トヨタ、なぜ急に電気自動車路線へ切り換えたか、とよく聞かれますが
トヨタの電気自動車発表回後、一般メディアからの質問が多い。典型的なのが「どうしてトヨタは突如方針変更したのか?」というもの。皆さん「今まで豊田章男社長は自工会の会見などで環境問題を解決するなら電気自動車だけで済むものではない」とか「雇用を失う」と言ってきたのになぜ、と言う。こらもう簡単。とっくに電気自動車を量産する計画を持っていたからだ。
初代プリウスを買った時からトヨタ電動化技術の取材をしてます
最初の動きは2010年に遡る。トヨタは中国のレアメタル輸出制限を受け、大きく揺らいだ。この時からクルマ作りには資源の確保が最も重要だという経験値を得たと言って良い。トヨタ自らは材料調達を得意としていないため、豊田通商などを通して動き始めた。電気自動車で最も重要となるの、言うまでも無く電池調達である。電気自動車を作ろうとしたら、資源も必要。
トヨタ通商はリチウムを確保すべく動き出しており、私が知る限り2022年時点でリチウムの原料になる炭酸リチウムを5万トン程度生産できる体制を整えるようだ。ちなみに炭酸リチウム5万トンで電気自動車80~90万台分になる。2030年に350万台作ろうとすれば20万トン程度の炭酸リチウムを調達しなければならない。豊田通商は2010年から動き出しており本格稼働は2018年。
豊通リチウムのプラント
とはいえ2018年くらいまでハイブリッド用の電池というイメージだったと思う。その後、電気自動車を想定した調達量に変化していく。今年5月の時点では「2030年までに200万台」だったので12万トン程度を確保出来る見込みだったんだと思う。そして直近になり、20万トンのメドが付いたのかもしれません。とにかくリチウム無しじゃ高性能電池を作れない。
リチウムを穫るアルゼンチンのオラロス塩湖
じゃなんで自工会会長は電気自動車だけじゃダメだと言ってたのか? ここから私の推測なのだけれど、1)エネルギー戦略をキッチリやらないと自動車産業は外国に逃げざるを得ない。2)結果的に日本の雇用が減る、ということを主張したかったんだと思う。されど我が国の政府は本日時点でも抜本的なエネルギー戦略を打ち出していない。2030年に原発22%なんてあり得ないです。
そうこうしているウチ、トヨタの評判はドンドン下がって行く。欧州CAFEの平均燃費で世界一ながら、世界TOP10メーカーで環境対応度最下位という勲章も貰ってしまった。いわゆる「モハヤコレマデ」です。先日の発表会で国内雇用は減るかもしれない旨、明言している。トヨタの電気自動車戦略は3年くらい前にスタートしていたと思う。ここにきて150万台上方修正しただけだ。
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