10年後のパワーユニット

短期的にはエジプト争乱が収まったことで安定すると思われる原油価格ながら、いずれにしろ旺盛な需要に答えられない状況。
ガソリン価格も大きく下がらないだろう。我が国は原油依存度を下げていく必要あります。現在最も有望とされているのが、天然ガスの有効利用。天然ガスは供給過多傾向にある。

相場展開を見ても高騰する原油と対照的。なぜか? 天然ガスは使い道が限られているからだ。そのままだと都市ガスとして家庭用に使う程度。圧縮すると『CNG』となり、高圧タンクを積むことで自動車用燃料として使えるものの、航続距離やタンクの安全性を確保するためのコ
ストで乗用車用としちゃ不向き。

最も有望なのは天然ガスを加工した『GTL』で、常温/常圧下に於いて軽油や灯油と同じ液体。完全な代替燃料となる。製造コストも1バレルあたり40〜60ドルと言われており、原油相場の80ドル超えが普通になった昨今を考えれば完全にペイ出来そう。その気になれば5年後にもGTLが普及する可能性も。

加えて硫黄濃度がゼロのため、排気ガス対策も容易。軽油を使うディーゼルエンジンで問題視されているナノレベルの粒子だって心配しないでOK。いろんな綱引きによって政府が自動車用の燃料として認めようとしないだけである。ただしガソリンエンジンには使えない。ディーゼルエンジン用です。

また天然ガスは日本の火力発電の主力エネルギーといってよかろう。直近の状況を見ると、火力発電に於ける石油依存度が10%を切っている。なかでも高効率の火力発電所のエネルギーは天然ガスを使う。それなら天然ガスを使った電気自動車と、GTL燃料のディーゼルはどちらが効率いいのか?

こらもう簡単。小さい乗り物なら電気自動車。重量のある乗り物だとGTLを作る際に使う時に出す二酸化炭素を(けっこう大きい)考えてもディーゼル有利。と
いったエネルギー事情を考えると、10年後の主力パワーユニットがイメージ出来てくることだろう。大雑把に原油使用量を半分にすると仮定しよう。

ガソリンも半分になるが、燃費の良いハイブリッドや低燃費のコンパクトカー、そして電気自動車の普及によって完全にカバー出来てしまう。ガソリン価格は今の2倍になったとしても対応可能だと思う。軽油や灯油、重油についちゃGTL燃料でカバー可能。しかも排気ガスは今よりクリーンになろう。

といったことを考えると、燃費の悪いガソリン車に将来など無いことが理解してもらえるに違いない。ガソリンを使うなら最低でリッター20km/Lを超えないとダメ。車重1,5トン以上のクルマはディーゼルじゃないとお話にならぬ。これを自動車メーカーに当てはめて考えれば興味深いです。

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5 Responses to “10年後のパワーユニット”

  1. G35X より:

    仰るとおりですね! また、もう一つの利点は供給源が原油のように中近東に集中しておらず東南アジア、ロシア、北米にも大量に埋蔵されていることで、これは日本のエネルギー政策上重要な意味があります。 大型車はディーゼルエンジンでGTLを燃やす、小型車は電気で走らせる時代が来ますね! 尚、沖縄と電気自動車の項目で申しましたが、天然ガスから水素を取り出し燃料電池で発電し、電気自動車を充電するシステムも敷地に余裕がある場所から普及してくるでしょう。 高速道路のパーキングエリアでこのサービスを行えば、副産物のお湯で銭湯も経営できるのではないでしょうか。 ひと風呂浴びながら充電を待つなんていかがでしょう? ホンダのクラリティー用100キロワット燃料電池1基でリーフ20台くらい同時に面倒を見ることができるのでは? 後は燃料電池の価格しだいです。 最近パナソニックから発売された改良型エネファームは750ワットで270万円ほどの価格にまで下がってきました。

  2. ぱんだねこ より:

