ダントツ性能
日本車がヨーロッパで伸び悩んでいる。特にDセグメント(VWパサートやプジョー407のクラス。日本車だとアコードやアヴェンシス)が厳しい。例えばパサートなど見ると、燃費で圧倒的に優勢。ディーゼルも多数のバリエーションを持つ。シュコダのオクタビアは強力な価格競争力により売れ行き2位。
翻って日本車を見ると飛び抜けた強味に掛ける。アヴェンシス(日本では販売されていない)に乗ったのだけれど、なるほどアウェイで戦おうとすれば押しが足りない感じ。このあたりを明確に指摘したのが、コマツ(重機メーカー)の先代社長である坂根氏だ。「ダントツでないと世界と戦えない」は名言だと思う。
ダントツとは「断然TOP」。圧倒的な性能や魅力を持っていないとダメだということです。そう考えてみると日本車のDセグメントにはダントツ性能を持つクルマが無い。しかもモータースポーツから総撤退したため、ブランドイメージも薄くなってしまった。日本車を買う理由が見つからないのだ。
いや、勝つどころか押される一方。ディーゼル一つ取っても、ヨーロッパのメーカーは1)小排気量の廉価ディーゼル。2)普通のディーゼル。3)そしてハイパフォーマンスディーゼルの3タイプを持つ。なのにトヨタもホンダもディーゼルといえば2,2リッターの1タイプのみ。性能だってトントン。
価格も今や東欧勢や労働コスト安いスペインのセアトや現代自動車がダントツ。日本車を見ると飲み込まれてしまった。強いて言えば信頼性の高さながら、これまたヨーロッパ勢の猛追を受け、目立たなくなりつつある。いや、トヨタのリコール問題により、セールスポイントじゃなくなってきた感じ。
決定的なのが前述の通りモータースポーツからの撤退だ。ホンダやトヨタだけでなく、スバルあたりも急速にブランドイメージ弱くなってきた。トヨタはWRCに復帰するとウワサされているけれど、真剣に考えるべきかと。ちなみにニュ24時間みたいなローカルイベントじゃダメ。やはり世界選手権です。
ヨーロッパでクルマを売るなら「ダントツ商品」を開発し、モータースポーツでブランドイメージをキッチリ構築しなくちゃダメだと思う。もはや日本なんかどうでもいい。ヨーロッパや中国など新興国でクルマを売るため、日本車はモータースポーツへのカムバックを真剣に考えなくちゃならない時期です。
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ヨーロッパで日本車メーカーのイメージといわれても、欧州の名門のように貴族文化に磨かれた特権階級のキャリッジでもなければレースでの栄光に彩られた高性能車ブランドでもなく、それらと対極をなす「バス・タクシー・トラック」の匂いが付きまとう文化圏の存在なのではないだろうか。
クルマをひとつの文化として捉えるに当たって、日本メーカーはそんな「たかだか動く箱のトランスポーテーション…..鉄道→トラック/バス→タクシー」な世界を示す記号という意味で、韓国車と大差ない存在なのだろうか。WRCでの輝かしい戦績を失った日本車というものは。
一時期1990年前後のバブルで日本車は世界的に技術イメージを飛躍的に向上させ、「ハイテク日本車」という記号性を本場ヨーロッパで築き上げた。そこへWRCでの好成績がリンクした。F-1ではホンダが、ルマンではマツダが上位の成績をかっさらった時期もあった。
あの頃の方が一概に良いとは無論言い切れず、今日の日本車はハイブリッドを始めとする環境技術で最先端を行っているように見える。反面国沢さんもおっしゃるようにディーゼル部門では多彩なバラエティに乏しく、信頼性は高いもののどこかパンチに欠けており、二番バッター的イメージが拭い切れない。主流のガソリンエンジンも中庸なだけで、このままでは韓国勢に追いつかれつつあるともいえる。
日本の「特産品」インプレッサ/ランエボ/日産GT-Rらの超高性能車も、1990年代以来のハイテクの完成形でこそあれ、将来に繋がる技術に乏しい「恐竜」のごとき存在と取れるだろう。
では、WRCや各種レース活動から撤退した日本メーカーは、その余剰資金や開発力をどれだけ環境技術に注いでいるか?この点はまだ「雌伏の状態」で決定的な回答は見出せていないだろう。ハイブリッドもディーゼルに比べて実に一長一短で、欧州の交通モードにはマッチしているとは手放しでいいかねるのだ。少なくともリチウムイオン方式が熟成されるまでは。
そんな中、マツダのSKY-G方式各種直噴ガソリンエンジンの高効率やそれゆえのロードスター等スポーツカーへの応用、三菱も「樹形図の行き止まり」ともいえるランエボに見切りをつけ、ディーゼルハイブリッドを鋭意開発中という!この他、マツダのロータリーの水素燃料とのマッチングに関する研究も興味をそそられよう。
これらの将来に繋がる技術の芽が徐々に吹き出している一方で、既存のガソリンエンジンでは日産が今後マーチを皮切りに展開予定のVW式スーパーチャージャー/ターボのクリーン化やスズキのスイフトからスプラッシュに及ぶコンパクトカー群へのVWのTSI技術の供与、さらに日産の1200cc級過給+ハイブリッド方式の中型セダンティアナへの応用など「環境適合性と熱効率で究極を目指す」方向に日本メーカーが徐々に向かいつつあることは喜ばしい。
小型化技術ではドイツのVW等と並び世界有数のノウハウを持っている日本、こうした分野を極めて世界にひとかどの地位を築くことが次世代戦略の中枢をなすファクターに違いなかろう。無論ヴィッツベースのハイブリッドの43km/lの追求やクラウン/レクサスIS系の2500cc級ハイブリッドの熟成に大いに期待せざるを得ない一方で、日産GT-Rは造れてもポルシェ911ベースの「RUFグリーンスター」のような時速300km/h可能な電気自動車は造れないのだろう、またF-1分野へのディーゼル応用による参戦など考えも及ばないに違いない。
この辺が日本の業界のアキレス腱であるのと同時に、わが国をガラパゴス化から救うためにいかに「ナンバーワン・オンリーワン」が必要であるか痛感させられるというものなのだ。
欧州Dセグメントに切れ者がまた一つ!
その名はプジョー508、同車の武器は2.0Lのディーゼルハイブリッドで200ps、何よりCO2は99g/km!!!! 新型マーチの1.2よりも少ないのだ!
こうなると三菱が鋭意開発中のランエボ後継のディーゼルハイブリッドも、次期日産ティアナの1.2Lハイブリッドも文字通り「ダントツ性能」をどう追求するか、事態は予断を許さなかろう。
ここの所小型車分野(B/Cセグメント)を中心に続いたフランス・プジョー社の快進撃はついにDセグメントまで本格化し、日本勢を返り討ちにするだけの体力を身につけていることがわかる。
その意味で今後の日本車の敵はVWやBMWだけにとどまらずプジョーも名を列することは明白に違いない。