もんじゅの事故

我が国の世論は「原発OK」と「原発No」の2つに別れ始めた。その間に「あまり関心がない」層を挟むため、3つに別れた、と言った方が正確かもしれない。こうなると当然ながら「決まらない」ということになりますな。いずれにしろ稼働している原発の今後は「地元の判断」にゆだねられる。

今回の事故で明確になったのは安定して稼働している原発であっても、廃炉の費用や使用済み燃料の廃棄コストなど考えれば「決して安価なエネルギーじゃない」という点。世界的に見ると原発の発電量より自然エネルギー由来の方が多い。日本より電気の安い国すら、自然エネルギーなのだ。

100歩譲って事故さえなければ計画通りに進むだろう。されど原発の実情を見ても事故だらけ。現在世界に531基の原発があるけれど、すでに6基が決定的なトラブルを起こした。世界に531台のクルマがあるとしたら、6台全損という確率だったりして。現在進行形のトラブルだってある。例えば『もんじゅ』。

概要を簡単に。昨年の8月、燃料棒を交換した際、長さ12m。直径およそ50cm。重量3トン余のステンレス製アタッチメントが原子炉容器内に落下。日本原子力開発機構によれば「2m釣り上げた時点で重量表示がゼロになり衝撃音が聞こえた」。こういう状況、普通なら「落ちた」と言います。

50cm+αの穴から原子炉容器内に落ちたため、※引き上げるには先端を掴んで同じ穴から出さなければならない。しかしもんしゅの冷却剤はナトリウム。98度で液体になる金属である。当然ながらカメラなどじゃ見えず。すでに20回以上取り出し作戦を敢行したが全部失敗。どうやら脱落時に曲がってしまったようだ。

かくなる上は200度程度に保たれているナトリウムを抜かなければならないが、その場合、原子炉容器にプルトニウムの燃料棒を残したままだと空だき状態になってしまい福島第一と同じ状況になる。燃料棒を引き抜くには脱落したアタッチメントを一旦引き上げなければならない。

ここで※に戻る。リフレインになってしまってます。「ニッチもサッチも行かない状態」だと評価している専門家が多いという。少なくとも今後50年間くらいは冷やし続ける以外無く、その後、プルトニウムの半減期である2万4千年の何倍かの管理を続けなければならない。現在、1日5千万円の維持費がかかっている。

毎日5千万円を家庭用電池+太陽光発電装置の補助金に使ったら凄い! 1件100万円として毎日50軒。10日で500軒。1年すると1万8250軒だ。量産すればコストダウンするので補助金を50万円に落としても普及し始める。そしたら年間3万6千軒。10年で36万軒。50年間分だと途方もない数です。

このあたりで冷静に原発のコスト計算をしたらいい。

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12 Responses to “もんじゅの事故”

  1. かず より:

    ちなみに、
    稼働は確か阪神大震災の数ヶ月前で、阪神大震災後しばらくしてナトリウム漏れ事故が発生し、
    去年まで止まってました。
    (゜∀゜;ノ)ノ
    そしてクレーン落下。
    何やってるんでしょうかね…。
    あと、ここの配管は通常の原発より肉厚の薄い管なので、なにかあったら福島第一よりマズいですね。
    原発よりもんじゅの方が、危機かと思います。
    無理して物事進めても良いことあんまり無いという、典型的パターンにハマってます。

  2. kine より:

    知らない事多すぎ!、国沢さんのブログを見て知りました。
    燃料を出し入れする所がダメになったなんて、金属ナトリュウムを流体にする為のエネルギーを使いつづけ、プルトニュームを使った燃料が取り出せない、2重3重の送電線網や非常用発電機、、、
    いや!、もんじゅ用の”原発”を作りましょう!。
    何て事にならないように燃料を引き抜いてほしいです。
    浜岡原発も停止してほしいです、柏崎も!、、。

  3. 匿名 より:

    電源交付、金固定資産、税核燃料税等、福島県は7000億円を受け取り原発を受け入れてきました。2010年には佐藤知事が福島第1原子力発電所3号機のプルサーマル計画を受け入れて60億円の交付金を受け取っています。誘致、点検後の再運転許可等、原発に対しての意志決定は自治体の長が行います。その長を選ぶのは県民です。このたびの事故では被害者の代表であるかのような顔で画面に登場する知事。本来ならば被害者に頭を下げてまわる立場ではないのでしょうか。安全な原発はウソだったので、票を投じてしまった県民にしてみれば「想定外」だったのでしょうが・・・

  4. Tad より:

    もんじゅに関するこのような情報をネット上で書くと、総務省通達の案件に引っかかり「悪質なデマ」と看做されて削除対象になる可能性があります( ̄~ ̄;) Yahoo!知恵袋の質問と回答記事は削除されました。
    公式発表は
    ・「もんじゅ」平成22・23年度設備点検実施中
    ・「もんじゅ」水・蒸気系設備機能確認試験実施中
    ・「もんじゅ」炉内中継装置引抜き工事(準備作業)実施中
    ・「もんじゅ」屋外排気ダクト取替工事実施中
    ・「もんじゅ」性能試験中
    です
    〜 すぐれた技術 確かな安全 世界に示す 新生「もんじゅ」 〜
    だそうですヽ(`⌒´メ)ノ

