予想以上のダメージ

自動車メーカーが地震で負ったダメージは当初の予想以上に深刻である。最も震源地に近いいわき工場を始め、栃木県の上三川工場を持つ日産の場合、地震発生日の夜に出したリリースだと「12日と13日の操業を見合わせる」。翌日昼のリリースでは「14日は休業。15日以降は未定」となった。

14日夕方になると「いわき工場と栃木工場は18日まで生産停止」。16日に出たリリースは「いわき工場についてはまだ時間が掛かる」。また、栃木工場だけでなく、追浜工場、横浜工場、日産車体で3月20日まで生産停止となることが発表されてます。加えて静岡で起きた15日の地震でジャトコが停止。

そして20日に発表された内容は「とりあえず揃っている部品で24日から生産開始しながら、サプライヤーの支援を行う」。地震後2週間経っても本格的に復旧するメドが立たないということです。こういった状況、日産だけでない。スバルやホンダも同じ。西日本にしか工場を持たないマツダすら本格操業が始まっていない。

工場に問題なくても被災地域で生産している部品が多いからだ。茨城県から福島県に掛けての太平洋側は日立を始め電装品メーカーの密集地域。工場の損害だけでなく従業員も被災し、原発の放射能漏れで地域から脱出してしまった人までいる。そもそも燃料無い状況だと復旧作業すらままならぬ。

部品工場の操業停止は海外工場にも影響する。日本でしか生産できない部品も少なくないからだ。各メーカー海外向けの部品を最優先して生産を立ち上げようとしているものの、全て揃えるのは難しいかもしれない。これはもう想像をはるかに超える大きな被害である。さらに電力の問題も出てくるだろう。

工場の場合、時間停電されると高温をキープしなければならない鋳造部品を作れない。塗装なども作業+乾燥に時間が掛かる。3時間の停電以上に長い時間、塗装工程を動かせなくなってしまう。東京電力が細かい対応をしてくれればいけれど(各メーカーともすでに折衝していることだろう)‥‥。

東京電力はやっと電力使用量を1時間遅れで公表するようになったが(なぜリアルタイムで情報を出さないのか?)、これに工場
で必要な電力を上乗せしたら完全にキャパシティをオーバーしてしまう。4月一杯は電力に余裕ある21時〜6時という深夜/早朝に操業しなければなるまい。

東電の電力使用量

自動車産業は我が国の稼ぎ頭である。自動車産業が復活してくれなければ日本の復興も厳
しい。リーマンショックの影響からやっと脱出したと思った矢先の出来事だけに辛いこと。ただリーマンショックの余波残る1年前だったらもっと大変な事態になったろう。これを幸いと考え、総力戦で頑張って欲しいです。

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6 Responses to “予想以上のダメージ”

  1. G35X より:

    東電の使用実績グラフはずるい。肝心の供給能力のグラフが出ていないので、どのくらい余裕があるのか全く判らない。東電の総発電能力は60ギガワット以上あるが、福島第一、第二の9ギガ分を除いても50ギガワット以上発電する能力がある。そのうち10ギガワットほどは旧式火力で休止しているかメンテナンス中か燃料待ちで発電していないとして、40ギガワットは自前で発電できているはず。それに関西から周波数変換して供給してもらう分1ギガワットと東北、北海道から融通してもらう分で合計50ギガワット近くの供給能力があるはず。グラフ内の「本日ピーク時供給力:3700万kW(37ギガワット)」は鯖を読んでいるのでは? 供給能力と使用実績のグラフとを比べれば、消費者はもっと的確に節電協力をすることができる。 需要と供給の実態を知らない消費者が門灯を消したり夜寒いのに電気毛布を使わなかったりするのは意味が無い。。一昨年の夏需給切迫して「アワヤ」というところまで行ったカリフォルニアでは下記のサイトで常に需給状態を見ることができる。 東電でも同じような情報サービスをしてもバチはあたらない。
    http://www.caiso.com/outlook/outlook.html

  2. tonpochi より:

    日本は国土の小さい国ですが、その海岸の長さは世界6番目というから、どこで暮らしていても津波の脅威から逃れられるところは少ないです。
    参考:http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9400.html
    そして今回、予想以上のダメージを負ったものがあります。それは、世界一の防潮堤としてギネスブックにまで載せられていて、「万里の長城」とまで言われていた岩手県大船渡市の湾口防波堤が簡単に破壊されてしまったという事実です。
    参考:
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110320-OYT1T00777.htm?from=navlp
    http://www.asahi.com/national/update/0319/TKY201103190440.html
    これにより日本、いや世界の防災対策に大きな課題を投じたことは間違いありません。
    今後、産業の復興に全力で取り込まなくてはなりませんが、同時に防災基準(想定)をどうするかについても考え直さなければなりません。

