マツダ、ロータリーエンジンを使うレンジエクステンダーを断念か? 理由を考証する

日経新聞Webは「マツダ、ロータリーエンジン使う航続距離延長は中止」と報じた。この件についてマツダから何のコメントも出ていない。ただ「火のない所に煙は立たぬ」と言われている通り、中止の可能性は高い。そもそも2019年5月の段階で2020年に「市販予定だったロータリーエンジン使うレンジエクステンダーは延期」と報じられていた。なぜ延期や中止の情報出るのか?

もし本当なら超異例の決断だ。というか、先日の中期計画見直し時点までロータリエンジンを発電機として使うレンジエクステンダーはフィックスされており、出す気100%だった。マツダが出した下の写真、正しくロータリーエンジン使ってますから。会話が成立した最後の頃、藤原さんは「ロータリエンジンは意地でも出す」と言っていた。断念ならよほどの理由かと。

私は2つの課題をクリア出来ないからだと思う。1つは排気ガス規制。御存知の通り最新の排気ガス規制をクリアしようとすれば、都市部の大気よりクリーンな排気ガスしか許されない。具体的に言えば冷間始動時を含め無臭であり、NOxなどニオイのしない有害物質も出してはならないのだった。ロータリーエンジンでクリアすることは出来るか? 相当難しいと思う。

そもそも燃焼質の形状が弁当箱みたいになっており、球状という理想とかけ離れている。実物を立体的に見ると2次元である写真や図より「こいつぁ厳しい!」と解るだろう。点火プラグを2つ付けても、燃焼室の隅っこはいかんともしがたい。しかも330ccという排気量を考えると、触媒が稼働する温度まで持って行くのも難しい。電気で暖めておくしかなかろう。

エンジン掛かっても極端に気温が低くなると”冷え性”のロータリーエンジンだけに触媒の温度維持が難しいという側面もありそう。マツダは技術力あるため何とかしようと頑張ったんだと思う。けれど燃焼質形状形状を改良するのは物理的に難しい。同じ出力のレシプロエンジンと比べ、排気ガス規制をリーズナブルにクリア出来る見込みが立たなかった可能性あります。

2つ目は熱効率。1つ目と関連するのだけれど、ロータリーエンジン最大の弱点が熱効率=燃費。レンジエクステンダーの場合、MX-30EVをベースにすると思うけれど、燃料タンクを設置しなければならない。燃料系、安全性も満たさなければならず意外にやっかいなのだった。携行タンク積むようなイメージじゃありません。MX-30EVに燃料タンクを追加しようしたら大がかりだ。

もちろん容量小さくていいのなら、スペース的な問題は解決出来る。けれど熱効率悪いとそれなりの燃料タンクを考えなくちゃならない。10L以上必要か? おそらくギリギリで設計していたと思うが、アメリカや欧州などで使うことを考え、CAFEの数値など考えたら「それじゃ足りない」ということになった可能性ある。増やせなかったらCAFEをクリア出来ず断念せざるを得まい。

現時点でマツダからのコメント無し。発売寸前まで来て本当に断念したのなら、大失敗と言ってよろしい。ただ藤原副社長肝いりのプロジェクトだと聞いているから、誰も責任を取らなくて済むと思う。

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