貿易赤字は危険信号

工場の海外脱出が進んでいる。これまで船外機は全て日本製だった。そればかりか、乗用車と共通のエンジンを使う船外機すら高い防錆/耐水性が要求されるため専用工場で組み立てられていたほど。船外機エンジンは利幅が大きく、国内専用工場で少量生産してもビジネスベースに乗るのだ。

ちなみに船外機の価格を見ると驚く。90馬力の1,5リッターエンジンで120万円前後! しかも燃料タンクやスクリューまでオプション。クルマなら燃料タンクやタイヤばかりか、ドアやワイパー、エアコンやエアバッグまで付くのに! そんな船外機もついに海外で生産されるようになってしまった。

スズキは新型の15/20馬力エンジンの船外機をタイ工場で生産するのだという。スペックを見たら日本製と全く変わらず。新世代の省燃費&軽量エンジンだ。
「15/20馬力の替わりになる高性能エンジン」を日本で作るワケじゃないので、海外移転した分は、そのまんま日本の貿易黒字減の要因となる

こんなことが直近の2年でドンドン進んでいるから恐ろしい。昨年の貿易収支が赤字になったという報道、皆さん地震の影響だと楽観視してると思う。報道関係者や学者の中には「日本は貿易赤字でも問題ない」とか「日本は内需の国だ」と言い切ってしまう人もいる。橋下市長も怒っているとおり、学者は視野が狭い。

確かに「海外投資による利益」や「特許使用料」などから構成される貿易外収支は黒字だ。例えば自動車メーカーがタイに工場を移し、部品もアジア地域で調達し、結果的にタイ法人が儲かったとしよう。これが「海外投資による利益」になります。スズキの船外機も貿易赤字を招き、貿易外黒字となる。

海外に工場を造って利益を上げれば、その企業の利益にはなる。でも日本の工場で働こうと思っている人にとっちゃ何の意味もない黒字であるばかりか、雇用機会を失わせる要因になってしまっている。非正規雇用者だと解雇を意味します。そんなことから貿易外黒字は「勝者の取り分」と言ってよかろう。

本来なら貿易外黒字を得た「勝ち組の企業」が利益を国内に還元すればいいのだけれど、急速に円高が進むと損をする部門も多くなる。儲かった分を他に取られてしまう。そんなこんなで総合的に評価すれば企業だって厳しい。現時点でオイシイ思いをしている「勝者」は相当限られているだろう。

なのに学者や識者は「貿易赤字であっても国際収支が黒字だから問題ない」と言う。報道関係者や学者はお金持ちだけ儲かればいいと思ってるのか? 自分は勝ち組だからいい? 繰り返しになるけれど、多くの国民にとって貿易外収支の黒字分は関係なし! むしろ貿易赤字こそ日本経済疲弊の証拠である。

貿易外収支を含む国際収支が赤字なら円安になるだろう。円安に振れれば日本の工場も競争力を回復できる。されど工場の海外移転が今後も進み、貿易外収入増え、国際収支は黒字を維持するため「国全体」としてみれば学者の言うとおり健全。円安になる理由無し。日本の雇用はドンドン減っていく。

・ECOカーアジアは「プリウスの暖房が効かない?

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8 Responses to “貿易赤字は危険信号”

  1. tonpochi より:

    先日、枝野大臣が某テレビ番組で、日本の工場が海外に進出することで逆に日本の
    雇用が守られている。倒産しているのはむしろ日本に踏み留まっているからである
    といった発言をしていたのを思い出します。この方も官僚の腹話術人形ではないか
    と思います。日本政府は現在、完璧に官僚の番犬と化して民意を全く聞かない状態
    に陥ってしまいました。
    枝野大臣の言い分は次の通り。海外進出した企業は海外で得た利益を日本へ持ち帰
    り、日本での雇用を増やしている。中小企業はどんどん海外へ出るべきだ。
    正に官僚答弁そのまんま。この人、馬鹿じゃないの?でなければ単なる腹話術人形。
    中小企業が海外に進出する一番の原因は製造費における人件費のカット、次にエネ
    ルギー費、固定資産費のカット・・といったもの。
    つまり、国内の工場で働いている人の首を切って人件費の安い海外の人を雇用し、
    その差分で利益を得ます。しかし、この利益は日本の工場労働で働いている人を
    雇用するために使われことはありません。これらは開発部門や営業部門といった
    ホワイトカラー増強のために使われます。
    じゃ工場で働く人はどうする?海外に行って低賃金で働けとでも言うのでしょうか?
    海外に出ずに倒産してしまうのは、一重に政治の責任です。ギリギリまで省エネを
    進めてエネルギーコストを抑えて、人件費を下げずに国内で頑張っている企業に対
    して、人件費の安い海外に進出すれば利益が出ますよ。御社もどうですか?って言
    うのでしょうか。

