日本製鉄、トヨタへの損害賠償請求を放棄。大きなダメージ受けノーサイドに持ち込みたい?

2年前の11月、日本製鉄がトヨタを訴えるという「なんで?」という異常な事態が起きた。事実上トヨタと共同開発したモーター用の特殊鋼に関する案件です。意外なことにTOP同士の話し合いなど一切行われず、トヨタ側からすれば「突如訴えられた」ということになる。当然ながらトヨタとしちゃ面白くない。様々な部門から「日本製鉄の素材なんか使いたくない!」。

すでに日本製鉄の素材を使わないギガキャストなども出てきたし、現在開発中のクルマは可能な限り日本製鉄からの調達を無くそうとしている。日本製鉄からすれば、高価な鉄材を買ってくれる自動車業界はお得意さん。ボディブローのようなダメージを喰らい、先細りの明日が見えてきたのかもしれない。そんなタイミングでトヨタに対する3つの訴訟のウチ、1つが結審。

日本経済新聞によれば、トヨタ有利の判決になる可能性が高いという。まぁ勝っても負けても「もう日本製鉄いらん」になることは間違いない。そもそもオール日本で生き残りを賭けた戦いをしなければならないのに、内輪で殺し合いを仕掛けたんだから負けは見えている。この件、最初から私は日本製鉄の方針が全く理解出来ないでいた。

やっと分の悪い戦いを仕掛けたことに気付いたのかもしれません。突如損害賠償請求を放棄したのだった。中国の宝山製鉄への損害賠償請求はそのまま続けるようですが。これまた中国政府の企業なので、訴えて勝てると思えないし、得することなんか1つもないでしょう。とにかく日本製鉄の中のゴタゴタです。日本製鉄といえばラグビー。ノーサイドにしたい?

改めて説明するまでもないけれどラグビーは試合になればフルアタックする。されど終了のホイッスルが吹かれたら皆仲間になるという武士道のような考え方を持つ。日本製鉄からすれば訴えたのは「試合開始!」。賠償放棄で「ノーサイド!」と思っているのだろう。されどビジネスはそう簡単じゃありません。10年スパンで様々な計画を立てますから。

日本製鉄最大の課題はカーボンニュートラルについて真剣に取り組んでいると思えないこと。もちろん日本製鉄のWebを見ると様々なアピールをしているものの、進捗状況の説明無し。というかエビデンスが無い。二酸化炭素を出して作った鋼材を使っていると、欧米への輸出が制限される可能性大。自動車メーカーとしちゃ使えない鋼材だったりする。

日本製鉄が550万人の仲間に入れるかどうかは、今後の動き次第です。

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4 Responses to “日本製鉄、トヨタへの損害賠償請求を放棄。大きなダメージ受けノーサイドに持ち込みたい?”

  1. ミノルオヤジ より:

     国沢親方が以前から、日本製鉄の訴訟を愚かな行為だと強く批判されていましたが、まさに「愚かだったこと」がものの見事に証明されましたね。
     一時的な感情に留飲を下げるためだけの行為、先を見通す冷静さや大局観の無さ、日本を代表する大企業も、普通の無能な人間と同じだと思うと情けなくなります。
     案外、知的に見えるものも、人間個人特有の感情・行為と似てますね。国際政治もしかり。

  2. アミーゴ5号リボーン より:

    日本製鉄が、トヨタを訴えた意思決定は何だったのか? そこは非常に興味があります。

    トヨタは、後ろ脚で砂を掛ける取引先とは、その後一切関わりを持たない。自分でも知っていますから。

    いたはずです。日本製鉄の役員クラスに、トヨタを貶めようとした輩が。

  3. z151 サンバー愛好者 より:

    トヨタにケンカを売った旧住友銀行(当時は大阪銀行)みたいな経緯を辿るのではないかと2年前の時点から思っていました。
    「機屋(はたや)に貸す金はあっても鍛冶屋(かじや)に貸す金はない」
    本当にあった発言なのかは正式な記録はないそうですが、同様の驕りが今回の日鉄側にあったのかも。
    トヨタへの訴訟を取りやめたからといって「ノーサイド」はムリじゃないかと思います。
    本当の意味で「ノーサイド」を狙うなら二酸化炭素実質ゼロの製鉄製品を提供できてこそじゃないでしょうか?
    シアンを何十回も工場排水で垂れ流すような低レベルのスキャンダルを繰り返しているようではとても…。

  4. やす次郎 より:

    国沢さんのこの問題についての当初からの見解に私も大変賛同していました。
    両企業に親しい管理職の長年の友人がいます。
    彼らから本音の話しをしばしば聞きますが、日鉄の守旧体質は変わらず、市場や消費者、協力企業に対する姿勢はトヨタと月とスッポンです。

    国の基幹、国策産業として位置付けられた製鉄業の体質転換は20年前以上から叫ばれてきましたが、やはり
    国に守られ、日本はぬるま湯が続き過ぎです。
    世界では製鉄業の聖域化は薄れ、技術革新と現実が直視されていますが、日本の製鉄業は政官と保守メディアにより多くの場面で誇張宣伝されていて、真実が伝えられていないばかりか、真の競争原理や企業内努力が働いていない、と強く思います。

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