「最高!」から「あちゃ~!」。そして泥沼。ラリージャパンで厳しい修行をすることに

人生修行だと解っていてもヘタ打つと激しくヘコむ。ラリージャパンに出ようとしたらお金も手間も膨大に掛かる。というか本来ならやらなくてもいいことだし、上手く行ったってタイした得なんか無し。むしろ失敗した時のリスクの方がはるかに大きい。でも人間、ナニもしなければ面白くないです。死ぬときに「まぁまぁの人生だったな」と思えればステキだ。

今回ダンロップです。高山で使った米国タイヤは絶対的なグリップを含め、いろんな意味でWRCには厳しい。ダンロップのFIA認定タイヤ、初めて履くのだけれど優れたラリータイヤの資質となる「丈夫さ」で文句無し! 上のような衝撃受けてもパンクせず。しっかり暖めれば絶対的なグリップ高くてコントロール性も良い。そいつが素晴らしいタイムになって出ている。

さてラリーである。走ってみたら上々。ルーテシアのパフォーマンスは高い。ベタ抑えで走っても十分納得いくリザルトを確保出来そう。しかし! それじゃラリーやる意味なし! 可能な限り攻めて1つでも順位を上げたい。そんなことから2つ目のSSを攻めたら、タイヤ温度が十分上がりきっておらず、左コーナーでリアが”つぅるん”と滑って右のカベに「ガキン!」だって。私のミスだ。

そこから激しいオーバーステアになってしまう。高速コーナーなんか思い切り挙動不審。当然ながらフルアタックなど出来ない。走行可能だったのでサービスに戻ると、喜多見さんが「ハブとリアのトレーリングアームが曲がってますね。けっこうなトーアウトです」。普通ならハブベアリングを交換するのだけれど、貧乏チームのためスペア無し! 困った!

万事窮すかと思いきや、今回ルノージャポンが派遣してくれたユーロフランスに聞いたら「ウチの試乗車から外してきます!」。ちなみにユーロフランス、会長や社長を含め超が付くクルマ好き。夜のサービスには部品間に合わず、土曜日の朝に交換する算段。私は人に恵まれている。喜多見さんを始め、ラリー業界じゃ知らない人がいない横島さんと岡田さんが居ます。

朝の短いサービスで交換。無事土曜日も走ることが出来ました。とはいえアライメント調整をする時間なく、なかなかヤンチャなハンドリング。左右輪でトーイン違うため荷重掛かるとけっこう振られる。フルアタックは無理。それでもルーテシアが楽しいし、何より負けたくない。加えてずっと狭いコーナー続く金曜日と違い、街中を通るなど道も楽しいったらないです! 

土曜日午前中最後のSSは「鬼久保」という箱根ターンパイクのような素晴らしい道。こらもう攻めざるを得ない。気合い入れたら、左コーナー進入でバウンドした時に挙動変化しギャラリーがたくさんいるコーナーで路外に飛び出す! 写真はサポーターの方が撮ったもの。幸いダメージなく、しかも路外に1mくらい落ちたのにバックでコース復帰。ラッキーです。

昼のサービスで喜多見さんがアライメントをしっかり取ってくれた。するとどうよ! 午後は過去最高くらいクルマの状況が良い。こうなると午前中のストレスを晴らすべく頑張りたくなる! もっといえば喜多見さんや横島さん、岡田さんといった素晴らしい人とラリーやるなら、それなりの走りをしなくちゃ恥をかかせる。ラリーの神様だって許してくれまい。

何より今回はコ・ドラが素晴らしい! 14年前のラリージャパンから隣に乗ってくれている木原さんと久々に組んだのだけれど「ラリーってこんなに楽しかったっけ?」と思うくらいペースノートのリーディングがレベル高い。もう目の前のコースが見えてくる感じ。午後の1本目のSSは慎重をベースにしつつ、キッチリ&丁寧に走り始める。イイ感じのペースです。

2kmほど走った地点で突如前輪の横Gが消え、そのまんま曲がらず壁に向かい始める。ココロの中で止まれと思うが、残念なことに物理的なチカラは出ない。上の動画のラインを辿りドガン! 再スタートしようとするが、ハンドル切ってもクルマは思った方向に動かず。降りてみたら、ドライブシャフトとロアアームの破損。このSS、勝田お父さんが横転。ロバンペラも突っ込んだ。

こらもうロシアンルーレットのようなもの。ホンの僅かな速度差やラインの違いで決まる。ハブすら持っていないため、この時点でリタイア決定です。直せば明日も走れたのに。文頭に書いた通り、失敗した時になってしまった。ラリーやらなければ背負わない悔しさがやってくる。尻尾巻いてサービスに戻り報告すると喜多見さんが「トロトロ走るよりずっと良いです!」。

1週間くらい泥沼の気分を味わい続けるだろうけれど、いろんな人に慰めてもらったり「来年また出てください!」と言われたり。人生、こうやって助けられる。少しずつ「来年またやろう!」という気持ちになってきました。

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10 Responses to “「最高!」から「あちゃ~!」。そして泥沼。ラリージャパンで厳しい修行をすることに”