  5. カズ より:

    私はLPガス業界に勤めています。
    LPガスは、その普及以来、幾多の事故、多くの犠牲者を出して来ました。
    何十年にわたり、その事故の都度、法律が改正され、機器の規格も改善されてきました。
    今では、LPガスの事故を殆ど耳にする事が無くなりました。
    ガスコンロの立ち消え安全装置の発達のためか、自分の小学生の子供たちは、着臭されたLPガスのガス漏れの臭いさえ嗅いだ事が無いかも知れません(それも恐い事ですが…)
    でも原発の設計は違います。殆どが机上の計算に基づいたものです。
    事故の経験を積むという事が、殆ど出来ない世界なのです。一度でも予期せぬ事故があったらお仕舞いという世界なのです。
    原子炉自体は、何千ガルの地震にも耐えられる計算でしょう。しかし、配管の繋ぎ目は、様々な方向から予想外の力が加わり、とても健全性を保てるとは思えません。
    私は、原発について常々こんな風に思っています。
    家庭で例えると、番犬の代わりにライオンを飼うようなものだと。
    確かに、泥棒は近づけない番犬以上の威力はあるでしょう。
    しかし、飼い主さえもコントロール出来ないで、喰い殺されかねない代物だと。

  6. buchi より:

    原発のコストより自然エネルギーでのコストが安くかつ安定的であるなら当然、民間企業である東電はリスクの少ない自然エネルギーを選ぶでしょう。
    株式公開をしている以上、不合理な事はできません。
    そうでないとしたら、国の関与か何かの圧力があるはずです。
    東電をひたすら犯人扱いするのは不快でしかないです。
    これも当たり前の事ですが、指摘をするのは誰でもできます。様はその事に対する明確な根拠がなければダメなのは民主社会と言うか一企業内でも当たり前の事です。
    隕石が落ちる事も指摘はできるので対象外でしょう。
    あそこに20メートルを超える津波が来る!と明確な根拠があって誰をも説得できれば、東電が拒否をしようとも裁判で事業を止める事です。
    それが民主国家です。
    40年前に完成した原発、事故で止まっている原発の今までを批判をしても何も始まりません。
    ここからは安全が確認できない以上廃炉の道しかないのですから。
    これからの次世代エネルギーについての記事をお願いいたします。

  7. applefanjp より:

    復興財源をどうするか、政局絡みで動く日本。
    かたや、1日、5000万円。莫大な金が日々飛んでいく。飛んでいく。これだけエネルギー問題を原発も含めて大局的に見つめる必要があるのに・・・。
    また、大丈夫です!安全です!騒がないでください!なのでしょうか?ため息が出ちゃいます。

  8. 下澤 淳 より:

    もんじゅの負債も福島第一原発の負債も電気代に上乗せして国民に負担させるのでは、納得出来ないですね。
    やはり東京電力は株式を公開している民間企業として速やかに全額損害賠償に最大限に応じて、支払い能力超える場合は破たんして、株式や社債を紙くずにしてから、国に助けを求めるべきだと思います。
    その時は、送電部門と発電部門を切り離した別会社としての復活が望ましいですね。天下りを廃止して、技術者を大事にする電力会社になって欲しいです。

  9. kaz より:

    この事故に関係して担当者が自殺されたとか。
    責任を感じてなのか、事後対応での過労の末なのか理由は分かりませんが。
    ただ、「将来の事態を悲観して」ではないことを祈っています。
    でも何より恐ろしいのがこの事故とその後の動向がほとんど報道されていないことですね。震災の影響とかならまだしも昨年の話なんですよね、これ…。私は別に反原発派ではありませんが、福島の件含めこんな有様ですと、原発事業そのものに何か胡散臭さを感じてしまいます。

  10. キョロチュウ より:

    もんじゅ反対派の発行するニュースを見つけました。
    http://www.peace-forum.com/gensuikin/110126.pdf
    将来的に日本が財政破綻したらどうなるのでしょう。
    今のうちに石棺化しておいた方がよいのでは。(苦笑)
    それは冗談としてソナーか何かで探知して遠隔操縦で
    落ちたアタッチメントを解体できないでしょうか。

  11. yiu より:

    もんじゅは終わっています。以前、一度だけ瞬間臨界状態になったことがありますが、ペラペラもんじゅは日本が抱えている世界最大の汚染爆弾ですね。もし引き上げに失敗して燃料棒を損傷させたら、そら恐ろしいことになりますね。
    私の故郷は京都府北部ですが、美島や高浜などはまだ可愛い部類です。もんじゅで24回ほど失敗していますが、引き上げで事故を起こしたら九州と北海道以外は住めなくなってしまいます。震災にあった東北には疎開できないでしょうし。
    こんなもの要らないのは自明の理なのですが、なぜ日本は走ったのでしょう。プルトニウムが欲しかったのでしょうか。いつでも原爆が作れるようにしたかったのでしょうか。

  12. 匿名 より:

    福井県にもんじゅを誘致したのはゼネコン出身の当時の保守系参議院委員。しかし、先の統一地方選挙でもまた多くの県が保守に向かっている。有権者が政局や報道に惑わされない候補者選びの知恵をつけることが、この災害から学ぶべきことの一つです。

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