  2. 白木 晴幸 より:

    また昔話ですみませんが、ローテクだった当時の寒冷地の冬はラジエータの約半分をダンボールで隠す(大体はラジエータグリルの裏側にダンボールを切ってサイズを合わせて縛り付ける)というチカラワザがありました。
    その他としてはテント生地みたいなのを流用している例もありました。
    まぁ今の時代ではそんなみっともない事もできないでしょうけど…。

  3. ドン より:

    私も概ね同様の意見です。
    経済は生き物です。この流れを変えるのも、流れに乗るのも
    国民一人一人の意思が大切です。
    多くの国民はある程度の生活が出来ているせいか、
    危機感がどうも足りない気がします。
    高度経済成長期が終わるまでの日本人はひたすら上だけを見てきた。
    ところが今はどうでしょう?
    中国や韓国のアラを探しては、まだ大丈夫と安心するばかり。
    日本の一番の危機は、国民が上をみる事をやめてしまった事ではないでしょうか。

  4. 下剋上 より:

    枝野さんは原発事故を事象と言い換えたり、放射能は問題ないって嘘っぱちバラまいたんだから、弁護士失格だし、本来は議員を辞めるべきです。
    役立たず事業仕分けの功績なんかとっくの昔にメッキが剥げてることに気付くべき。
    公務員改革、人件費抑制なども大切ですが、次の政権は日本経済が活性する施策を施す政権を選ぶべきです!
    税金払ってくれる住民がいなくなると福島の公務員が困り果てると言う本音を読んで失笑しました(笑)
    住民のための公務員のはずが、公務員のための納税者じゃないんですから!
    企業も公務員のために納税してるんじゃないから、その辺りきちんとやらないと企業に逃げられて当然だし、少子化や人口減少の遠因だと思う。

  5. G35X より:

    1月22日付けのNYタイムスにアメリカの大口雇用企業の変化に関する記事が出ています:
    1960年
    1. GM(自動車製造) 595,200人
    2. Bell(電話、通信)580,400 人
    3. Ford(自動車製造) 260,000 人
    4. GE(電気機器製造) 260,000 人
    5. U.S. Steel(製鉄) 226,100 人
    6. Sears(百貨小売チェーン) 208,000 人
    7. A&P(スーパーマーケットチェーン) 153,000
    8. Esso(石油、ガソリン) 140,000 人
    9. Bethlehem Steel(製鉄) 138,300 人
    10. ITT(電話、通信) 132,000
    2010 年
    1. Walmart(百貨小売チェーン)2,100,000 人
    2. Kelly(臨時雇派遣)538,000 人
    3. IBM (コンピュータサービス)426,751人
    4. UPS(宅配サービス)400,600人
    5. McDonald’s (レストランチェーン)400,000 人
    6. Yum!(レストランチェーン)378,000 人
    7. Target(百貨小売チェーン)355,000人
    8. Kroger(食品小売チェーン)338,000人
    9. Hewlett-Packard(電子機器製造)324,600人
    10. Home Depot(荒物小売チェーン)321,000人
    日本も米国の後を追いサービス業の雇用が中心となる国になることでしょう。米国のサービス業従事者の多くは時給500円ほどの最低賃金で働いています。人口の1パーセントが国富の25パーセントを持つと言われる米国では金持ちに対する妬みによる感情悪化が顕著になってきています。金持ちが投資する先は外国為替や地下資源、農産物の投機などで、裾野の広がる国内の製造業ではありません。即ち、人が働くことにより富の創造を行うのではなく、カネがカネを呼ぶ経済活動とその過程で他人のカネを動かすことによりサヤを稼ぐ証券、金融業が現在の世の中です。製造業の衰退とそれによる二極化は日本の喫緊の問題です。日本の救いは消費者が単に価格の安いものを求めるのではなく、物の価値を判断する能力が高いことです。日本の製造業はこれに応え続けるべく研究開発を怠ってはなりません。

