スズキの社長曰く「たぶん日本は滅亡する」。トヨタの社長曰く「できることから全力で取り組む!」

とても残念なことながら我が国の自動車企業の社長さん達は環境問題に対し、自分の意思を反映したコメントを出さない。「電気自動車に取り組みます」とか「2040年までに二酸化炭素の排出量うんぬん」といった通り一遍の内容に終始する。鈴木俊宏さんが踏み込んだな、と思ったら「たぶん日本は滅亡する」という酔っ払いの愚痴のような内容でした。確かに日本どうなる、と思っちゃう。

そんな中、タイ取材中、少数のメディアでモリゾウさんにしっかり話を聞く機会があった。大手新聞社の記者さんから有力地方新聞、業界紙、海外に本拠地を置くメディア、自動車専門誌、Web媒体、有能なジャーナリスト、WRCに出て壁に刺さったロートルの評論家といったメンツです。幸い皆さんしっかり勉強しているから「そんなことは自分で調べろよ!」みたいな質問は出ない(笑)。

何を隠そう私自身、豊田章男さんが環境問題に対しどう考えているのかめちゃくちゃ興味ありました。断片的な情報は入ってきているものの、3分の1くらいのコマが無いジグソーパズルを組むようなもので想像で埋めなければならないことも少なからずあった次第。今回、欠けているコマの大半を出席したメディアからの質問などで埋めることができたと思う。以下、怪説します。

まず地球規模の環境問題については明確に「絶対に対策が必要」ということを強く考えている。興味深いのは「スピード感を持って実行しなければ何の意味も無い!」という姿勢です。「会議室でアレコレ話をしている間に手遅れになるから走りながら考えよう」ということ。ただ日本でそれをやろうとしても、足を引っ張る勢力や組織や当局やメディアが山ほど出てくる。

例えば今回タイのレースで水素エンジン車を走らせるにあたり水素充填車を日本から運んだ。水素は高圧じゃなければ危険性はガソリン以下。リチウムイオン電池よりずっと安全。だからこそナンバー取得して公道を走れる。なのに国交省は水素に対しめちゃくちゃ厳しい規制を掛け続けており、水素充填車も高圧じゃないのに水素を全て抜いて窒素に入れ替えないと船に乗せないと言う。

レースでも給水素する場所が制限されている(広い立ち入り制限場所を確保しろという規制)。カーボンニュートラルの大切な”武器”になる水素ながら、規制緩和しない。参考までに書いておくと、タイ側はカーボンニュートラルに対するチャレンジをしっかり認め、ブリラムサーキットではピットレーンから直接水素補給できるようになっている。日本よりタイの方が現実的だったりして。

章男さんによれば一事が万事そうなのだという。水素関連一つとっても、1)様々な分野の人や企業と話をして協力関係を作り上げ、2)その上で政府の様々な部署と調整しなければならない。3)そして許認可はいつ出るのか分からないという。今回、章男さんは最大の財閥『CPグループ』(チャロン・ポカパン)とカーボンニュートラルについての協定を結んだ。

同時に『COP27』でタイ国はあらゆる分野でカーボンニュートラルに取り組むということを発表していることを受け、タイ政府の副首相を含めトヨタはCPグループと力を合わせ環境対応していくと発表した。タイ政府にとってこれほど心強いことはない。しかもCPグループはTOPさえ「やりましょう!」といえば一気通貫にゆりかごから墓場まで全て対応できる。

前述の通り環境問題って待ったなし。章男さんは日本でも回生可能エネルギーから水素を作ったり、政府は無視を決め込むも世界3位の発電ポテンシャルを持つ地熱発電で作った水素を使ったりするなど、様々な「できること」を手がけてきた。なのにメディアまでも「電気自動車の販売台数目標はどうなってる?」に代表される近視眼的な因縁ばかりつけらている状況。

