自動車メーカーの傾向と対策(個人的見解です)まずはホンダから

最近「自動車メーカーの傾向と課題を紹介して欲しい」という意見を頂くので、新型コロナ渦が広がり暗いニュースばかりになる前にお届けしたいと思う。まず”ワクにはまった”とか”創業者の精神を失った”と言われるホンダから「個人的な意見」として分析してみたい。ちなみに本田宗一郎さんが元気だった頃の話、ホンダ精神溢れるOBの方々にたくさん聞きました。

ホンダのDNAは、意外かもしれないけれど「人の役に立つ道具作り」である。レースじゃありません。本田技研工業にとって最初の製品が「バタバタ」と呼ばれた安価な移動用手段だった。戦後余った無線発電機のエンジンを見て突如自転車に積むというアイデアが浮かんだ、と言われている。本田宗一郎さんが好んだモビリティの根っこは「安くて便利」。

写真/ホンダ

小型2輪車に「ベンリイ」という名前まで付けちゃいましたから。そして小柄な女性も乗れるという手軽さを重視した。ホンダにとって最大のヒット商品になるスーパーカブの基本理念は「買ってモトが取れる手頃な価格と、誰でも乗れるモビリティ」です。それまで2輪車と言えば男の乗り物。ホンダは跨がり易さを徹底的に追求した。徹底的な実用車だ。

今でもスーパーカブの精神は価格と女性の乗降性である。新興国に行くと、バイクって買った価格以上の実利ある道具なのだった。一昨年ベトナムに行き、そこで見たり聞いたりしたのは「ホンダを買ったら生活が豊かになった」人達。はたまた今まで大ヒットしたホンダの4輪車を見ると、同じジャンルのライバルを圧倒的に凌ぐ実用性と手頃な価格だった。

本田宗一郎さんの素晴らしさは「実用性だけじゃ面白くない」と見抜いた点にある。性能や”華”も重要な商品力だと考えた。そこで出てくるのがモータースポーツだ。競争して勝つ=性能よいということに他ならない。本田宗一郎さん自身、若い頃からモータースポーツを見てきたため馴染みもあったんだろう。会社を興した後、迷わず突っ込んでいく。

目標を決めた時の本田宗一郎さんのエネルギーは凄いとしか表現出来ない。OHVの実用バイクしか作っていなかったメーカーが世界TOPの戦いの場だったマン島TTに出場すると決めたり、F1なんか4輪車の商品の姿さえなかった時に参戦を決めた。当時のホンダの規模からすれば、鈴鹿に広大な土地を買ってサーキット作ったこともワクにはまっていない。

資料写真/ホンダ

本田宗一郎さんの物語を読むと、皆さん引退するときに涙ぐむことだろう。書き手が泣かせるような仕立てにしているのだけれど、文才ない人の記事読んでも泣ける。これはリアルに素晴らしいストーリーだからだ。一代で世界のホンダを作り上げた本田宗一郎のキャラクターや精神は全ての日本人が今でも学ぶべき点多い。日本の偉人10人に入ります。

話が感情論にズレた。ホンダの面白さは実用的な商品を根っこにしながら、夢や技術力をブランドイメージとして持っていたことだと思う。手頃な価格で買えるスーパーカブは世界最高峰のレースを戦える技術的なバックボーンを持つし、初代オデッセイや初代ステップワゴンは、F1で敵無しだったホンダだからこそ安くて便利ながらプライドを持てた。

今のホンダを見ると、少なくとも日本で売っているクルマはホンダの原点やDNAを全く知らない人が企画しているとしか思えない。ホンダの社風の一つに「引退したら潔く身を引く」。アメリカや中国市場でクルマを売ってきた人達は、先輩方の苦労を知らなかったし、引き継げなかったんだろう。ホンダの原点を間違って理解しているのかもしれません。

また、ホンダのイメージを作ってきたモータースポーツも活用しようとしなくなった。現場が頑張っているF1に対しての冷淡さときたら(さすがに経営陣は理解している)、私が本田宗一郎さんに乗り移られたらスパナ、いやモンキーレンチで殴りたくなる。本社サイドが本田宗一郎さんの精神を全く理解していないだろう。悲しいです。原点回帰を強く望みたい。

4月1日付けて大きな組織改革を行った。ホンダで素晴らしい業績を残したOB数名に評価を伺ったところ「頑張ったけれどまだまだ」とか「肝心な人が変わっていない」さらに「開発部門のポジションが低すぎる」といったことを実名入りで説明していただきました。確かに役職名が変わっただけで同じことを担当する人も多いです。さらなる変革が必要だと皆さん口を揃える。

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