ダイハツ不正問題で考える。そもそも軽自動車は”安全性”より”安さ”が優先されてる乗り物です

1998年に軽自動車の規格が変わり、今と同じ全長3400mm×全幅1480mmになった。理由は、登録車と同じ衝突基準を適用するためである。登録車と同じタイミングで衝突安全基準を向上させないと、登録車と軽自動車が衝突した時に圧倒的なダメージを受けてしまう。当時、軽自動車に登録車と同じレベルのオフセット衝突基準を導入するか、大いに話題となる。

1998年にダントツの安全性を持っていたライフ

最も積極的だったのがホンダ。25年前のホンダの皆さんは熱かった。話を聞くと「以前から軽自動車の安全性に疑問を感じていた。でもウチだけ対応すると車両価格が上がるし、車重も重くなるため燃費悪くなってしまう。安全基準の変更は歓迎してます。登録車に乗る人と軽自動車に乗る人の命は同じですから」。そして64km/hオフセット衝突に対応した。

2001年2月の記事

当時私はこんな記事を書いている。「ホンダは当初から64kmオフセットに対応していたものの、ダイハツは58kmオフセット対応。スバルが55km。スズキと三菱は対応していなかった。昨年度(注・1999年を示す)からJNCAPでオフセットモードを入れれば、BやCといった評価続出となったに違いない」。JNCAP、なぜか1998年にオフセット衝突試験を行わなかった。

2019年のタントですらこんなん

評価基準に大きな差が付くと、酷かった自動車メーカーの恨みを買うからだ。1998年に私はメーカーの違いによる安全基準の対応差について書きまくった。一般メディアも取り上げ始めたほど。ただJNAPで試験してないので証拠無し。まずいと思ったのだろう。各社猛急で衝突安全性を向上させた。3年後の2001年からJNCAPもオフセット衝突を始めるのだけれど、全メーカー対応済み。

その際、スズキとダイハツに取材して「なんか違うんじゃないか?」と憤った。どちらも「安全性を向上させるために車両価格が上がって燃費悪くなるのは本末転倒」とホンキで言うのだった。「登録車と衝突したら危ないのでは?」と言うと「そもそも軽自動車の事故率や死亡率は低い」と言う。確かに当時の軽自動車の使われ方は、地域内での移動手段だった。

N-BOXはインサイトと衝突させ安全性を担保

ムカシはクルマに乗る人に共通する概念として「軽自動車は危険!」というモノがあり、親は子供に「軽自動車はやめろ」と言ったものである。現在50歳以上の人なら覚えていることだろう。物理的な法則により、重い物体と軽い物体が衝突したら、軽い物体は大きなダメージを受ける。テスラのサイバートラックなんか軽自動車からすれば凶器のようなもの。

ホンダの主張通り、登録車の衝突基準が上がったら軽自動車も同じくらい頑張らないとならない。されどスズキとダイハツはコストを優先したのだった。今でも軽自動車が登録車と衝突したら厳しいことになるのは同じ。特にリアシートの安全性が十分に担保されているとは思えない。乳幼児をリアシートに乗せている姿を見るといつも心配になります。

現行ジムニーはユーロNキャップで試験され、日本車の中ではダントツに悪い☆☆☆。軽いだけでも不利なのに単独事故でも酷いダメージを受ける。ということで軽自動車は安くて便利ながら、弱点も持っていることをしっかり認識しておくこと。私のウーブンシティ八丈島は皆さんゆっくり走っているので軽自動車だって全く問題無いです。

そして全て認識した上で乗るのならOK。登録車と同じくらい安全だと思っているなら違うことを認識して欲しい。

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10 Responses to “ダイハツ不正問題で考える。そもそも軽自動車は”安全性”より”安さ”が優先されてる乗り物です”

  1. アミーゴ5号リボーン より:

    軽自動車は、危ない。
    軽自動車は熱効率が悪く、燃費もこれ以上良くならない。
    軽自動車に、嗜好性の高いスポーツカーがあってはならない。

    いろいろ言われてきた軽自動車で、それぞれ正誤良悪があるわけですが、20数年前のホンダの技術者のような「本質に対する魂のこもった気概」こそが、尊く素晴らしいと痛感します。

    それに今の軽自動車も重く豪華になりすぎて、何やら規格自体が本質を見失っている。時代に合わせて、抜本的に見直す時期に来ていると思います。

  2. ななす より:

    言い換えると後席に人を乗せなければ軽自動車であっても下道であればコンパクトカー位の安全性は担保されてそうではありますね。
    死亡重傷者率で見ると小型普通車と比べて数%高い位ですし。

  3. より:

    大変久しぶりのコメントです。

    つぶれすぎてしまう軽自動車はそういった前提で乗るのは当然だと思います。今後電気自動車化の流れで世界で戦える”軽サイズ”を作らねばならない状況になった時、こうしたガラパゴス規格は洗練されていけば良いと考えています。残念ながら、ダイハツにはとてもじゃありませんが無理でしょうね。中国メーカーには大いに期待してます。

    質問ですが、軽自動車とは逆で、発売ホヤホヤのテスラのサイバートラックはつぶれなさすぎな様子なのですが、そんな車は乗っている人にすべて衝撃が行くんじゃないかとアメリカのネット上で議論を呼んでいるようなのです。国沢さんはどう思いますか?