電気自動車大好き君も電気自動車大嫌い君もアンポンタンだと思う。何度も何度も書いてきた通りカーボンニュートラルの終着地点は2050年。会議室で10年間論議したって意味なし! できることから始めて行くしか無いと私も思う。といったことを眉毛をヘの字にして取り組んだって面白くないしエネルギーだって涌かない。だからこその競技です。

こういうことを書くから「あんたはいつも上から目線だ!」と言われちゃうのだけれど、ラリーやレース会場で見るモリゾウさんは天真爛漫! もう「人生大いに楽しんでますねシャチョー!」と声を掛けたくほど。どんなドライバーより人気あるし、記念撮影のリクエストにも気軽に応じる(日本だと収集付かなくなる時もあるので人数多いと制限掛かります)。

あんな人が社長やってるクルマ屋のクルマなら買ってもいいね、と存分に思わせる。そもそも66歳であり、トヨタという大きな企業のTOPがタイでレースに出ていることすら常識的には考えられない(しかもスタートドライバー! けっこう楽しそう&激しいバトルをやっているので驚いた!)。トヨタ以外の社長ももう少し積極的に意見を出すべきだ。歯がゆいですね、と悔しいのは他メーカーの社員です。

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4 Responses to “スズキの社長曰く「たぶん日本は滅亡する」。トヨタの社長曰く「できることから全力で取り組む!」”

  1. アミーゴ5号 より:

    こうなったら、国沢さん!
    モリゾウさんの不満や怒りを代弁して差し上げたらいかがでしょう!?

    モリゾウさんはお立場的にも、言うに言えないことばかりでしょう。

    トヨタイムズも、社内と業界に向けた意識改革が一番の狙いだと、勝手に解釈しています。建設的なコトは言えるけど、真っ向からの批判はできないでしょう。

    自分も、モリゾウさんの言われることが、日本の進むべき道だと確信しています。是非とも、ブラックサタンならぬ、モリゾウブラックに変身して、糞ジジイがはびこる腐りきった政治や業界を、ペンの力で成敗してやってください! そして次世代を担う若者世代に、希望を与えてやってくださいまし!

    m(_ _)m

  2. 水素の扱い性についてははっきり言って
    国交省より経産省とかが悪いです。
    諸悪の根源は「高圧ガス保安法」
    (昔は「高圧ガス取締法」といった)
    とにかくこれが厳しすぎるのである。
    なので、水素に限らず、LPGや天然ガス車でも
    大きな枷がある。
    まず、ボンベはきちんと検査しなくてはいけないが、
    (まあ、安全上必要だからそれには異論はない)
    その周期が6年。そして、12年も使うと
    実質寿命扱いで廃棄。
    分厚い鋼鉄ボンベがそんなヤワなわけがない。
    定期検査は必要としても、その点は緩和して
    ほしいと思う。
    また、ちょっと前まではLPGのFEIは
    実質できなかった。これはLPGを噴射のために
    そのままポンプ加圧すると「高圧ガス製造設備」
    になってしまうため、つまり
    「工場が走り回るなんてダメ」ということになって
    許可が降りなかったからである。
    記事の水素ステーションにしても然りである。
    つまり建前は
    「許認可された工場じゃないと水素加圧充填しちゃだめ」
    という意味なのだ。

    この辺り本当にタイ割り偽陽性の改善と規制緩和を切にお願いしたい。

  3. ひこ太郎 より:

    他社の社長、役員もと言うけどトヨタは世界1位2位を競う自動車メーカーです。そこと比べるのはちょっとなぁと・・・社長だから話題になるけど、他社の役員クラスが出てても話題にならないですし

  4. Taka より:

    水素は石油利権組の邪魔が入っているように見えるのは私だけ?水素シフトしてそれこそガソリン要らない状態になれば石油元売りはガソリンの処分方法を考えなければならない。既設のスタンドに水素ステーションを併設したがらないのも法規や規制云々ではなく水素ってガス屋のジャンルだからでは?自分たちで扱えない物は石油元売りが自分たちの末端に入れさせないよね。一応ポーズとしては水素普及にも協力しますよ、とは言っているけど。

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