たまには分野違いの自動車評論家が書くJR振り子車両『8000系』のインプレッションなど
久万高原ラリーの帰り、松山空港からのヒコウキが取れなかったので、高松空港便にした。松山駅から高松駅まで3列シートで運賃3分の2のバスかJRかで迷ったものの、今まで一度も乗ったことのない四国の特急に乗ってみようと『いしづち』を選ぶ。ホームに行くとこんな車両。初めて見た。ヨーロッパの車両みたいなデザインですね。走り出すまで普通の電車だと思っていた。
しかし! 走り出すとカーブでけっこうなバンクをしてる! 振り子だ。振り子車両、初めて乗ったのは中央西線を走っていた『しなの』の381系。1976年のことでした。カーブに飛び込むと一旦外傾する挙動を出してから内側に倒れ込む。重心を利用した自然振り子式のため、余分な挙動出る。相当な違和感で、振り子酔いする人もけっこうな割合で出た。確かに気持ち悪い。
バンク角は5度。カーブ部分にはレールにも最大で5.6度の『カント』と呼ばれる横Gを減らすための傾斜が付けられているため、しなのはレールと合わせ10.6度も傾く。S字カーブだと21.2度も傾斜変わる。JRにも気持ち悪いという苦情が数多くあり、以後、振り子酔いを軽減するためバンク角を3度に減らした。バンク角3度の振り子は『くろしお』などで乗ったけれど、違和感薄い。
今回乗った8000系はバンク深い! カーブに飛び込む速度が驚くほど速く、しかも自然に倒れ込んでいく。こら凄い! と調べてみたら、やはりバンク角5度。揺れないのは『制御式自然振り子』と呼ばれる方式のためらしい。線路のマーカーを付け、そいつを車載のセンサーで読み取り飛び込むカーブに合わせ、事前に車体を傾かせていく。カーブで”ほぼ”横方向のGを感じないほど。
イラスト/鉄道総研
振り子を利用しコーナーばかりの区間を常時100km/h以上でぶっ飛ばすのだけれど、乗り心地が超を5こ付けたいほど酷い! トイレに行こうとしたら、掴まりながらじゃないと歩けず。上下方向もさることながら、左右方向の挙動だって激しい。トイレ中、揺すられまくる。よく脱線しませんね、と思う。車輪のフランジ、高さ方向で30mmくらいしかない。乗り越えたら脱線です。
高架になっているコンクリート軌道を走っていると130km/hでも揺れないが、砂利軌道区間でかっ飛ばすと「大丈夫かいな」と思う。発展途上国の鉄道だと揺れることは珍しくないものの、日本国内でこんな暴れまくる特急は初めて。今の速度をキープしようとすれば保線作業を丁寧にならないとアカンでしょう。この暴れ方は是非一度体験することをすすめておく。ちなみに日本一揺れるの、函館市電だ。
インテリアなどはオシャレ
車体側は補機類からの騒音がスンゴイ! エアコンプレッサーはクルマで使う電動空気入れと同じ音質で100倍くらい賑やか。稼働すると「ブーッ!」とウナる。音質が酷い。エアコンはオフと強風の2択。寒くなると停止して静かになり、暑くなってきたらもの凄い騒音を出して強い風を送り始める。鉄道車両って手作りみたいなモンだから仕方ないか。でもたまに乗ると楽しいです。
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いつも楽しみに拝見しています。
お書きのように線路の保線の程度、精度が影響するようにも思います。地方路線では東京と同じようなレベルで整備するのは難しいのかもしれません。東京都内でも、例えば中央線の新宿ー中野駅間に比べて、新しく高架にした三鷹ー国分寺間の方が、線路が新しいこともあり、特別快速に乗ったときの振動、乗り心地がだいぶ違うように感じます。
自動車のエンジニアにお話をする機会があった時も、車の乗り心地のうち、かなりの部分はアスファルトコンクリートの路面で決まる。路面が良ければ、乗り心地は良くなると当たり前ですが、路面側の話をしたこと思い出しました。車室内の騒音も排水性舗装ですと、格段に静かです。
予讃線懐かしいですね。
幼少期(45年位前)岡山県宇野駅からの連絡船を降り、そのまま高松駅の構内に入り、予讃線ホームにたどり着くと、当時の特急キハ82のディーゼル音と床下からの熱気、各種補機類の唸り。
そして超ルーズなトルコンの加速。
当時は恐らく、100キロ超えるかどうかだったと思いますが、比較的カーブの少ない香川県内でも結構揺れたのを思い出しました。
3年ほど前に、初めて電化された予讃線特急に岡山駅から観音寺駅まで乗りましたが、車両は見た目新しくなっていましたが、駅舎や線路周り(電化に伴い新設された複線高架部以外)は40年前と余り変わりが無いように感じました。
よく言えばノスタルジーですが、本土からは取り残された様な感覚を覚えたのも事実です。
民営化後、JR四国は瀬戸大橋線だけが辛うじて黒字だったのが、近年は全線赤字のはず。
保線が疎かになっていないか正直心配です。