選手村でeパレットが事故。原因は「人間が運転操作したから」か?

自動運転小型バスとしてオリンピック選手村で運行されていた『eパレット』が歩行者(日本人柔道選手)と事故を起こした。第一報は横断歩道を渡ろうとしていた歩行者と接触して転倒したとのこと。我が国に於ける自動運転初めての事故なので、キチンとした情報を出さなければ面白おかしく取り上げられ、自動運転の将来に影響を与えます。早くも悪意100%の罵詈雑言が書かれている

元経産官僚である古賀茂明某によれば「こんな後進企業の自動運転を使ったのが信じられない。トヨタは電気自動車さえ満足に作れない。豊田章男社長はタレント気取りでテレビに出てはしゃぐのは止めて真面目に仕事をすべきだ」。笑える! 電気自動車が技術的に難しいと考えているらしい。官僚ってもう少し知見あると思ってました。今回も技術レベルが低くて事故になったということ?

事故の大雑把な状況も解ってきた。横断歩道に交通誘導する警備員が居たという。eパレットは手前で警備員を感知。一旦止まったものの、監視&管理者(後述)が発進ボタンを押したため走り出し、直後に横断歩道を渡ってきた北薗選手と接触したという。監視&管理者、警備員は、走り始めたeパレットを見て歩行者が止まると考えたらしい。だとすれば単なるヒューマンミスです。

ちなみにeパレットは周囲を探知するため、5つのライダー(走査型赤外線レーザー)を使っている。前後だけでなく側方も含め360度探知しており、周囲に歩行者が居たら止まります。なぜ接触したのかといえば、可能性として考えられるのは1つだけ。手動操作で走り始めた直後の車両側面に、自分から歩み寄ったようなケースだ。今回事故に遭われたのは全盲の選手だったという。

走り始めたeパレットに気がつかず進めば接触します。こういったケース、実社会でも十分考えられる。eパレットを取材した際「走行中の車両に横から当たりに行ったらどうなりますか?」と聞いた。その時の私の想定は「いたずら」です。競技終わった選手がアルコール飲んで開放感に浸り、サイドアタックに代表される安全テストなどしてくるんじゃないかと想像したのだった。

自動運転で難しい技術の1つは歩行者の側面接触だと何度も書いてきた。子供なら遊んでいて車道に飛び出すし、イタズラする輩だって簡単にイメージできる。開発担当者の答えは「自動運転の大きな課題になっています。まだ解決策はありません」。開発チームも解っていたろう。取材時も「走行中のeパレットに絶対近づかないでください」。

安全対策として無人自動運転のプライドを諦め、瞬時に緊急停止出来るスイッチを作り、監視&管理者を全ての車両に乗せていた。開発チームも緊急停止対応出来る人が乗っていないと100%の安全は担保出来ないと考えていたということ。私は今回の事故に接し思案が足りなかったと深く反省します。全盲の方のことを考えていませんでした。暗騒音の大きい都市部だと、走行音聞こえない。

一部メディアで「柔道選手は白杖を持っていなかった。止まると思った」と伝えている。誰がそういうことを理由にしようと考えたのか不明ながら(メディア側の忖度かもしれません)、自動運転技術としては事故原因にならない。パラリンピックの選手村だということを考えたらなおさらだ。そもそも走り始めたのは人間の操作で、その時点から自動運転じゃありませんから。

直ちに社長自ら状況説明してますね

さらに「なぜ監視&管理者は横断歩道に人がいたのに発進操作をしたのか」という検証も必要。可能性としては、安全を最優先しているためしょっちゅう自動停止しており、日常的に手動で発進操作をしていたのかもしれない。このあたりは状況を説明してくれないとヒューマンエラーに至った理由も解明出来ません。航空機事故はヒューマンエラーを防ぐ対策が重視される。

ちなみに最悪の事態を避ける対策もあった。最高速を19km/hに抑えていることです。いずれにしろ今回の事故をあやふやにせずしっかり情報を分析し、多くの人と一緒に自動運転技術の課題や教訓として考えていくべきだと思う。パラリンピックへの出場機会が失われてしまったという点に関して言えば、横断歩道に居た警備員の役割やサポート無しで外出したことなど総合的に考察すべきです。

 

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