    今回のコラムを読むと昔ホンダが推進しようとしていた、大型はディーゼル、小型はハイブリッドという戦略も生きてくるのではないかと思いました。ただ、今まで儲かっていたアメリカはディーゼルが嫌いで、これから儲かりそうな中国はよくわからず(EVとか言ってるし)…なので難しいと思いますが。
    ディーゼルを持っている三菱にも日が当たるといいですね。

  3. さね より:

    最近おもしろい記事を読みました。とある有名なプロデューサーがヨーロッパに行ったら広場やその回りに1台も車がないので、地元のガイドに聞いたら、その日は車に乗ってはいけない日らしく、また物凄い勢いで路面電車が復活してるらしい。欧州の人はエコ自動車どころか車その物、乗ることがいけないとゆう考えがポプュラーな考えに移行しつつあるらしく禁煙の次は禁車がくると… どこまで本気のコメントかわかりませんが、かの地の久々は禁煙の時も極端だったし、世界中に同じこと要求するゴーマンなとこあるので、あながち本気で禁車運動が起きそうな感じもします。 10年後、動力、燃料はなんでもいいですが、日本の似非エコカー減税や、なんかハイブリッドカーは最高のエコカー的ブームの日本に禁車ブームが飛び火しないようにどうか。

  4. 真鍋清 より:

    我が意を得たり!
    小生も先ほど、愛車ヴィッツ1300U-L/84132km走行にまたがって浦和の三菱に行ってきたのですが、個人的に最も気になる日本車の一台・三菱ギャランフォルティスの売れ行き改善策(というよりカンフル剤)として欧州で展開されている2.0Lのディーゼルを新長期規制に合わせて日本でも展開し、やがてはGTL燃料で走らせるという流れにしていけば三菱製セダンの市場での評価も回復し、一廉の地位を築きうるということを伝えてきたほどです。
    また、2009年にフルチェンジして以来全く売れないホンダアコード、これもディーゼル並びに同ハイブリッドで国内でも世界でも大いなる評価を得られるかと信じて疑いません。ホンダ自身で開発中のリチウムイオンハイブリッドに限らずディーゼルの中大型車分野への本格展開へと発展させれば往年のアコード人気、ホンダ人気を盛り返すことができるかと思うにホンダの経営戦略はどうなっているのか疑いを禁じえないものです。
    さて小生の愛車ヴィッツ1300/2004年式はガ行のエンジン音をまき散らしながらも弾けるように加速し、フェードと無縁のブレーキで「小粒ながら頼れる足」として当方の体の一部に成り切っておりますが、10年後と言わず数年後にはヴィッツ電気自動車がパナソニック製18650リチウムイオン電池や東芝SCiB電池(いや三洋製の方が有力か)を動力源に走り回っている場面が想像できるほどです。いや当方としてはこのクラスにもディーゼルターボを展開してもらいたいと切望しているのが本音です。
    我がヴィッツも3月辺りをメドにCVTフルードの飛燕製への交換とミッション本体の全面清掃をスーパーオートバックスにて受けてもらおうと企てておりますが、これによって燃費が大幅改善され、目下の10.8km/lから14-17km/lまで向上して12万kmまで乗って行こうと思います。早くて同車が12万kmに近づく頃にはGTL燃料の精製計画の話で業界中がもちきりな一方、国産メーカーもディーゼル開発ラッシュが始まっているかと考えるにエキサイティングでならないのと同時に現時点での花形「ハイブリッド」がどのような方向に進化しているか期待を隠せないものです。

  5. ゲイン より:

    やっぱり捨てきれない思いがあります。それは例の藻です。石油を産み出す藻があったらカーボンニュートラルの観点からも、かなりエコです。10年じゃどうにもならないかもしれませんが、実用可能かどうか分かる頃だと思います。
    他所の掲示板で車の屋根に藻を繁殖させて、そこから得られるガソリンで車を走らせてみたいというアイデア見た事があります。あり得ないかもしれませんが、夢があるなーと感じました。
    技術的な発展も期待しますが、利益が絡むと政治が絡んできます。エネルギー問題が解決すれば、世の中平和になって利益を分けあう余裕が生まれるんじゃないでしょうか。

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