トヨタ戦う方針打ち出す

東京本社でトヨタ社長の3回目の記者会見が行われた。どうやらアメリカで進行しているトヨタバッシングを「信頼の回復」と「安全の証明」で乗り切ることを決めたらしい。以前も書いた通り、現在トヨタが直面しているのは「悪魔の証明」という非常に厄介な問題。私自身、ずっとやられているからよ〜く解る。

例えば「国沢は昨日の夜、酒を飲んで運転していた」と言いふらされたとしよう。バカらしいことなのだけれど、この濡れ衣を晴らすことは難しい。私が「そんなことしていない」と主張してもダメ。「昨晩は家にいた」と家人が言っても信用してもらえない。ましてや弁護士を立てたって「あんた見たのか?」でオシマ
イ。

この攻撃を防ごうとすれば、民意や一般常識に守ってもらうか、攻めている相手と和解するか、だ。トヨタは前者を選んだ。つまり「そもそも攻めている相手など存在しない!」という判断です。「攻めている側を無視した」ということでもある。もし本当に相手の居ない騒動なら上手くいくだろう。

けれど相手が居たら一段とコジれてしまう。トヨタは膨大な資金力にモノを言わせメディアを味方に付け、ロビー活動を活発化させ、弁護士(今回の場合は安全性
を証明する機関)に無実を主張させようとしてます。「負けたことがない人や組織の戦い方」と言い換えても良かろう。良くない意味でアメリカ的だ。

古今東西、強い側がチカラ任せで押さえ込んでも、必ず火種は残ってしまう。逆に、現在のアメリカのように、いつもビクビクしなければならない。中東情勢を見れば解る通り、負けた側の怨念たるや驚くほど強いです。このあたりの判断は「空気を読めるかどうか」ということになるんだと思う。

昨日
「ヌーミー閉鎖撤回の件は議論にもなっていないのか?」と関係者に聞いたら「なっていません」。現在のトヨタの辞書には「損して得取れ」という文字がないらしい。本当に優秀な営業マンは「論破して売る」のでなく「良い部分をアピールして欲しくさせる」。という売り方をする。お互いハッピーになります。

このままトヨタが沈没することは絶対にないと考える。ただあまり浸水激しいと、ダメージも大きくなってしまう。豊田社長が公聴会に出席させられるようなことになれば、もはや最悪。日本人として、業界人として見たくない。ボコボコにされちゃいますから。明らかにトヨタ上層部の責任です。

ちなみにプリウスの件は日本のメディアが初日から正確に技術的な問題点を指摘。トヨタも即座に反応。6日目のリコールという素早い解決となった。プリウスの件もアメリカ発だったら、大騒ぎになったと思う。日本側で素早く解決されてしまったため、突っ込みどころを失った格好。

空気読めないトヨタからすれば「日本でも叩かれた」と感じているかもしれないが、「アメリカで叩かれる材料を事前に潰した」という点で日本のメディアは素晴らしいバックアップをした。

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5 Responses to “トヨタ戦う方針打ち出す”

  1. 小林 英弘 より:

    今日の夕方のニュースでトヨタの社長自ら「公聴会に出席する!」と記者会見したと聞きました。自らボコボコにされる道を選んだ様です。マゾなんでしょうか?(笑)。社長のデキが悪いと社員が迷惑する。市長がバカだと職員が迷惑するウチの市役所と同じですね(笑)。トヨタはアメリカで「日本を代表する企業」の看板背負ってるんだからもっとしっかりして欲しいですね〜。

  2. fan より:

    私はトヨタ上層部ではなく、オバマ氏にがっかりしました。核廃絶など、新しいリーダーとして期待していたのに自国の産業を守る為に、自身の支持率や中間選挙の為にこんな汚い手法を使うなんて、ノーベル平和賞を受賞した人間のやることなのか・・・
    今朝の報道では
    「レクサスES350」の昨夏の暴走事故について、米高速道路交通安全局(NHTSA)と地元警察が、事故原因をアクセルペダルがフロアマットに引っかかって戻らなくなったことと特定していたことが18日、分かった。
    という・・・
    いったいNHTSAは何をやっているんだ!この事実を何故今まで公表しなかったんだ!自分達に不都合な情報を隠すならNHTSAこそ隠蔽体質ではないのか!
    オバマ氏もGM車やフォード車の不具合にも目が向けられ始めると、トヨタ叩きを沈静化させようとしているらしく、手のひらを返した様な姿勢には本当に落胆してしまう。
    トヨタを叩いたってヒュンダイやホンダVWが伸びるだけでGMフォードクライスラーの競争力が高まる訳じゃない。アメリカ政府が自動車産業を復権させたいならば、もっと本質的な取組みをしなければ無意味なのに・・・
    トヨタはアメリカによる自国産業を守る為の輸出自主規制も、円高も工場進出や地道なコストダウンで乗り越えて、その度に鍛えられ競争力を高めていった。
    トヨタはこの試練にも、不具合対応の迅速化など更なる品質向上と顧客満足度向上に真摯に取り組むだろう。その努力の結果、今は苦しくても数年後にきっと成果となって表れるんじゃないだろうか。
    自国産業保護を理由にして、自らの既得権を守る為にアンフェアな手法を使い、結局アメリカ車をダメにしてきた人々と、アンフェアな手法に立ち向かい、アメリカへ進出してアメリカ人と共に懸命に汗を流してクルマを作ってきたトヨタ。どちらが本当にアメリカにとって大切な存在なのだろうか。

  3. lucky より:

    いつも拝見させて頂いています。
    何故、今、トヨタ自動車が創業一族の社長なのかを考えると、見えるものがあります。
    まずは、世界中の金融不安、景気の悪化、雇用不安、製品の信頼など、まさにスピードのある、責任ある決断が必要です。
    雇われ社長なら、辞めればおしまいです。
    アメリカのアクセルリコールの対応を見ますと、流石と思います。国沢先生の思っている問題は、まさに本命です。
    アメリカ側は、豊田社長が来ないと思っていたので、対策に追われてます。
    トヨタ自動車を叩いて、ボロが出るのはアメリカ側です。
    アメリカ側が全て正しい事はありません。アメリカのプライドを保ち、日本側が譲歩する形でしょう。

  4. 小林 英弘 より:

    fanさん、アメリカにとって大切な存在はいつの時代でも「アメリカにとって都合のいい者」ですよ。アメリカにとってプラスになる存在であれば人種や思想や国籍なんか関係ありません。その存在を受け入れるためであれば大義名分なんて後からどうにでもしてしまえ!です。国家的イデオロギーの違いすら「超国家的判断」で何とでも料理してしまいます。…ノーベル平和賞は極めて政治色の強い「いわくつきの」セレモニーです。惑わされてはいけません。オバマ大統領の政治手法は極めて保守的でアメリカ中心的です。「初の黒人大統領!」やら何やらの余計な飾りが付いてて見えにくいですが、彼の政治方針は先のブッシュ大統領以上に保守的且つアメリカ至上主義的です。日本人は相変わらず能天気に「日本には小浜市ていう都市がありますよ〜」なんてトンチキで無邪気で能天気なバカ騒ぎしてましたが、多分オバマ大統領本人はそんなコトとっくに忘れてるんじゃないですか? 普天間基地の問題にしても、アメリカは一歩も退く気配がないでしょう? アメリカはいつだって「アメリカさえ良ければ全て良し!」なんですよ。…アメリカはそもそもヨーロッパでカトリックの厳しい戒律に嫌気がさして新大陸(この「新大陸」という言葉自体、自己中心主義以外の何者でもないでしょう?)に出て行ったWASP(アングロサクソン系の宗教的にはプロテスイタントの人達)が造った国。「新大陸」の地を踏んだ200人程の仲間達が最初に作ったのは教会と「牢屋」だった…話は有名ですね。我々日本人とはモノの考え方が全く違う人達の国です。「アメリカの常識は世界の常識」な思考回路の人達の国です。私見ですが日本人のアメリカ感はかなり楽観的ですね。決して甘い相手ではありませんよ…。

  5. 川崎の隠居 より:

    USAって unfair, selfish, arrogant の頭文字なんだ。
    トヨタの社長 お坊ちゃまみたいだが、相手の掘った落とし穴に落ちなければいいけど。。。

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