ARPC7 ラリー タイ
10月16日
昨日より大幅に症状は軽減。おそらく微熱も無くなったと思う。空港に行くとメチャ混み! セキュリティチェックから凄い列になっている。混むのは解っているハズ。だったらその分、係員の真摯な姿勢で対応すればいいけれど、態度悪い。X線の検査台に1つ目の荷物載せ、次のバッグを取ろうとしたら「こっちに置いて下さい!」と、ベルトコンベアーの上にまで持ってこいと言う。高い空港利用料を払っているのだから腹立たしい。きっと公団のトップに問題有るんだと思う。10時発のタイ航空は到着便遅れのため40分ディレイ。途中、再び熱出てきたらしく、原稿も書けず寝たままバンコック着。この空港、滑走路の横にゴルフ場がある。私なら必ず引っかけて滑走路の方に飛ばしてしまいそう。「ふぉあ~!」と叫んだって聞こえまい。エンジンに飛び込んだりしないのだろうか。また、このゴルフ場には小さな池があるんだけど、釣りしてる人もいる。外部から入れないのに。タイに着いて最初に感じる”不思議”であります。空港には今回お手伝いをしてくれる坂本さん(読者の方で、タイから手伝う事有れば言って下さいとメール頂きました。今回、いろいろお世話になってしまいそう)。ホテルにチェックイン。早めの夕食と(タイ料理のカニとエビです。美味しかった)、ホテルの近所の日本料理屋さんで軽く飲んで早寝。
10月17日
チームメンバー3人が乗った飛行機は大幅に遅れ、深夜というか早朝3時過ぎに到着。10時、坂本さんからお借りしたいすゞのSUVでラヨーンに向け出発! タイは道路標識も読めず(たまに英語表記もあるけれど基本的にタイ語)、市内を出られるかどうか心配だったものの、何とか高速道路に入れました。制限速度120kmで道幅も広く快適。たまにバイクが路肩を逆走してきたり、イキナリ道を横切るクルマに遭遇したりする。2回目くらいまでは「おおぅ! すげぇ!」とか言って驚いていたけれど、3回目くらいから動じなくなっちゃいます。ニンゲンの適用能力、凄いと思う。走り出して30分もしたら、もはや「タイ運転マナー」を”ほぼ”マスターしました。パタヤビーチを観光し、途中の屋外レストラン(地元の人が食べる屋根だけある食堂です)でお昼。トムヤムクンとエビ炒め、エビ入り焼き春雨と、海鮮チャーハン。ウマい。4人でお腹一杯食べ2100円。安いと思ってたら、実は英語メニューだったため(金額だけ読めないタイ語だったから怪しいと思った)ボラれてたと後で判明。だってラヨーンの市場の中にある食堂で夕食食べたら、どのメニューも60~100円。ビール1本120円。「もうダメ!」くらい食べたのに、1000円くらいでした。しかもウマい! そうそう。ラヨーンは『スターホテル』をヘッドクォーターとホテルとして使う。18時にラリーカーを載せたコンテナが到着するとのことだったが、20時過ぎまで待っても来ない。されど無事深夜到着!
10月18日
朝からラリーカーのチェック。今回使うラリーカーは私と同じ”重いボディの年式”がベース。ただホンモノのラリー車だからして、けっこう本格的にボディ補強してあるのに50kgくらい軽い。これでモーテックのセッティングがしっかり出来て、カヤバよりリーズナブルなテイン製のダンパーさえ何とかなれば、私のラリー車より実力あると思う。皆さん「全然違うよ」と言われるオーリンズでも使えば思い残すところは無いのだけれど……。50kg軽い分は「壊さないように走る」という心理的なリミッター作動でトントンか? コ・ドライバーと打ち合わせ。スコシさんというタイ人のコ・ドラじゃ有名な人であります。サービスはマレーシアのお金持ちであるサラディンさんのチームと一緒。ジャッキやウマなどレンタルして(たまに人も借りて)日本からメカニックを2人連れて行くくらいだと考えていただければ。お昼は今日も驚くほどエビの入ったトムヤムクン。夜はサラディンさんのチームと一緒に海沿いの海鮮料理屋(砂浜にテーブル置いて幌みたいな雨しのぎを作った素朴な店)。生きた魚介類、主としてエビとカニをその場で料理してくれるのでウマい! マレーシア人もエビとカニが大好物らしい。
10月19日
