潜水艇タイタンは270気圧程度で圧壊した? MIRAIの水素タンク、2400気圧に耐える

軍事筋によれば潜水艇タイタンは2700mあたりで圧壊したという。潜水を開始して1時間45分後に通信が途絶えたという。時間軸で考えたら整合性あります。TVに出ていたコメンテーターが「タイタニックに引っかかって浮上できない」なんてことを言っていたけれど、タイタニックって3650mの海底あるため通常3時間掛かる。1時間45分で行けるワケありません。

写真/OceanGate Expeditions

軍事関係者なら誰でも知っているとおりタイタニックが沈んでいるあたりはロシア潜水艦の通り道になっているため、性能の良い『ソーサス』(潜水艦の音を聞くシステム)を設置してある。圧壊する音は大きくて特徴あるため、すぐ解ったと思う(日本近海にも高性能のソーサスが張り巡らされている)。ソーサスの性能は機密。圧壊音を検知しても基本的には公表しない。

そうそう。圧壊を「爆縮」と言っているメディアもあるけれど、日本語の爆縮は中心に向かって均等に圧力を掛けることを示す。原爆を使い水素をプラズマ状態にするような時に使う単語だ。今回のような潜水艇が水圧で潰されるような事故は圧壊と言います。おそらく当初「爆発してバラバラになった」と報じたものだから、爆という字を使わないと引っ込みが付かなくなったんだろう。

圧壊は気体のある場所が潰れてしまうこと。タイタンの気密部分を見るとMIRAIの水素タンクのような形状をしている。飛び散っているのは本体に取り付けられていたパーツでしょう。固体(人間の身体も空気の入っている場所を除けば圧力掛かっても潰れない)は圧縮されない。圧壊の瞬間、空間が無くなったと思う。痛みを感じることもなく外殻に潰されたと考えます。

タイタンの構造についてアレコレ言うヒトもいるけれど、何度か3650mまで潜っているため基本的な性能は確保出来ていたと思う。「カーボンじゃだめ。細長くちゃダメ。球形のチタン以外ダメ」と解説してた人もいるけれど、MIRAIの水素タンクって細長いタンク形状のカーボン製。800気圧(水深8000mと同じ)を200回以上出し入れするが、問題無し。

MIRAIのタンクの基準は2400気圧!

しかもMIRAIのタンクは3倍の圧力に耐えるらしい。世界一深い海溝に持っていっても全く問題無し。MIRAIのタンクを開発した人に聞いたのだけれど、もし壊れるとすれば相当な衝撃を受けるなどしてクラックが入った時だという。今回3650m潜れる構造なのに2700mで圧壊したというのなら、ハル(艇体)そのものにキズが付いていた可能性大。継ぎ目から浸水すると圧壊はしない。

また安全性について批判する識者も多いけれど、危険な行為だと言うことは皆さん認識していたと思う。宇宙ロケットや登山やモータースポーツだって同じ。茶の間でTV見てるだけの人や、リスクを取らない人だと理解出来まい。だからこそ我が国はいつになっても宇宙ロケットに人ばかりか猿さえ乗せられないのだった。こういったフロンティア精神こそ大切だと思う。

欧米人はこういった事故を経験してもチャレンジを止めない。構造が、認可が、とか言う人など居るけれど、オーナーも乗っていたんだから自信あったということです。4000m以上潜れる有人の潜水艇は世界に10機しかない中、基準なんか自ら作るしか無いですから。イヤなら乗らなければいいだけ。茹でガエルになってる人には理解出来ないと思う。

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4 Responses to “潜水艇タイタンは270気圧程度で圧壊した? MIRAIの水素タンク、2400気圧に耐える”

  1. おしお より:

    カーボンで耐圧と聞いて、私もMIRAIのタンクを思い浮かべました。軽量にできれば、浮上に有利だと思ったのでしょう。複合素材とは言え、水素が漏れないのだから何とかなるのだろうと思いました。
    創業者のハングリーな一面はたたえられていますが、お金を取ったツアーだったり、技術的な成立性に関して周りに耳を貸さなかったり、といったところが責められていますね。

  2. たつ より:

    一点疑問があります。
    MIRAIのタンクは内圧に対して2400気圧耐えるのに対して、潜水艇は外圧に対して耐えなければならないので、比較は出来ないのではないかと思いますがいかがでしょうか?

  3. z151 サンバー愛好者 より:

    軍事機密に触れる為なのか欺瞞情報とか情報発表タイミングの遅れとかがあって、潜水艦分野って複雑だなと思っていました。

    アポロ計画辺りからこの方、宇宙ロケット分野では「打ち上げ成功率90%」説というものがあるとか。
    成功率が高そうで10回に1回は失敗するという可能性は、人命が掛かると無視できない確率でもあります。
    宇宙飛行士が原則として軍人の肩書を持つのは、恐らくその辺りも関係していると思われます。
    ついクルマで考えてしまうとテスラってこういうとこ有りそうだなとか思ってみたり。
    高性能だし、スーパーチャージャー(充電器)も凄いし、削り出し?に見えるフロントハブ回りやサスペンションアームリンク類とか見ると涎が出そうです。(笑)
    でもテスラってナンバー付きの試作車(試作評価車)だと思うし、オーナードライバーはどうしても車両代を支払ったテストドライバーに見えてしまうんですよね。
    テストカーなので不具合案件も命を失うような事故も織り込み済みみたいな対応。
    その割に詳しく原因調査しないようにも思えますが。

    閑話休題。

    潜水艦が詳しい分野でないことを承知でニュース一連を確認して思ったのは、「まあ海中の潜水艦(破片含む)を探すというのは、砂漠から砂粒を見つけ出すようなものなのかも」ということでした。
    30分ごとに激しくノックするような音がしたなんて情報もあったり、アメリカ海軍が投入された割には艦の位置を特定できないなんてあるのかな?と素人ながらに思っていました。
    作戦深度とか全然違うので勝手が違うっちゃ違うのでしょうが。
    とか何とか考えていたら、艦の圧壊音を探知していたというのである程度アメリカ軍は把握していたということでしょうか?

    こういう本来ならば厳しい訓練を行なった上で領域に到達する冒険分野に、お金を出せば容易に手が届くというのが魅力であり、富裕層向けビジネスに結びつくのかも。
    航空機感覚で行くことができる宇宙旅行みたいな。
    普通のグランピング感覚でヒマラヤ登山できたりするとやっぱり盛り上がりそう。
    理論上は可能とされる宇宙エレベータービジネスとかもお金が動きそうです。
    しかし世界最高峰の山でさえ8800m余り。
    深海といって海底深度4000m程。
    我々人類は地球の表面にへばりついて生きているに過ぎないことを改めて実感させられます。

  4. ハヤミ より:

    私は疲労破壊と思っています。
    メディアは適当なことを流していますが、何度も高圧が掛かればストレスが重なり、そのうち今まで耐えられた圧力に耐えられなくなり破壊します。
    実験データーがあれば、何回の潜水に耐えられる能力があるか判別出来ると思いますが、今ではシミュレーションでもある程度予想は出来るかと思います。
    今回のことが良い教訓になればと思います。

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