スバルの巻

クルマの売れ行きに直接関係する自動車メーカーの部門は3つ。どんなクルマを作るか考える『商品企画』と、それを作る『開発部門』。出来たクルマを売る『宣伝/販売促進部門』です。この3つが噛み合って良い仕事をしていたのが、1980年代後半からのスバルだった。レガシィ以後、次々ヒットを飛ばす。

しかし。7〜8年前に商品企画が(現在販売している車種です)ハッキリ「今までのスバル路線と全く違いますね」という人になった。会社という組織、硬直化すると上司以外の意見など聞く耳を満たなくなる。違う部門は「そうじゃない」という意見も言えない。

一方、魅力無いクルマは、やっぱり評価されない。宣伝/販売促進も結実せず。昨日のTOPで日産国内販売の凋落ぶりを紹介したが、スバルの国内販売を見ると2006年の9万3千台から昨年は7万9千台へと大きく落とした。スバルの場合、軽自動車も大幅に減っているため一段と厳しいんじゃなかろうか。

かくして5年前までハッキリ存在した「チームスバル」という連帯感は、今やほぼ無し。それぞれ好き勝手やってる、と言い換えてもよかろう。森前社長も「鯨海酔候」の如し。坂本龍馬気質の社員は居るけれど、前述の通り会社組織でスタンドプレーしたら外に出るしかない。伏して機を待つしかありません。

そんな中、唯一頑張っているのが、レガシィを発表して以後ずっと誉められ、注目されながらクルマ作りをしてきた開発部門。外部からの厳しい意見も少なくなかったけれど、期待の裏返しだということを認識していたと思う。プライドもある。しかし。現行レガシィ以後、アイサイトを除きスバルの技術は評価されない。

ここからが本題。どうやらFT-86の仕上がりは相当良いらしい。スバルの開発チームも「良い仕事をした。これで評価される!」と手応えを感じているという。されど今回の商品、客観的に考えるとスバルは下請けだ。トヨタの企画で、トヨタの開発予算を使う。ダイハツで開発したbBのようなものです。

トヨタはFT-86をbBと同じように考えている。これまた当然だ。だからこそ8月下旬に行われたメガWebフェスタで、多田さんはFT-86を自分で開発
したように語っていた。というかずいぶん前から多田さんはFT-86を語ってます。これをスバルの開発陣は隔靴掻痒の思いで見てるようなのだ。

おかしいな、と感じたのは、スバルがどんどんFT-86の詳細を公表し始めたあたりから。『BRZ』という車名をトヨタより先に発表したことも驚いた。ダイハツじゃ考えられないこと。現実問題としてFT-86はスバルが開発したクルマである。今や「FT-86はスバル車だ!」と言ってしまう寸前の状態だという話も聞く。

なんでこうなったのか? こらもう簡単。商品企画がスバルの技術力を活かしたクルマを企画し、宣伝/販促部門がスバルのブランドアイデンティティをキチンと
構築出来ていれば、レガシィやインプレッサで十分誉めて貰えるし、ブランドイメージも作れる。今のスバルは誇れるモノがBRZしか無い、ということです。

・ECOカージアは「ホンダの軽、果たして成功するか?

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7 Responses to “スバルの巻”

  1. アミーゴ5号 より:

    大きく2つ感じたことがあります。
    ひとつは、やはり水平対抗FRは、スバル単独では市販化し得なかったという事です。
    スバルは4WDに絶対の自信を持っているし、実際素晴らしい。
    また2駆でもトヨタより走りが優秀なFFがある。
    わざわざ絶滅寸前の小型FRを、自社の4駆を否定して造ってどうすんだ?!という声が聞こえてきそうです。
    加えて主要3部門がそんな不協和音では、会社として自律的に新しい事へチャレンジするなどできません。
    語弊があるかもしれませんが、スバルにとって多田さんは、まさに真っ赤なパッションを持った坂本龍馬だったのではないでしょうか?
    もうひとつは、スバル開発部門の心意気です。
    「BRZなんてちょちょいと造った」とは、なんとも粋です。
    実際は、燃費とパワーのアップのために、エンジンの直墳化がはかられたし、そのトヨタの技術がなければ「走りは良いけど、燃費は20世紀」と心無いヒョーロンカに叩かれるクルマにてしまうでしょう。
    この環境性能の向上のために、何年もかかったというか、えらく待たされたと認識しています。
    直墳化をちょちょいと、なんてとんでもないと思いますが、「もっとでっかいことができんだよ!」というスバル開発部門の心意気こそ素晴らしい!!!
    いつもの通りの手前勝手な解釈ですが、自分はますます水平対抗+FRが欲しくなりました!
    (・o・)ゞ
    このパッケージングで、ちょいとボディを固めたら、箱根辺りじゃもう走りが爽快すぎてたまらんでしょうね〜。
    (^o^ゞ
    絶対買うから、5人乗りのセダンやワゴンも出してくださいまし〜。
    m(_ _)m
    m(_ _)m
    m(_ _)m

