クライスラー再建の道険し
当然の如くクライスラーがチャプター11申請となった。メディアの評価を見ていると「これで清算された。米政府などの金銭的なバックアップと、小型車作りを得意とするフィアットによって再生の道を歩む」という楽観論が目立つ。すなわち破綻の理由を、労働コストの高さと借金にあったと分析しているワケ。加えてフィアットを過剰評価しているように思う。
クライスラー破綻の原因はそんなに簡単じゃない。もちろん労働コストや借金が経営を圧迫していたことについちゃ言うまでもなかろう。ただ最大の要因かと聞かれれば「いいえ」である。「コストパフォーマンスの高いクルマを作れない」からダメになったのだ。新しい枠組みでスタートしたところで、フィアットとクライスラーの技術力ではアメリカで売れるクルマなど作れま
い。
なんせフィアット、アメリカでクルマを売っていない。正確に言えば「フェラーリ&マセラッティを除く」ですれ
ど……。フィアット本体はもちろん、アルファロメオもアメリカ市場から撤退し、戻ってくる気配無し。なぜアメリカで通用しなかったのかといいうと、日本車に圧倒されたからである。現在フィアットで販売してるモデルを持ってきても、アメリカで通用すると思えぬ。
フィアットのラインナップを見ると、趣味性の高さをセールスポイントにしているモデルしかない。しかもフィアットの魅力、アメリカ人にゃ通用しまい。1、5
リッター前後の小排気量エンジンは効率の良いATが無く、アメリカで売れ筋になる2、2リッターエンジンってGMの開発。それ以上の大きなエンジンは全て旧式。通用するの、フェラーリのエンジンくらいです。
破綻によってとりあえず大出血は止まった。けれど今後も出血は
止まらない。決定的な対処策を行っていると思えないからだ。アメリカ国民からすれば、会社再生法でなく会社清算法の方が良かったと思う。クライスラーを本気で再建しようとするなら、日本か韓国の自動車メーカーの技術力を持ってこないと厳しいと確信している。三菱自動車か現代自動車ということ。
おそらくクライスラーは今後徐々に縮小していくに違いない。それでもクライスラーの場合、フィアットが敗戦処理をしてくれる。GMのチャプター11はどういった枠組みにするのだろうか?
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(確か)はじめて投稿します。samineです。
ニュースにありましたが、フィアットはオペルとも提携するようですね。フィアットにクライスラーにオペル…。あと情勢から云って同じく破綻したサーブも入るのかな?なんか「弱者連合」みたいですが。
フィアットはご指摘の通り趣味性が高いし、オシャレなのが好きです。どちらも特に今の日本車に欠けている所なので日本でも頑張ってほしいです。傘下のランチア・デルタ上陸も楽しみですね。
クライスラーの乗用車系のうち、ミッドサイズのセブリングは米本国でも「クライスラー倒産の元凶」として五点法の一点という最低の評価をされ、片やイギリス誌では「こんなクルマを買うぐらいなら歩こう」と罵倒に等しい評価をされ、一台の乗用車としてマトモに評価されていないのも事実です。
そもそも、このセブリングと言う車種は2006年末に現行モデルに生まれ変わっておりますがヒュンダイや三菱と共同開発のプラットフォームにクライスラー自社製の4気筒2.4L並びにV6 2.7Lをメインに搭載して成立させている一台、動的品質もボディ剛性も安普請な印象ばかりが先立ち、とうていアコードやカムリの日本勢に歯が立たない現状です。同プラットフォームを共有する米国製三菱ギャランとて競争力は今やゼロに等しく、大味で古風という評価以外はされていないものです。
このセブリングは前述の通り2.4/2.7Lをメインにし、最大3.5Lまでのエンジンを横置きにした全長4.8mのFF車というポジションなだけにアメリカでは(我が国でいう)カローラクラスの位置づけであり、乗り手の側も気軽な足がわり以上のものを求めない傾向になっておりました。しかし、昨今の情勢から考えるにこのクラスが米国人のファーストカーになりつつあり、事実アコードやカムリの日系車の破竹の売れ行きにそれは示されていると思います。
するとこうしたミッドサイズセダンに対しても本腰を入れて開発せねばならないのが今日のビッグ3の状況なのは否めません。
こうしたDセグメント車は米国においては日本における1500ccセダンの位置づけだと言われた時代は去ってしまい、今後は「ニアラグジャリー」車を作るぐらいの意気込みで、本格的に品質や剛性感を追求し、アウディA4やVWパサートあたりまでと対抗できる基本性能が求められる時代に入ったことは確かです。その点ダイムラークライスラーが解散して数年が経ち、新たにフィアットグループと組んだクライスラーにとって状況は一筋縄ではいかないのは事実でしょう。ただ長い目で見ればクライスラー側はフィアットグループのアルファロメオ159も含んだDセグメント車の刷新プログラムの一環に組みこまれ、アルファロメオやランチア社の中型セダン系統と共同開発の恩恵を受け、次期セブリングは欧州でも第一線で戦える動的性能・安全性を備えることが期待できるのではないでしょうか。
一方、W210型メルセデスEクラスと共通のプラットフォームを用いてアメリカ車の走りに新紀元を開いた300C/ダッジチャージャー系は次期モデルではアルファロメオ169と共同開発で、しかもマセラティ・クワトロポルテのシャーシーレイアウトとも共通点が取り込まれるという噂も出ているほどでこちらは大いに期待できるかと思います。
フィアット・グループ側のラインナップでは1.4Lターボを中心とした2BOX車ブラーヴォに魅力を感じますが、やはりVWゴルフを前に霞んでしまう感じが否めません。
一方、傘下のアルファロメオの1.4-1.8Lクラスの中型ハッチバック(そう、VWゴルフの真っ向ライバル!)たるジュリエッタ、こちらは久々のヒット作になる予感が感じられます。
同じアルファでも肥大化し過ぎたボディを持った159はどこと言って知性が感じられず魅力に乏しい一方で、同シリーズの1750TBi(ターボ200ps)と2.4JTD(200psディーゼル)の大トルク・エコ性能の両立ぶりには例外的に心惹かれるものを覚えます。