ペースノートを作るためのレッキ1日目。今回のラリー、非常に狭い地域で行われる。サービスはラヨーン市内にあるホテルから40kmくらい離れた場所なのだけれど、SSが密集してます! 最も近いSS、サービスから400mだもの。したがってレッキの時間も余裕。けれど! コースに出ると驚きの連続であります! いわゆる「道」という概念じゃない。普通、林道などは当然の如く設計図を書いて作られる。古い道であっても、一定のリズムなどあるもの。しかしタイの道と来たら、そういった約束みたいなものが無い。人の土地を避けたらこうなっちゃいました、みたいな感じ。しかも雨期だたっためか一発でリタイヤの原因になりそうな深いミゾや穴も多数出来てる。イヤなことにこういった”落とし穴”、高速コーナーの途中にあったりして。つまり速度落としたらタイムもガックリ落ちるという事。攻めるならリスクを負わなくちゃならない。タイ人のコ・ドライバーとの呼吸もイマイチ。英語なのだけれど、全然発音違うのだ。例えば「80」は「エッティ」。聞き返す事も度々。ペースノートを読むタイミングも合いません。改めてアンちゃんとコンビネーションが良かったことを認識しました。ま、今シーズンはこんな状況の繰り返し。修行であります! ビックリするのはSSの途中に人がたくさん住んでいる事。長い直線の突き当たりに家があったりして。ノンビリした犬もたくさんたくさ~ん! こんなトコロを全開で走って大丈夫なんだろうか、と思う。おそらくワン公を避けられる程度のマージン残して走るべきなんだろう。犬をひいてまで速く走る気にはなれませんから。レッキスケジュールは緩く、4時にホテル帰着。準備も終了。夜はホテルの近所にある市場の中にある食堂へ。バンコックから到着した坂本さんや、会社のスタッフの人など交え7人くらいでお腹一杯食べて飲んで2400円でした。
10月20日
午前中2つのSSのレッキ。1本は道幅のある超高速のSSで、おそらく200km近く出るストレートが何カ所かありそう。気合いを必要とします。凄いのはもう1本の方! 民家や畑の間を走るのだけれど、600mの直線に続き超高速コーナー。さらに800m! のビミョウに曲がったストレートもある。おいおい何km出るんだ? 荒れた場所もあったりして、これまたシビれモノ。一方ペースノートの読み、やっぱりしっくりせず。午後はシェイクダウン。初めてレンタルしたラリーカーに乗ったのだけれど、驚く事ばかり。何たって真っ直ぐ走らず、流れた時のコントロールもシビア。どうやらラリーカーのセッティング、誰にも教えて貰ってないらしい。よく今までこんなセッティングで乗っていたなぁ、と思う。絶対的な速度こそ遅いものの、私のラリーカーの方がフルに性能を引き出せる。いや、私も自分流なのだけれど、長年の経験。乗りやすいクルマってどうなのか解ります。1回ずつ走り、まずリアのアライメントを変更。続いてリアの車高を10mm下げ、さらにフロントの減衰力も変えてみた。ドンドン良い方向へ。ま、基本的な特性しか変えてないため、このあたりまでは簡単なこと。さらに詰めようとか思ったが時間切れ。ただ車体剛性は私のノーマル車と比べられないくらい高く、コントロールしにくいもののコーナリングスピードは明らかに速い! これで良いダンパーさえ組めば、ずっと乗りやすくて速くなりそう。今のダンパー、高速域になると直進付近での動きが渋く、同じく高速域からハンドル切るとロール速い。それにしてもキッチリ作ったラリー車、やっぱり面白いっす! 夜、新井選手と飲んでて「やっぱりオーリンズがいいと思いますよ。ダンパーだけで速くなりますから」。ラリー、いろいろ解ってきたのになぁ。
ステッカーはダンロップと宿泊費を出してくれたタイの磨き屋さんのみであります
10月21日
今日は車検と夕方4時からのセレモニアルスタートだけというスケジュール。未だノドのコンディションが良くないため(夜中に何回か咳き込む)、休息を兼ねて部屋で原稿書き。お昼にサービスへ行くと、問題なく車検をクリアしたとのこと。午後も部屋で仕事。スタート1時間前から準備など。いつものお約束でライトポッドを装着(やっぱりラリー車っぽくてカッコいいでしょう。ダニーさんも好きだったなぁ)。ちなみに今回はアブガス(アビエーションガソリン/航空機用ガソリン)を使う。普通に売っているハイオク、何と95オクタンしかない。こらもうインプレッサWRX STIバージョンの市販車だったとしてもダメ。どうやらタイで走っているフェラーリやポルシェもアブガスを使っているようだ。ここでアブガス用にセッティングしたモーテックがあればキッチリとトルク出るのだけれど、100オクタン設定のSTIコンピューター。ちょっともったいないです。セレモニアルスタートではボディ横の「タイが好き」が受けましたね~! 主催者の来賓の政府関係者から握手を求められたほど。インタビュアーの女性に「少し暑いけれどタイを楽しんでいる。食べ物も美味しい。タイが好きです」と英語で答えたら通訳してくれ、これまたウけてました。後で聞いたら外国人で最も好印象だったとの事。良かった良かった。ラリー車の整備を手伝ってくれるサラディンさんのトコロの人(マレーシア人)、みんな一生懸命頑張ってくれている。今回も完走しなくちゃ! 夜は食べ物を近所の屋台から買ってきて、部屋で食べる。大人数で車座になって食事するの、やっぱり楽しい。
