娘もスバルに乗っているんだ。頑張れよ」誰もが好意的な言葉を投げてくれる。「小さいねえ」ときたので、「中にペダルが付いていて、本当は足で漕いでいるんだ」と言ったら大笑いしてくれた。

六月のフロリダの太陽の下はまさに灼熱。スタートを待つ間に、飲み物調達。屋台で売っていたレモネードをためす。冷やしたレモンをマシンで割って、さらに絞る。そこに小さなオタマで一杯ほどの砂糖をいれて、水と氷でシェイクして、日本の野球場のビールより大きなカップ注いで出来上がり。

なんだこれ!?衝撃のうまさ。あれだけ砂糖入っても全然甘くないし。コドラのなつきさんに持って行ったら大喜びしてくれた。無事ゴールできたら、もう一度飲んでみたい。

12時20分、スタート順が回ってきた。陽気なMCのナレーションで会場に紹介される。チーム国沢もテンションMAX。大声援の中の発進だ。主催者の計らいで、メディアカーもスタートゲートをくぐり出発。おかげでグレートレースに自ら参加した気分を味わえた。これならコバンザメも悪くない。

スバル360のステアリングを握る国沢さんに、コドラ担当なつきさんが行く先を示す。メディアカーのフィガロが追従し、サポートカーが要所要所に先回りして待つのがチーム国沢の編成だ。

ジャクソンビルを離れハイウェイに乗り、国沢号は快調に走っていると思っていたのだが、悪夢は再び襲ってくる。出発後約20分、国沢号は突如ペースを落とし、本来のコースであるインターステイツを離れた。一般道を止まりそうな速度で走ったと思うと、ほどなく安全な場所を見つけて停止する。

後続メディアカーは一部始終を見るだけ。硬い表情で車から降りた国沢さんがぼそりと呟く。「囓った」40年も車好きやってればわかる。それは最悪の半歩手前を意味する。最悪は「焼きつき」。人間なら死を招く大火傷。その次が「抱きつき」で「囓り」も同義。普通なら入院加療が必要なレベルだ。

実は、そこから先の記憶が曖昧。流れを思い出してみる。すぐ国沢さんが出てきて車載の燃料タンクのガソリンを入れ始めた。聞けば分離給油のトラブルが心配だったため、混合ガソリンを持ってきたとのこと。運が良ければこれでエンジンは回るだろうと言う。動いた。しかしスタート時とは比べられない不安定さだ。

国沢さんからは、排煙の色を見るように指示される。徐々に白い煙が出てきた。オイルが回ったせいでもあり、音も少し変わる。若干安定したようだ。やはり潤滑が不足していたらしい。言われれば止まる直前、排煙は白く見えていなかった。1日何とか走り切れば喜多見さんが何とかしてくれる。

2サイクルであるスバル360はガソリンと一緒に潤滑油を燃やしているため、通常なら排煙は白く見える。それがほぼ無色だった。自分でも散々2ストに乗ったつもりだったくせに、気付けなかったのも腹立たしい。しかし弱々しくも再始動なった国沢号は、先を目指し再び走り出す。

国沢号に先行してティフトンの街へ。グレートレースに来なければ、名前すら知らなかった場所だ。その街のダウタウンが初日のゴール。これから毎日、どのようなセレモニーで迎えられるのか、その様子を確かめるためでもある。しばらくすると国沢号が丘の向こうから姿を現した。

初日にして絶望的トラブルに見舞われた車が、とにもかくにもその日のゴールにたどり着いたのだ。安堵で腰が崩れそうになる。その小さなスバル360の奮闘を知ってか知らずか、大人も子供も驚いたような顔で迎えてくれた。そして笑顔の輪ができる。「小さい」とか「可愛い」といった声がかけられる。でもそれ以上に頑張ってることを教えてあげたい。

宿泊地に移動して今後の対策を考える。車の症状からして選択されたのは、オイルポンプの作動を今後も無視し、混合ガソリンで走り抜くというものだった。確実に潤滑するならそれしかない。さらに喜多見さんは即席の添加剤を作ってしまった。微細粒子を燃料に混ぜ込み、荒れた部分にコーティングしようというもの。

それが可能になったのは、遅れると聞かされていた愛用の工具一式が届けられたからだった。工具箱はドラエモンのポケットか? かくしてスバル360国沢号は、翌日に望みをつないだのだった。

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