  1. アミーゴ5号 より:

    著名などなたかが「老いとは、億劫との戦いだ」とおっしゃっていました。

    でも喜多見さんのコメントは、そういうレベルではないですね。

    国沢さんのラリー参戦レポートを読んで、「青春の勲章は、挫けない心だと〜♫」の「青春」を「人生」に置き換えなければいけないと、あらためて学びました。

  2. いけだせいいち より:

    お疲れ様でした
    そしてありがとうございました

    自分は地元豊田市TOYOTAスタジアム近くに住んでいるため、仕事帰りにたまたまクルマで走っていたらモリゾーさんの白のセンチュリーを筆頭にラリー車が走ってきてビックリ!(観戦チケットは仕事があったため諦めました)
    思わず写真を撮っていたら周りのも女性を含めスゴイ人だかりが・・・(笑) 少なくても確実にラリーへの認知度は上がったと思います

  3. Rotarycoupe より:

    お疲れ様でした。

    過去に私も、それまで普通にあった前輪のグリップが突然抜けて壁に呼ばれた経験があります。ブレーキングが必要なコーナーなら手前でロックするので次の手を考える猶予もありますが、ノーブレーキで侵入するところは曲がり始めてからグリップが抜けるのでなす術がなかったです。

    WRCのトップドライバーって、それでも捻じ曲げていくんですよね。ランチアが強かった頃、ドライのモンテでギャラリーが雪玉を投げ込んでそこだけ雪道にしてしまった。当然スリックタイヤで突っ込んできますが、ワークスドライバーは姿勢を乱しながらも何とか曲がっていく。しかし出走10番目以降だと真っ直ぐそのまま壁に当たるドライバーが続出。トップクラスと10番目以降では、タイム差以上に実力差があるのを知りました。

    カンクネン、見てみたかったです。

  4. CX-60 より:

    >トロトロ走るよりずっと良いです!
    すべてのことが、この一言に詰まっている気がします。
    日本人は、仕事も遊びも金遣いも、トロトロやりすぎです。
    ダンロップみたいに、カー用品店ブランドの激安タイヤも作るけど、FIA公認タイヤも作れます!にならないと!

  5. Takezo より:

    まずはお疲れ様でした。
    結果は残念でしたが、国沢さんならリベンジしてくれると思っています。
    現地での応援がとても楽しかったので、また来年も応援しに行きます。
    出場楽しみにしています!

  6. sennenhund より:

    お疲れ様でした。

    10日にサービスパークで2019年セントラルラリーのSSで撮ったMIRAIの写真にサインをいただいた者です。

    今回、岡崎SSと恵那SSでお待ちしていたのですが
    叶いませんでした。セレモニアルスタートで言われておりました様に、是非3年はこの車で参戦下さい。応援に行きたいと思っています。

  7. masa55 より:

    お疲れ様でした。
    ラリー初観戦しました。
    最終日の夕方、豊田スタジアムで
    帰ってくるラリーカーと表彰式の観戦だけでしたが
    目の前を走るラリーカーとイベントの雰囲気
    あの音を楽しめました。
    来年はSSで、国沢さんのラリー車を見てみたい
    です。いろいろ苦労はあると思いますが
    リベンジするのを楽しみにしています。
    あと、来週のベストカーイベントも楽しみに
    しています!

  8. しんたろ より:

    本州初のWRC開催にご参加お疲れさまでした。

    残念ながら私はTV観戦でしたが見応えのあるラリーを堪能させてもらいました。

    日頃見慣れた日本の山道をワークスマシンが突っ走る光景と特にオンボードカメラの映像のスピード感には面喰いつつも新鮮な感動でした(笑)

    トヨタにとっても必勝態勢でヒョンデに1-2決められたのは悔しかったでしょうけど来年に繋がるカツタネンの3位で来年が楽しみになったという事と、国沢さんも来年の完走の目標と合わせてワタシも現地観戦を目指します(笑)

    ともあれケガが無かったのは何よりという事でお疲れさまでした!

  9. z151 サンバー愛好者 より:

    茶化してばかりですみません。
    真剣な話、プライベーターが自前のクルマでWRCに参戦するなんて夢のようなことを実現された国沢さんが羨ましいし、尊敬します。
    男の夢として思うことはあっても、実行できる人はそう多くありません。
    今回は最終的にリタイアとなってしまいましたが、アクシデントにあったからこそ試乗車からハブを借りたり、様々な動きが周りで起こった。
    まさに「情けは人の為ならず」。
    どうしてもマシンとかドライバーに目が行きますが、支えるチームやオフィシャル含めて人間臭いモータースポーツだなと思います。

    来年も行けるようにしっかり働きます。

  10. kangoo のり より:

    ルノー車に乗っている人間として、
    ルノー車が WRC で走るのはうれしい!!
    しかも、いつも、JSports 3 でみている、国沢さん。

    Day2 でサービスに入ってきたところを見ることは
    できましたが・・・・途中で Result から、
    名前がなくなって・・・どうしたのだろうと。

    でも、プライベータとして走っているのをみて、
    ほんと、うらやましいなと。

    来年も観戦にいくぞ!!

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