10月22日
いよいよラリースタートである! SS1。走り出すと、やっぱりコ・ドラとのコンビネーションが全くダメ。ペースを抑えて走っているのに、早くも一番危険だとチェックしていた大きなギャップにハイスピードで飛び込んでしまった。「ドガン!」と脳天に響く大きな衝撃の後、空中に居るときに「ソーリー」だって。しくしく。さらに全開で曲がるコーナーの40m後、右の直角コーナー。読むのが遅れ、これまた飛び出す。こうなると恐くてアクセル踏めず。SS2も同じ。やっぱりジャンクション(曲がり角)で2回オーバーラン。ブレーキ踏みながら「トゥレイト!」と大声出しちゃいました。ただSSを6つ終えたあたりから、徐々に踏めるようになってきた。それじゃ、と頑張ってみようかのSS7(25kmと長い)。ジャンプやギャップは抑えて走ったものの、ダンパーからオイル吹き出してしまう。この症状、オーナーから「ダンパー、毎戦オーバーホールしてます。友人はラリージャパンで3本オイル吹きました」と聞いていたのだけれど、まさかこんなに簡単にダメになると思ってもいなかった。ちょうどテインの藤本さん(往年の名ドライバー。1990年前後はトヨタのワークスカーもドライブした)が居たので、どういうセッティングにしたら持つのか聞いてみた。すると「今使っているのは国内のダートラ用なんです。だから160kmで通過するウォッシュボード(洗濯板のような路面)やギャップはテストしてないんです。国際ラリーには使わないように言ってるんですよ」。なるほど。今回リザーバータンクの継ぎ手からオイルが吹き出してしまった。ダンパー内部のバルブのトラブルなら理解出来るものの、こらもうあきません。オーナーに言うと「国際ラリーで使うと言って買ったんですけど」。
いずれにしろスペアが無いので、荒れた路面はベタ抑えで走るしかありません。ちなみにベタ抑えのSS9(SS7の再走)はサラディン選手から1分も遅れ。けれど路面がフラットで全開可能なSS10(14km)はわずか1秒の遅れ! 新井選手からも18秒しか遅れず総合6位です。アジパシおやじクラスのライバルであるマーレーさんを12秒も引き離した。高速コースだと「ジャンプやギャップを抑えれば1カ所で5秒遅れる」(新井選手談)。SS9、間違いなく10カ所くらいをスローで通過したからなぁ。サラディンさんに聞いたら「全部全開」だって。ちなみにサラディンさん、プロフレックスというダンパー使ってます。それにしてもSS10の成績を見ると、欲が出る。スペックCより重くてベアリングターボじゃない旧式インプレッサで(ただ車体そのものはよく出来てます!)、コンピュターも100オクタン仕様のSTI。インタークーラーウォータースプレィがトラブルのため作動せず。コントローラブルなダンロップタイヤ(レグ1のSS152kmを6本で済まそうとしているため、最後はけっこう厳しい状況)が私の乗り方に合っているのか? ギャップやジャンプを全開で走れるダンパーさえあれば、間違いなくマーレーさんを抜けるのに! 悔しがりつつレグ1を終了。
10月23日
ダンパーの予備がないため、レグ2も荒れたセクションはベタ抑えで走るしかありません。壊れる不安を抱えながらだと、全く踏めず。特にSS12ときたら、前半ずっと激しいギャップの連続である。SSを3つ終えると、あらら! グリーンさんに迫られてきちゃいました。前を走っていたマーレーさんが、SS12終了後にタイムを聞きに来る。追い上げられているんじゃないかと気になっているのだ。いずれにしろ今シーズン始まった時はマーレーさんとグリーンさんが目標。2人とも私のタイムを気にしてくれるレベルに届いたということです。これで壊れないダンパーならば……。困ったことに1分以上あったグリーンさんとの差、30秒少々になってきた。