トヨタの決算発表を受けたメディアの報道、なかなか興味深い
トヨタが2023年度(2023年4月~2024年3月)の決算を発表した。以前から「営業利益で5兆円は超える」と書いてきたけれど、そいつを大きく超える5兆3529億円。前の年が2兆7250億円だったので、ほとんど2倍。増益の要因は決算報告によれば営業努力で2兆円。為替差益で6850億円。営業努力の主因は商品力と値引き幅の縮小(インセンティブを含む)である。
これを受けた大手メディアの評価が興味深い。朝日新聞デジタルは「背景には三つの要因がある。円安、好調な販売、そして値上げだ」と書く。前の2つは物理的なことなので説明不要。3つ目の値上げについちゃ悪意がにじむ。トヨタ、本当に2兆円の増益になるほど値上げしているか? 私らから見るとトヨタはどのメーカーより値上げ幅が少ない。材料費程度の値上げです。
じゃなんで2兆円か? 直近のトヨタを見ると完全に需要が供給を上回っている上、3年くらい前から投入する新型車全て人気車になっている。アルファードやクラウンなど、利幅の大きい上級グレードしかラインナップしておらず、加えてほとんど値引きしなくていい。カッコ悪いクルマ出して売れ行き落ち、安いグレードを値引きして売るビジネスの反対です。単なる値上げは乱暴な内容だ。
もう一つの「なんでそうなる?」が、ネガティブ評価。筆頭はロイターで「トヨタの今期、2割の営業減益予想 成長領域などへの投資膨らむ」だって。「8日に発表した2025年3月期の連結業績予想は営業利益、純利益とも減益見通しで、いずれも市場予想を下回った」と続く。ブルームバーグも「今期の営業利益は前期比20%減の4兆3000億円を見込むと発表した」。
調子の良い企業の足を引っ張る報道はニーズある。実際、5月8日の株価は2023年度の営業利益5兆3529億円を受け上昇したが「2024年度は1兆円以上の減収」という状況が投資家に広まると株価ダウンとなった。まぁトヨタからすれば勝手にどうぞなんだろう。最近自動車メディアも一般メディアも同じ記者会見の時間を分けなくなった。質問を聞いてるとトンチンカンです。
2024年度の方向性についてトヨタは電動化時代に向けた投資の拡大と、1兆円規模の自社株買を発表している。商品の準備に時間が掛かる自動車メーカーにとって最も重要なのは2024年度の決算じゃなく、2030年や2050年に続く次世代の投資や技術だ。ロイターもブルームバーグも短期投資家向けの情報。新NISAなど考えたら自動車産業はもう少し長いスパンで評価すべきです。
ということでロングスパンのトヨタだけれど、強みは中国を除く世界中でバランス良く売れ行きを伸ばしている点。これくらい堅調な自動車ビジネスは見たこと無いほど。円安終わり1ドル=135円になったって濡れ手に粟の6850億円が無くなるのみ。ちなみに2023年度決算の為替レートは145円という。今の円安が続けば続くほど為替差益は大きくなっていく。ハイブリッド人気はさらに拡大中。
2024年度の営業利益が減るのはむしろ浮ついていないという点で高く評価できる。
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昨晩 BSの経済番組でトヨタ決算を受けての自動車セクターについて話していたのを見ていて思ったんですけど
新聞系の記者や証券系のアナリストが出て来るんですけど
この人たちに共通するダメな点は 普段クルマのステアリングを握っていないというのが 見えるんですよ。
昨晩のケースでは クルマの内装についてのコメントで
良く分かりました。
自分は テスラのどこが嫌いかって 内装ですよ
あんな内装デザインのクルマ使いたくもないし ましてや自己資金で購入なんて考えられません。
記者やアナリスト 要は 自分でクルマを運転しないんでしょう テスラを買う人たちって クルマの運転が好きじゃないんでしょう 出来たらクルマの運転なんかしたくないという人種なんですね
先日テレビドラマで、自分で取材することなく、自宅のパソコンでネットネタを集めて記事を書くライターを「こたつライター」と称していて、大笑いしました。
天下のマスコミの記者さんも、いよいよ「こたつライター」レベルまで落ちてきましたよね。
政治でも経済でもスポーツでも、素人でも聞かないような陳腐で意味不明な質問が飛び出しますもの。
加えて、自分の考えたストーリーを正当化するべく、都合の良い情報を集めて、まことしやかに記事にするからたまらない。
この手のまやかしは、夕刊紙や芸能雑誌の専売特許かと思っていたけど、大マスコミもいよいよ同じ穴のムジナですもの。クワバラクワバラ。
朝日新聞は自社の購読者数の減少と収益構造を分析した方がいいんじゃないですかね。そんなに値上げが影響するなら、新聞も値上げして本業の収益性を回復させればいいのに。