  2. あべ より:

    ベストカーのスクープにはFT86はトヨタ主導で開発と書かれてましたが、どっちが正しいのか疑問です。

  3. ケイイチ より:

    失礼します。
    昔・・日産からスカイラインミニと銘打っての
    ラングレーが発売されました。
    顔は似せて、エンジンはパルサーなどと共通の
    E15型になり、スカイラインが替えない者に
    も替えそうな?クルマでした。
    スカイライン2000GTEが新車価格150
    万円近い時代でしたから物価の違いはそれなり
    。HBスタイルでリアウィンドウ左右がハメ殺
    しでなく、センターコンソールのレバーで開く
    仕掛けが(ワイヤー駆動で)面白い工夫。
    所謂、憧れのクルマが替えないボンビーユーザ
    ーや家族向けセカンドカーに用意されたイメー
    ジモデル。大人しい性格付けで、ライバルなら
    各社の1,5リッターHBでしょう。
    当時の日産パルサーなどにはEXAなどの先鋭
    的なスタイルのモデルも登場し、これで十分と
    満足できそうな雰囲気があり。
    クルマを所有したいユーザーには選び法第の良
    い時代でした。
    BMWのX5が替えないからX3を購入したい
    のと違い、まだマニュアル崇拝でクルマ漬けの
    人間が単純に選ぶことが販売に繋がる黄金期。
    日産は、そうしたグレードの販売も楽しんでい
    たように感じています。
    そういえば、テレビ番組でマーチを架空の販売
    店「緑が丘営業所」で販売にこぎ着けようとす
    ル俳優の柳葉敏郎に演じる熱血社員のドラマを
    覚えています。轟さんでしたね(笑)。
    劇中にがシルビア13のオープンカーもゲスト
    出演しており、一風変わったコミカル路線での
    日産は、現在にも健在だな・・と感じます。
    (キューブなどのCMスタイルは・・)
    結局は高額なクルマの購入は買い手のノリなど
    のシナジー(相乗効果)なしには実現しないの
    です。クルマ好きを遠ざけて、賢い乗り物にし
    たくても・・所詮は地方のオカンやオトンの恥
    じらい無き乗り物。高度に作り、馬鹿げた民衆
    のオモチャとして使われる。
    この方程式は不動です(日本的)。
    つまりクルマを理解する層も夢のまた夢。
    日産おとぎ話は見栄と出資のバランス神話。
    私は馬鹿げた傀儡で身の安全を保ってもらうよ
    うな恥ずかしい人生はしないぶん、楽しい車に
    お小遣い投資で夢を見て・・夢も希望もない、
    老化限定?の宗教団体に上納金を吸い上げられ
    ない暮らしをしたいものです。
    夢の価値は排気量では分けられません。
    しかし無意味に生きて彷徨うよりは確かな旅を
    させてくれます。

  4. ケイイチ より:

    スバルは優秀なので1台入魂の素晴らしいクルマ
    造りを果たします。
    トヨタがハチロクもどきを実践投入しようという
    のは、今後の売れ筋・・マーケティング調査くら
    いしか意味合いを持たないかもしれません。
    それでも、スバルのステイタス・・良い物作りは
    揺らぎません。
    この新型はスバルがトヨタに消化されぬ証明。
    発売されれば間違いなくトヨタ技術の結晶という
    扱いであっても、我々はスバルを知るトリビアな
    クルマになりますね。
    ところで、災害が多発するこの時代にクルマには
    オプション装備に災害時の仕様がありません。
    観光バスなどは除細動器の搭載はありますか?。
    水没に対処したもの、また緊急時に治療や救命の
    パックなど(個人でも用意できますが)装備して
    もいいころではないでしょうか。
    心筋梗塞や脳梗塞、即時の治療が行われなければ
    死亡する症状から、負傷した人間も応急処置には
    欠かせないトリアージのような段階を分けた装備
    、クルマの故障時に工具があるように、そろそろ
    別オプションがあればと思います。
    快適優先のクルマの装備は災害時に重い大きい?
    難題に化けちゃう恐れのトップ。
    しかし、搭載スペースを生かせば、かなりの道具
    (食料)も載せておける箱。
    今年度だけを挙げても、大災害の頻発は明日にも
    自らを襲う危険性でいっぱいです。
    日本仕様とすれば、対災害に絞った用意がないな
    んてあり得ない気がしませんか。
    もうひとつ、水害時に浮力で流された自動車が海
    まで流されたり、溺れる人々の凶器に変わる映像
    を見てきましたが、何か対策はないのでしょうか
    。センサーが一定時間を無人で浮遊しだした車両
    には水没させるとか(かわいそうですが)、この
    内部に人間が脱出できない場合には・・そのまま
    水の混入させない装備など欲しいですね。
    木の葉のように流され続けるクルマ達の姿を見つ
    めて・・・次世代の日本車の標準装備は、やはり
    トヨタと提携各社あたりから登場してくれそうで
    すね。

