夢が必要
自動車で最も大切なのは「夢」だと思う。というか夢の無いクルマって単なる「道具」だ。VWゴルフ7の欧州COTY受賞の後、ハッケンベルグさんという技術担当TOPのスピーチを聞いた。めでたいことなのでアップテンポになるかと思いきや、驚くほど訥々とした口調である。そこでハッケンベルグさんは夢を語るのだった。
要約すれば「自動車は今後も人と良い関係を保ちたい」。自動車産業は雇用という大切な役割を受け持つ。環境問題も大切なテーマだという。そこには「クルマをたくさん売って利益を上げる」というより「人の幸せを担う。人と共生したい」という気持ちが強い。現在の自動車の環境からすれば、最も大切なことだと考える。
夢は時代によっても変わっていく。ハッケンベルグさんのボスであるピエヒ会長は「1リッターで1kmしか走らないクルマと、1リッターで100km走るクルマを作りたい」と言っていた。ピエヒさんの世代はエンジニアリングの追求が夢だったワケ。実際、全開すれば1kmしか走らないベイロンと、100km走るXL1を作った。
だからこそVWはこの数年で大きな飛躍を遂げている。ただ次世代の経営陣の舵取り次第で厳しい状況になってしまうことだって大いに考えられます。なんといっても経営陣の采配が自動車メーカーの動向を大きく左右する。良い指導者を選べるかどうかが重要。このあたりは国家とまったく同じでございます。
さて。日本の自動車メーカーの経営陣は夢を持っているだろうか? 日産の志賀さんは電気自動車についての夢を語っている。ホンダを見ると出遅れた技術の挽回に必死ながら、DNAとして夢を持っている。本田宗一郎さんに回帰出来れば問題なし。マツダやスバル、三菱自動車、スズキは機会あったら聞いてみたい。
トヨタはどうか。最近「良いクルマを作ろう」とモリゾウさんがいつも言っている。素晴らしい。されどあまりに漠然としており、勝手に解釈されている感もあります。もう少し具体的に語ってくれたらいいのに。本日トヨタのイベントで豊田市に行く。果たしてモリゾウさんの夢を皆さん理解しているだろうか?
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ドイツ人のフィロソフィーに基づく工業品が周辺諸国からださいと言われても世界では好評・信頼をおかれてるんだと思います。トヨタはクラウンのCMで何か「哲学」を押しにしてますが、正直薄っぺらいと言いたい。良い車を作りたいと思うその前に、世界一級のリコールを減らす努力をしろと思う。日本車がぱっとしないのは、創業者の哲学が知られていないうえ「自分」というのがないからかも。例えば最近のホンダは「他社のやらない事をしろ」ではなく、ステップワゴンやフィットのヒットからか「もうこういう路線で食っていこう」ぐらいにしか感じられない。でも宗一郎氏ほど破天荒な方、ホンダに限らず今の日本に出てくるんでしょうか!?
小生も技術者として世に出て30年が経ちましたが、夢や志の大切さを思うこの頃です。数年前まで勤務した自動車メーカーでは"自分のミッションを良く認識し…"と聞かされました。個々の従業員は夢を持てないのかと落胆しました。
ちなみにS社の研究所でカメラシステムの開発を始める際に「あえて10年掛けて開発せよ」と命じたのは、360ccエンジンの開発に奮闘した当時57歳の技術者で、その10年後、カメラシステムの発売開始の年にご勇退されました。小生も55歳となりました。若い技術者に「あえて10年掛けて開発せよ」と云える"夢"を具体的に云えないと…