「合成燃料で二酸化炭素の排出量を実質ゼロに出来るという報道」はミスリードです

驚くべきことに大手メディアの皆さんが「工場の排出ガスから作った合成燃料で二酸化炭素の排出量を実質ゼロに出来る」と明らかな間違いを報じている。カーボンニュートラルって世界規模の課題なのだから、もう少し勉強して欲しい。というか少し考えただけで「違う」と解るんじゃなかろうか。工場から出る二酸化炭素は、基本的に原油や石炭、天然ガスなど化石燃料から出る。

NHKですら全く理解出来ておらず

したがって工場は明らかに「二酸化炭素を出す」と小学生にも理解出来ることだろう。この二酸化炭素を全て回収して合成燃料を作ったとしよう。すると工場が排出する二酸化炭素は実質ゼロになります。でもその燃料を使って走った時に出る二酸化炭素は? こいつを回収すればトータルで実質ゼロになる。でも回収出来なければ、クルマから出る二酸化炭素は大気に排出されしまう。

WRCなどで使われている合成燃料『P1』

世界基準だと化石燃料から出た二酸化炭素の回収して作る合成燃料は、二酸化炭素の排出量を半分としてカウント出来ることになっている。つまり今回大手メディアが報じている合成燃料って実質ゼロでなく半分に出来るのみ。ちなみに欧州が使用を認めた「eフューエル」とは大気中から回収した二酸化炭素を使うことが条件だ。これなら二酸化炭素は増えないですから。

工場から出た二酸化炭素を使う合成燃料は、eフューエルよりずっと安く作れる。しかも既存のエンジンに使える。すると二酸化炭素の排出量を半分に出来る。2050年のカーボンニュートラルには対応出来ないものの、その前の段階で要求される二酸化炭素排出量削減には今のクルマにそのまま使うだけで対応出来るというメリットを持つ。トヨタが主張しているの、その点だ。

メディア側が勝手に「実質ゼロ」と思い込んじゃっているだけ。参考までに書いておくと、植物から作った合成燃料(作るときのエネルギーは太陽光発電などから)はカーボンニュートラルながら、人や動物の食糧になるトウモロコシなど農産物だとダメとされている。カーボンニュートラルに認定されるeフューエルの実現は今のところ目処もついていないくらいハードル高いです。

<おすすめ記事>

5 Responses to “「合成燃料で二酸化炭素の排出量を実質ゼロに出来るという報道」はミスリードです”

  1. Shoichiro Fukushima より:

    ご記載の通り、
    意図的に車の排出ガスのみに限定して言及しており悪質です。視聴者・読者の視野も狭めたいのでしょう。
    二酸化炭素排出に関するこういった都合の良い主張はこれからも様々出てくるでしょうが、カーボンニュートラル布教の一環と思って、目を瞑るのも良いと思います。

  2. 二級人 より:

    化石燃料から排出されたCO2を再利用(2回利用)しているだけだから排出量を半分とカウントしているのでしょうね。
    eフューエルや水素、バイオ燃料は製造するのに大変なコスト(エネルギー)が掛かるのは半ば公然のこと。おっしゃるように長距離トラック、船舶や航空機など電気バッテリーで代替できない用途向けなんだろうと思います。小型車には再エネの電気をそのまま電気バッテリーで使うのが一番かと。
    飛行機には乗らなければいいだけの話ですが、物流コストが上がり物価高で大変な未来が訪れるのでしょうか。24年問題だけでなく、30年問題とか35年問題とか。新興国の人のような心配をしてしまいます。早く経済を成長軌道に乗せてほしいです。

  3. トヨタ車ユーザー より:

    実際には、EUでe-フューエルが認められた→内燃機関OKと言うわけにはいかないし、EUで内燃機関を残してほしい(EVが高額で経済的な面から)という国の訴えの解決も難しい状況なんですね。

    このままe-フューエルの製造が簡単にならないなら、大型でもあまりコストの掛けられない輸送トラックなんかは、水素エンジンやFCEVのほうが理に適っているように見えます。もちろん、水力・風力や太陽光で作った電気エネルギーで水素は作らなければなりませんが、一度作ってしまえば貯蔵もできます。

  4. z151 サンバー愛好者 より:

    二酸化炭素に名前は書いてないんですよね。
    そう、e-fuelも由来からすれば再エネで製造エネルギーを得て、空気中の二酸化炭素と水素から生成すれば「カーボンニュートラル」が成立するのは勿論理解できるのですが。
    アイドルのおならはバラの香りだからして良し、おっさんは臭すぎてオゾン層破壊するからするな!みたいな風に聞こえちゃう。(暴論ですが(笑))
    通常のICE車に化石燃料由来(も混じった)の合成燃料入れて二酸化炭素が計算上1/2になるならハイブリッド車並みってことです。
    ハイブリッド車ならICE換算で1/4の二酸化炭素の排出量ということ。
    さっさと大量生産すればいいのにと思います。
    生産していく内に何%は空気由来とか割合入れていって、将来的に100%大気由来にするとかしながら、いい効率の触媒とか製造方法とか見つけていけばいいんじゃないかと思います。

  5. しんぶんし より:

    人間は生存するだけで二酸化炭素を排出し、生活をする上でさらに多くの二酸化炭素を排出している。よってここに人縮条約を締結する。成績の悪い日本は2050年比欧米中:日本=10:6とする。とかなんとか。

コメントを残す

このページの先頭へ