  3. kine より:

    いつもありがとうございます。
    yahooのトップページにも東京電力のページからの電力使用量が表示されていました。
    ソースを見たらgifだったので、
    http://setsuden.yahoo.co.jp/images/meter/meter_setsuden.gif
    これをブラウザーのアドレスバーにコピーをすればブラウザーで表示されます、表示を小さくして1時間に一回再読み込みをすれば表示が変わると思います。

  4. BP5 より:

    東京電力の現状(東京電力HPの情報より)
    原発 最大1700万KW  現在 465万KW (4機/17機稼動)
    火力 最大3800万KW  現在2100万KW程度 (震災により停止8機 680万KW、以前から停止 1000万KW程度)
    水力 最大 900万KW  現在 900万KW
    融通   現在 160万KW
    4月末までに停止中の火力発電所を再起動させるなどして1000万KW程度は増える予定らしいですが、原発の復旧は見込めないと思われるのと、震災で被害が出た火力発電所も予想以上の被害で復旧の見込みが立たないようなので、頑張っても4700万KWが限界と考えられます。
    夏場のピーク電力は6000万KW弱なので、少なく見積もっても1000万KWほど足らない計算になります。
    今回の計画停電は500万KW程度の不足を回避するための施策なので夏には倍のエリアを同時に停電させないと電力が足らない事になります

  5. tonpochi より:

    報道では、被害状況が福島の原発に集中していますが、実は火力発電でも被害を受けた所が結構あるらしいです。
    これまで今回の地震でどれだけの発電所が被害を受けたのか? その辺の報道をあまり目にすることがありません。
    今朝のニュースでは計画停電はゴールデンウィーク明けに一旦中断し、需要が大きく伸びる夏場は供給力が1000万キロワット程度不足するため、再度実施せざるを得ないとしています。
    また、完全復旧するまでには少なくとも2年は必要で、その間、計画停電は続くということです。更に、法律に基づいて大規模な工場などに対して電力の使用を制限する新たな措置を実施するかどうか経済産業省との検討に入ることにしているとのことです。
    先生の以前の「圧倒的な電力不足に」で、石油等火力の発電設備容量は原子力発電設備容量に匹敵し、電力不足を補えると述べさせて頂きましたが、IEAも同様のことを発表していました。
    参考:http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20049520110315
    休止している発電所の立ち上げに関する記事
    参考:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110318-00000669-san-bus_all
    私の勤めている会社の一部の工場では常時熱を必要とするものがあり、計画停電のため操業停止しているところがあります。計画停電が2年も行われたらお手上げです。
    東電も政府も、福島原発以外の発電所の被害状況と休眠中の発電所の再稼働するスケジールなどをもっと公表すべきではないでしょうか?

  6. goto より:

    電力もかなり経済に大きく影響しそうですが、東京でも水道水に放射性物質が出たり、そちらも東日本や日本全体の経済に大きく影響するかもしれません。
    東日本は、食物などの生産量も多いですし。
    現時点でも福島原発から放出される放射性物質が減ってないようですが、それが減らないことには何もできないと思います。
    福島原発の電力が復旧しつつありますが、それによって、または他の方法で、数週間以内に放出される放射性物質が問題ない程度まで減らないことには、東日本や日本の放射能汚染がどんどん広がり濃度も高くなりますし、水などの放射能が高いまま続くようであれば東京からも人や会社がどんどん出て行くかもしれません。
    放射能汚染が進行している状況では、原発の周囲xx[km]などで人が住めなくなる可能性もあり、仮設住宅も建てれないでしょうし。
    ヨウ素(131)だけであれば半減期が短いので何とかなるかもしれませんがそれ以外の物質によって地面などが汚染されると、浄化されるのにかなり時間がかかると思います。
    電力については、太陽電池とバッテリがあれば停電でもある程度の生活ができるので、太陽電池を付ける家(や会社)が増えていくと思います。
    工場などでは屋根の面積などに比べ電気使用量が多いので無理でしょうが、一戸建てや小さな会社などではかなり役に立つと思います。

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