  6. buuno より:

    自民党時代もそうだったのでしょうけれど、民主党時代はもっと、官僚の傀儡化が進んだ様に思います。
    官僚のいいように動かされる国会議員ばかりなのでしょう。
    官僚や公務員のために、国民や企業からかすめ取り公務員を潤す為に施策を造っていると思います。
    「弱者の為に1万円給付する」なんて言い出しましたが、1万円給付する為に、1万円以上の給付費用がかかるかもしれない、そこにまた財務省から人間だして自分達で吸い上げ様って魂胆がみえみえです。
    給付なんてべらぼうなコストがかかる事を知っているのにあえて増税を正当化と見せる為にこんなハナシを出したりする。
    民間では収益配分の原理がなければ収支は成り立たない、しかし公務員の世界では、簡単に収支の足りないところを安易に国民からかすめ取ろうとする。
    税金から貰ってるんだから公務員給与の透明性を国民に周知すべきでしょうし、一番の悪玉は公務員年金だと思います。
    既に働いていない公務員退職者に若い世代の給与以上の年金をばらまき続けてるシステムを放置したままではいつまでたっても、税金・年金・社会保険料は増え続けるだけでしょう。
    税務署も社会保険庁も、高額な税金や高額な社会保険料の正当性を言いますが、高額で申し訳ありませんとは言いません。
    経営者としらた、こんな国で人を雇うなら国外じゃないと経営出来ない、っと考えて当然だと思います。
    公務員給与、公務員退職金、公務員年金の正当性を世に問い、是正をすべきだと思います。
    これからの30年は、今までの30年とは違い、日本の経済構造が大きく変わるでしょうから、いつまでも同じように国民からかすめ取るばかりの政策を考えている、財務省や厚生労働省は考えを改めて貰いたい、個人的には、財務省と厚生労働省解体して1つにした方がいいと思います。
    その方が、財務省が国会議員を操る力減るだろうし、税
    金と社会保険料の1本化のきっかけにもなるでしょう。
    官僚に操られない様な自分で勉強出来る様な国会議員にも出てきて欲しいですね。

  7. さね より:

    日本は現状、経済大国であるのは確かですけどいかにして敗戦から先人たちが、苦労して創意工夫や独創的発想で工業国となり経済復興したか忘れてるんではないでしょうか?物作りに長けてる民族だったのもあると思います。 経済的な事はアナリスト、学者とかの話はあくまで参考にしかならないので、スーパー円高など状況は違いますが資源のないこの国で頑張って経済大国とゆわれる国にした偉大な先人たちに恥じないよう、日本の原点を見つめ直してほしいです。てゆうかこれだけ円が強いのに日本人の暮らしは変わらないとゆうか、ますます貧困層ばかりになるって…。経済ってなんなんですかね?どー考えても加工貿易がメインの資源のとぼしい技術立国なんですよね、それだけは真実。

  8. ny1 より:

    アメリカの記事でドイツの雇用とコストが高いのに国内に工場をおくドイツについての内容です。http://business.time.com/2011/02/25/does-germany-know-the-secret-to-creating-jobs/
    ドイツでは世界の流れの逆を行くかのように失業率を2007年の8.6%から2010に6.9%にまで改善させ、2010年の国内の輸出は前年比の18.5%向上させたそうです。ドイツは重機械系が強いのでそれを強みに輸出量を増やしていくのに成功したと記してあります。また政府も国内雇用と製造に力を入れており、仕事をなくすのではなく個人の労働時間を減らしその分を政府が短期的に労働者の収入を補助するということです。またドイツはほかの国ではまねできないような技術を持っています。その技術を生かすことで国内のみでしか作れないものを生産し、技術で常に他の国の先を行くという方法で国内に工場を残しています。用はドイツでしか作れないような高品質の製品の製造で国際競争に勝ち抜くとゆう戦略です。今の日本でも政府と企業がチームになって円高を少しでも阻止して、工場の海外流出または製造業自体のの空洞化を防がなければなりません。また日本でしか作れないような高度な技術を要する製品の生産または開発を進めることも必要だと感じます。Made in Japanという文字に相応した品質と製品そして労働者、消費者、開発者の方々が誇りにできるモノは日本にもまだまだあると思います。

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