    クラッシャブルゾーンという概念は通用しないのでしょうか?一般には知られていないような、最先端の衝撃安全概念があるのでしょうか?

    引用サイトの動画はいろいろと素人解説してくれていますが、参考程度。リアタイヤもハンドルで動く構造とは言え、フルラップの衝撃でリアタイヤが明後日の方向に向いてしまうだなんて初めて見た気がします。

    引用サイト
    https://www.youtube.com/watch?v=9ll2_BDZpI4

  4. 甘納豆 より:

    そろそろ自分と妻の車を1台に集約しようと考えて
    軽自動車が最有力候補ですが、事故の映像を見るたび不安になります。
    特に、前後挟まれた事故は原型を留めず乗員の命も当然絶望的。

    価格が小型車並みになったのだから、車体の強度設計もそれ並みにして下さい。
    重くなるのでターボ仕様だけ、便利な装備も平均なもので十分。
    室内が太いピラーで狭くなってもそれが安心感になる。
    いっそ規格を見直して安全性でも世界に輸出できる軽自動車が欲しい。

  5. sansan より:

    税金の安さで販売実績が伸びていますが、これはドーピング効果で成績を伸ばしているということですね。
    昔イギリスでは、税金の安い3輪車(リライアント・ロビンのような)に人気がありました。この3輪規格が今でも残っていて、装備や品質を追求した高価格3輪車が英国内で普通車以上に売れていたとしても、それが国際競争力を持たないことは明白で、輸出されることもないでしょう。
    軽自動車もそれと同じで、本来は200万円のリッターカーの方があらゆる面で優れていても、税制効果で250万円のフル装備の軽自動車が選択されてしまうので、大きな市場のゆがみを引き起こしていると思います。

  6. トヨタ車ユーザー より:

    とりあえずでもオフセット衝突対応をしているいまの軽自動車を見てしまうと普通車同等カモと?感じでしまいます。しかし、550㏄や660㏄前期の軽自動車をご存じの方なら「軽自動車アブナイ説」をいまでも実は信じているのではないでしょうか。商用車で4000円、乗用タイプで7200円で乗れたのだから、本当に原付の理論をそのまま自動車にあてはめたらという感覚で作られていました。
    普通車に引きずられる感覚で軽自動車も性能アップをしてきてはいますが、やっぱり普通乗用車の代用ということを使うときに頭の片隅に入れておかないと、という事はあると思います。どちらかというと、超小型モビリティのほうに近い存在なんだと。
    一方で、渋滞対応クルコンとかVSCなんかなくして、その分のコストでボディの後方・側面の衝突安全性をアップさせられないのかなとは思います。

  7. natumenatuki より:

    しつこい様で申し訳ありません。
    2023年7月に浜松市北区で、ミライースが追突されて運転された方が事故テレビ静岡のニュースで見るとうりです。ミライースは、コストと燃費から、他のダイハツとは、異次元の酷さです。
    引用:https://www.youtube.com/watch?v=2_wmbv2NyZ4

  8. しんぶんし より:

    JNCAPにポール側面衝突の動画が無いってのも同じ様な理由なんでしょうか?本来なら彼らが抜き打ちで安全評価して不正を暴くべきなのに、全て出来レース。ダイハツも不正できると分かっていたから不正した。ある意味被害者です。結局、国と仲良くやっていては駄目なんです。本田宗一郎さん、国沢光宏さん、国に楯突いてこそ本物ができる。

  9. バビロン より:

    経済的に厳しくて軽自動車に乗っているものです。乗っても2人なので、スポーツカーではなく、クラッシャブルゾーンを設けた安全性重視の2人乗り軽自動車とか作ってくれたらありがたいです。老夫婦であってもぺしゃんこになる最後は考えたくないですね。自動ブレーキとか安全性が高ければ買い替える人はいると思うのですが。軽だけど安全な車ってあってもよくないでしょうか。私はジムニーはそうなのかと思っていたので目からウロコでした。

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