豊田章男社長、タイの60年記念イベントのスピーチでタイ人を泣かせてしまう
先月下旬のこと。「タイのブリナムで開催される25時間耐久レースに水素エンジンカローラを走らせる」と聞いたのでトヨタに詳細を問い合わせたら「水曜日にバンコクでタイ60年記念イベントをやりますのでそちらもいかがですか? 豊田も登壇します」。考えてみたら海外でモリゾウさんのスピーチを聞いたことない。良い機会なので火曜日から訪タイして出席することにした。
会場に行くと驚くほどの規模だった。タイトヨタに聞いたら株主やタイ副首相、日本大使などVIP、現地の販売店、工場関係者、サプライヤー、東南アジアのメディアなど含め1500人規模だという。エントランスで見てると「こんなにアルファードあるのね!」。タイでアルファード、1200万円くらいします。日本大使の公用車は日の丸付けたナンバープレート001のLSでした。
タイ人からすれば最大級のイベントだという。というか、1企業でこれほど規模をやるケースはほとんど無いそうな。私だって見たこと無いです(笑)。入れ物は東京モーターショーを行う東京ビックサイトのような国際展示場。20カローラ(1970年)や初代ハイラックスなども展示されており、なかなか興味深い。ちなみにタイに販売拠点を作ったのは1962年とのこと。
大いに興味深かったモリゾウさんのスピーチだったけれど、タイ人を心を掴むのが上手い! 「私はタイを第二の故郷だと思っています」から始まるのだけれど、社交辞令かと考えた直後「ソンブーンレストランの隣に住んでプーパッポンカレーを毎日食べたい」だって。大いにウケる! タイ人なら誰でも知っている美味しい蟹のカレーを食べさせてくれる店です。私も大好きだったりして。
さらにタイでのトヨタは決して順風満帆じゃなかったと、日本車の排斥運動が起きた話を出す。どう続けるのから思っていたら「当時の東郷社長はお坊さんになってタイ人の気持ちを理解しようとした」。タイ人はお坊さんの修行の辛さを知っているから誰だって「素晴らしい話ですね!」になる。その後がさらに強烈だった。「私が社長になった直後アメリカでトヨタは激しく叩かれました」。
この話では「世界中から批判されましたがプミポン国王だけは何かの間違いでしょうと言ってくれました。これが凄く嬉しかった。私にとって格別の存在です」。タイ人からすれば敬愛の頂点にある故プミポン国王を褒めてもらうことは至福の喜びといってよい。周りのタイ人を見ると半分以上の人が泣いている。ソンブーン、お坊さん、プミポン国王の逸話となればみんな乗り出して聞く。
さらにタイでハイラックスを開発した時は「日本で間に合わないと言われたがタイの拠点が頑張ってくれて間に合った。タイの仲間に心から感謝してます」。最後は環境対応の話なる。私も驚いたのだけれど、このイベントのために水素エンジンカローラやWRCで走らせた水素エンジンGRヤリスをタイに持ち込んでいた。そして「電気自動車に限らず全方位で取り組んでいきたい」。
タイ人の感覚からすれば電気のインフラを考えたら(バンコクは洪水が頻繁に起きるし電気配線は日本以上に空中。そもそも高額)電気自動車が普及することなど考えにくい。ただ電気自動車が必要なことも解っている。モリゾウさんの「電気に絞らず様々な可能性を考える」はその通りだと思う。私も毎度毎度「カーボンニュートラルの終点は27年後」と言ってます。
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モリゾウ社長のスピーチ、素晴らしいですね。
何よりも素晴らしいのは、前タイ国王のお言葉です。国民が敬愛する理由が心底実感できました。
思い起こせばトヨタがアメリカから叩かれた時、国沢さんは日本のヒョーロンカでたた一人、トヨタに過失はないと言い切っていましたネ。
もうタイ60周年ですか。
私がタイに移住して、しばらくしてからが50周年だったので、早く感じます。
トヨタの50周年記念のCMに感動したのを思い出して、ググッて見直したんですが、今見てもいいですね。
最後の方に出てくる「知れば知るほど、君を好きになる」というタイ語のテロップがすごくいい感じです。
CMのURLです。
https://www.youtube.com/watch?v=v5wvIGxvdLI
暇なときにでも、一度ご覧ください。
モリゾウさん、素晴らしいですね。
日本には自動車メーカーいくつかありますが、こういう場に立ってスピーチで現地の方の心を掴める社長はモリゾウさんだけでしょう。
ウチの社長なんて暗くてなんにも面白いこと言えないんだろうな、と思うと情けない…
理解と共感が信頼を生む…理屈じゃわかっても実践できる人は限られると思います。
最近ここで真逆なことが起こりましたが、日産中古車販売店の話なんかは最たる例なんじゃないかと思います。
私は少額ですが国沢さんのサポートをさせていただいているので時々サポーター掲示板も読むのですが、あちらでことの経緯と結論も知りました。
結果としてはパンクしたタイヤと、パンクはしなかったもののヒビだらけのタイヤ2本の代金を「例外的対応で」負担するということ。
「認定中古車ではない」「現状販売である」ということを説明したので日産プリンス茨城販売側としては「対応に問題はなかった」とのこと。
従って謝罪はなし、更に国沢さんの記事が「誤解を招く内容の為取り下げろ」と。うーん。
真逆だわ、モリゾウさんと。(笑)
理解も共感もなく、むしろ理解したくないし、共感もしないのに本人ブログでもなく、自動車評論家の記事が誤解を招くから取り下げろということ。
そこに良品錯誤の可能性がなかったかとか、日産の看板を掲げるのにコンプライアンスはどうだったかという省みる姿勢は少なくともユーザー側には見えてこない。
大地真央さんの某CMの決め台詞を借りれば「そこに愛はあるんか?」です。
クルマって家の次に高価な買い物だから信用とか信頼が支えるものだと思います。
どういう商談内容だったか余人が把握することはできませんが、これで「次のクルマも弊社からお願いします」となるのかどうか?
購入されたご本人は元より、記事を読んだ方々にもハンコを押す前に思い出してしまうようなことだと思います。
私もプーパッポンカリー大好きです。
マッサマンカリーと悩むくらい。思い出すとヨダレが出ます。
タイでは男性の4割が一度出家してお坊さんの修行をするとか。
職業としてお坊さんになるというより、学校や塾に通うような「人生の勉強と教養を学ぶ場」としてのお坊さん修行のような気がします。
プミポン国王のエピソードはその自然体の芯にあるさりげない優しさと思いやりが国民の心に深く刻まれているのだろうことが想像できます。
日本にも天皇陛下がいらっしゃる感覚にタイの方々も我々日本人も共感できるのではないでしょうか?
「北風と太陽」…太陽はモリゾウ氏として、北風は言うまでもなし!でしょうか?
旅人はどちらにコートを脱ぐか?ということだと思います。