  5. さね より:

    スバルの反骨精神いいじゃないですか! ロシア帝国を崩壊の序章の折、ロシア皇帝家族に寵愛を受けたラスプーチンですが、そんな人がいるんでしょう国沢先生が指摘するぐらいだから。彼の歴史学者の人物評価は二分してますが、そんなことはいいとして。歴史は繰り返すといいますから、彼は帝国内の自分達の将来を憂いた、門閥貴族達の手によって暗殺されました。かなり死ぬまで、しぶとかったらしい…。きっとスバル、いやトヨタ帝国におけるスバル門閥貴族の中に、スバル領地を憂いてる人たちの反逆が始まったんですねきっと。ラスプーチンいずれ排除されるでしょう。結局最後は大トヨタ帝国さえも崩壊かな?ラスプーチンの呪いはハンパないですからね。とにかく、トヨタ支配に辟易してるスバルがいるだけでも、いいことですよ日本の自動車産業にとって、リーダーがリーダーになり得ぬ行動しかとれない、約束守らない場合は、自ら自分達=会社を守るタメには時には反逆とゆわれても、我が道をいかないと。スバル、ハイブリッド技術もらったら大トヨタ帝国から他にいくのかもしれませんね。スバル独自のミッション開発さえ金だしてくれないぐらいだから、いやんなるでしょ。トヨタも終末感ただよってるし。もらえる技術もらったら、逃げるのも勇気ですよね。

  6. ほうき星 より:

     ラスプーチンの仕業かどうか判りませんが、BF,BHと乗り継いできたのに後継になり得る手頃なワゴンがなくなってしまったのは困ったものです。
    この際、BRZのプラットフォームを骨の髄までしゃぶり尽くして、手頃な大きさのシューティングブレイクでも作ってくれないものかと妄想しています。
    できればツインクラッチミッションとか、気筒休止とか載せて。
    ところで、水平対向エンジンの場合、気筒休止で2気筒になっても振動面では直列より有利なんでしょうか?

  7. シルビア より:

    売れに売れまくった日本人が愛した最後の2ドアクーペとも言えるS13シルビアは、けっして出来が良いとか、ぜんぜん気合いの入った最新技術を使ったクルマではありませんでした。
    技術が売りのクルマは他にありました。
    なのにシルビアは売れまくって大成功したのは手頃な価格とスタイルが受けたのだと言われています。
    あとFRだったのも買ってる大部分の人にはそんなに関係なかったと思います。
    FT86はスタイルも細部で飾ったり、走りが良くてもシルエットが古臭いから出す前から終わってると思います。
    最近の失敗例でもZ33フェアレディZが走りは荒削りでメカニズムやエンジンが他車流用であったにもかかわらず、手頃な価格とスタイルが受けて売れました。
    モデルチェンジしたZ34フェアレディZは中味はZ33に比べて最初からかなり良いのに、たぶん子供っぽいスタイルなど、走り屋みたいなクルマ好き以外の浮動票の食指が動くスタイルではないからか販売的には終わっています。
    それと同じようにFT86は、手頃な価格とクルマ好き以外の浮動票の食指が動くスタイルではないから、いくら走りやメカニズムや細部の出来が良くても大失敗するに決まっています。
    2リッターならアルミやエアロにオーディオなどをオプションにして、二百万円未満からの価格にし、なおかつ浮動票の心をつかむ気合いの入りすぎていない硬派軟派の調和の取れたオシャレでカッコ良いクルマにならなければダメでしょう!!

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