新型インプレッサの試乗レポート(永田)
2016年の日本カーオブザイヤー受賞が象徴するように、昨年登場した日本車では最大の注目株となった現行インプレッサにまとまった距離を乗る機会がありました。今回試乗したのはスポーツ(5ドアHB)の最上級グレードで、18インチホイールなどを装備する2.0i-SアイサイトのAWD(車両本体価格259万2000円)です。
自動車メディアの記事ではほぼ絶賛の嵐となっている新型インプレッサですが、総合的な印象は「普通に乗っているとそれほど強い印象があるクルマではない」というのが結論です。という私もプロトタイプに路面のいい修善寺サイクルスポーツセンターで乗ったときには後述するスピード域とも関係があるのか「これは凄いクルマだ!」と感じていたのですが‥‥。
まずエンジン、トランスミッションといった動力性能関係は、全域トルクフルな2000ccエンジンとリニアトロニックという名前通りアクセル操作に対し自然にレスポンスするCVTのマッチングが良好で、非常に運転しやすいです。
絶対的な速さも目覚ましい部分こそありませんが、2000ccNAというスペック相応の動力性能は確保されており、エンジン音も全体的に力強い上に官能的な要素もあり、高回転まで回してもCVTの音が少し聞こえるだけで耳障りでない点には、好感が持てます。
ハンドリングや乗り心地も普通に乗っているとよくまとまっているけど、全体的に印象的な部分はないというのが率直なところです。むしろ感じたのはインプレッサというクルマや新しいプラットホームに対する期待が大きいせいなのか、「18インチタイヤを履いていることを考えれば乗り心地はいい部類だけど、中くらいの凹凸に対する追従が良くなれば」とか「ステアリングフィールが全体的にもう少しビシッと締まったものになれば」といった、期待を込めた要望でした。
こういった印象に対しては、インプレッサは大きなマーケットであるアメリカではごく普通の人が毎日乗るブレッド&バターカーのような選ばれ方をするケースも多いでしょうから、「これはこれでクルマのキャラに合っているのかな」とも感じていました。
しかし、ここまで書いた地味な印象は公道でも常識的な範囲でペースを上げたり、大きな凹凸がある荒れた路面を通過すると激変し(それが曲がりながらだったりするとさらに顕著です)、素晴らしく正確なライントレース性や前述した数値が納得できる強固なボディ剛性といった部分からSGPのポテンシャルの高さ、骨格の強さのようなものを感じることができます。
私は現行インプレッサが200万円から250万円あたりが中心価格帯となるポピュラーなクルマで、世界有数の総合的な安全性を持っているだけでも大きな存在意義のある尊敬すべきクルマだと評価しているので、欲しいならすぐ買ったらいいと思っています。
しかしそれだけ魅力あるクルマだけに余計にそう思ってしまうのか、「内外装にボルボV40のような遊びがあったら」とか「SGPのポテンシャルの高さを、ステアリングフィールや乗り心地といったいつも触れる部分で味合わせてくれたら」といった欲も生まれ、何らかの華があったら、もっと良かったのにと感じています。
同時に現行インプレッサでSGPのポテンシャルの高さを確認できたことから、SGPを使って開発されるこれからのスバル車に自ずと大きな期待を持ちました。現行インプレッサの熟成を含め、今後しばらくはスバル車から目が離せない時期が続きそうな気がします。
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以下、興味のある人はSGPの紹介もどうぞ
発売の遥か前から小出しに情報が公開されていたこともあり、すでに語りつくされた感もありますが、5代目となる現行インプレッサの注目すべきポイントは大きく2つです。
1つ目はスバルグローバルプラットホーム(SGP)と呼ばれる、スバルとしては03年登場の4代目レガシィ以降のモデルが使っていたSIシャーシ以来13年振りとなる新しいプラットホームの採用です。SGPの登場は、スバル車が基本的に1つのプラットホームから車種を展開していることを踏まえると、「スバル全体のフルモデルチェンジ」あるいは「新時代のスバル車の幕開け」とも考えられます。
SGPの特徴は2つで、1つ目は車重増なくクルマの多くの性能の土台となるボディ剛性を飛躍的に強化したことです。具体的には部分によって異なりますが、ボディ剛性は旧型より約70から100%強化されており、スバルでは動的質感と呼ぶハンドリング、乗り心地の向上、振動、騒音の軽減の基盤となっています。
2つ目はSGPがハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車といった電動化も考慮されたプラットホームであることで、一番短期的に登場すると思われる次のスバルのハイブリッドカーがどんなクルマなのかも興味深いところです。
2つ目は近年大きな注目を集めている安全性の高さです。予防安全では伝統のスバルAWDシステムや名前はver.3のままながらレーンキープシステムの性能向上、追従の際の加速特性のモード切替えといった改良を受けたアイサイトを全グレードに標準装備とし、オプションで斜め後方の警戒モニターなどが含まれるアドバンスドセーフティパッケージも設定されます。
さらにボディ剛性の強化も大きく関連している衝突安全でも、右ハンドル、左ハンドルともにアメリカの保険機関が実施する非常に厳しい衝突モードであるスモールオーバーラップ、今後アメリカで実施される交差点の右折、左折待ちでの正面衝突を想定したオブリークと呼ばれる試験にも対応しているのに加え、歩行者を撥ねてしまった際のダメージを大幅に軽減する歩行者エアバッグを全グレードに標準装備し、現行インプレッサ以上の総合的な安全性を持つクルマはそうありません。
エンジンは水平対向4気筒の1.6ℓと直噴化された2ℓの2つで、FBという形式名こそ変わらないものの軽量化など多数の改良を受けています。トランスミッションはCVTのみの設定で、駆動方式は5ドアハッチバックのスポーツ、4ドアセダンのG4ともに全グレードにFFとAWDが設定されます。
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