車屋四六の四方山話/勝海舟も通ったというナマズの名店、埼玉県吉川町の『糀屋』
鰻やどじょうを嫌う人がいる。どうやら姿からくる先入観のようだ。となると、ナマズ=鯰も、その仲間に入るだろう。私のオヤジは鯰が嫌いだったから、子供のころ食べたことがなかった。大人になって、深川・いせきや駒形・どぜうで、ドジョウ=泥鰌を食べたときに、ついでに鯰汁を食べてみたが、しつこい味は好みではなかった。
昭和の終わりころ、群馬板倉町・魚俊で、好奇心にかられて、鯰の刺身、天麩羅、鍋を食べて開眼。いらい鯰は私の食のレパートリーに入った。以後、あちらこちらで食べ歩いたが、一番のオ気にいりが埼玉。吉川町の糀屋である。江戸幕府が開いたころから400年というから老舗中の老舗の料亭糀屋=コウジヤには、近藤勇や勝海舟、板垣退助なども来たという。
谷文晁の鯰/絵の一部
糀屋は、見るだけでも楽しい。素晴らしい美術品だらけだから。鑑定団が1億円と値をつけたという谷文晁の鯰、北斎、広重、東山魁夷、伊東深水、川端龍子、魯山人、等々、そこ此処にさりげなく展示されている。
名画のある客室
さて料理だが、立派な建物と部屋で素晴らしい絵画に囲まれては、財布の紐もゆるむというもの。といっても、5000円前後からだから、それほどの覚悟ではない…どうせ食べるなら、やはりコースがおすすめだ。
鯰の煮玉子
感じのよい仲居が先ず運んできたのは、煮た玉子。特大タラコほどの太さはあったろう、鯰の卵がこんなに大きいとは知らなかった。数の子ほどではないが、プチプチとした食感がたのしかった。
写真:薄造りの刺身
刺身は、薄造りだ。皿が透けるほど薄切りして少々の赤さをが残る白身だが、タンパクで上品な味である。天麩羅の旨さはフグに匹敵するだろう。
鯰天麩羅
そしてタタキ揚げは、この地方の郷土料理らしいが、骨や皮などをタタキにしてツミレ状にして揚げたものだが、鯰はアンコウ同様捨てるところがないらしい。意外なボリュームで、食べごたえ十分だった。
鯰叩き揚げ
そして鯰の照り焼き。これも海の魚と遜色ないほど旨かった。鯰は嫌いという人は、いちど鯰の姿を忘れて、吉川へ行くといい。吉川は、東に江戸川、西に中川という川に挟まれ、物通に舟が主流だったころは、関東有数の物資の集散地だったようだ。
鯰照り焼き
また、淡水魚が豊富ということから、この種の料理が発展、とくに吉川は駅前に金色鯰のモニュメントがあるほどに、鯰を街のシンボルとして大切にしているようだ。地方によっては、鯰は高級魚だということも忘れずに。<車屋四六>
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ナマズはフライで食べたことがあります。
フワフワの白身で美味しかったです。
川魚はその構造的に海魚より泥臭さが残りやすいですが、ちゃんと抜けばちゃんと美味しい食材です。
この内容が樋口さん1枚程度なら割安。
吉川といえば薬湯風呂も有名だったはず。
ナマズ並みに人間の方も「泥抜き」してもらいますか?(笑)