それじゃ、と少しだけペースアップ。するとガタガタ路面ののSS(SS12の再走)で簡単に19秒も縮まる。直線さえ全開に出来ればなぁ。されどグリーンさんの6秒遅れ。基本的に乗れてます。続くSS15。ここ、フラットなので今シーズン初めて攻めてみようと頑張りました。するとどうよ! スタートして1,5km地点。新井選手も「予想以上に滑ったから飛び出すかと思った」という左コーナーで外側に膨らみ、土手をヒット! ロアアーム曲げ、さらにバーストしてしまう。タイヤ交換すると大幅なタイムロスになるため、そのまま3本で走る。1分以上遅れてしまいグリーンさんに負け決定。くやし~っ! グリーンさん(不動産屋の社長。大金持ちとのこと)大喜び。ゴール後、私のところにきて「あんたはジェントルマンだから来年も勝負しよう」。タイのアジパシ、参戦台数こそ少ないものの、けっこう接戦である。今回8位となったグリーンさんのライバルであるマーレーさんはラリー北海道で6位。今回7位。ちなみに私は北海道で8位。今回9位という結果。最後でグリーンさんに逆転されたのが悔しかったけれど、収穫あったラリーでした。夜は飲んで飲んで飲んで寝。
10月24日
起きたら10時。急いで準備し、昼に新井選手と坂本さん達と一緒にバンコクへ。タイで一週間クルマに乗ってると、もはや路肩をバイクがコッチ向いて走ってきたり、横の道から突如飛び出してこられたり、全く車間距離無いのに割り込んでこられたりしても動じなくなります。タイ人、猛烈にせっかちらしい。そうそう。タイのガソリンは1リッター約86円(26バーツ)。軽油76円(23バーツ)と、物価を考えれば高い。日本の金銭価値に置き換えると、リッター260円くらいなのだとか。最近激しく値上がりしたため、公共の交通機関が大人気とのこと。バンコク到着後『ワットポー』と呼ばれるタイの古式マッサージ屋さんに行く(日本企業駐在の奥さん方に人気の店とかで、凄く大きい)。2時間250バーツ(約750円)。みんなで並んでガタイの良いオバサンにモンでもらう。背中がバリバリになっていたものの、柔らかくなりました。ちょうどいい時間になったので夕食。新井選手、タイスキを食べたことないのと言う。じゃ行きましょうということに。ジャブシャブと鍋の中間くらいをイメージしてくれればいいと思う。けっこう美味しいっす! お腹一杯食べ、新井選手は10時過ぎの便に乗るため空港へ。見送った後、坂本さん達と日本料理屋さんで飲む。さすがに疲れているらしく、11時過ぎたらバッテリー切れであります。
10月25日
いろいろお世話になった坂本さんに空港まで送って頂き、11時20分発のTG640に乗る。昼食後、原稿書きしようとしたらバッテリー上がっており(シート部分の電源も稼働しておらず。B777の電源、1回も使えたことがない)断念。時間あったので今年を振り返ってみた。初のグラベルラリーである『ハイラインドマスターズ』の内容を考えれば、出来過ぎだったかもしれない。3戦目の北海道で左足ブレーキをマスター。4戦目のWRCジャパンからアンチラグも付いた。そして初めて本格的なラリー車に乗った今回。テインのダンパーの本来の使い方(ダートラ用)に近かった比較的フラットのSS10で6位! アブガス用にセッティングしてあるモーテックのコンピューターと、プロフレックスのダンパー使うサラディンさんに1秒差まで迫れた。パワフルなランエボ(タイのコース、ランエボ向きでした。だからこそ新井選手もバリマキ選手に届かず)を駆る4位のアーガイル選手だって3秒差。荒れたコースのSSも直線だけでいいからアクセル全開出来れば、もっともっと速く走れたろう。その点、今シーズン使ったカヤバは壊れる心配のなく良いチョイスだったかもしれません。ただコーナーじゃやっぱり踏めませんけど……。初心者は国内のラリーならオーバーホール無しで千km走れるカヤバを使い、中級になったらプロフレックスかドラモンド(セットで40万円前後)。イケそうならオーリンズといった感じだろうか。それにしても資金切れが悔しいっす! インプレッサのスペックCでもランエボでも、サスペンションの取り付け部さえ補強し良いダンパーを付ければ、限りなくノーマル車できっとマーレーさんにゃ勝てると思う。もう1年でいいからアジパシに出たかったなぁ。
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