全固体電池ってゲームチェンジャーなのか?

全固体電池のニュースが流れる度にメディアの皆さん「伝家の宝刀」というイメージを持つようだ。第二次世界大戦でいえば劣勢をひっくり返す富岳や震電ですね。本当に全固体電池はゲームチェンジャーなのか? 冷静になって考えてみると、なかなか厳しいような気がする。伝家の宝刀を抜いてみたら、敵も同等以上の切れ味持つカタナを持っていた感じになりそう。以下詳しく。

全固体電池を開発しているのは日本だけじゃありません。韓国を見ると日本より少し遅れ気味ながら猛追しているし、中国は間もなく半固体電池を出すという情報もある。半固体電池、従来のリチウムイオン電池と全固体電池の中間くらいの性能を持つと考えていいようだ。中国、日本や韓国より安全面やコスト面のハードルが圧倒的に低い。数年スパンで考えたら侮れない。

また、全固体電池は材料価格を含む調達コストが三元系リチウムイオン電池の5~10倍になると言われている。だからこそトヨタもレクサスのようなプレミアムブランドの、しかもスポーツモデルや最上級モデル用として考えているようだ。手軽に買えるガソリン車の代替として使えるような価格になるの、下を見て10年は掛かりそう、そうなれば生産規模で中国有利になる。

三つ目は電力コスト。全固体電池が有利なのは、100kWhを超えるような大容量タイプを小型軽量で実現出来ること。100kWh以上の電池を充電しようとしたら、とてもじゃないが200Vじゃ無理。6kWで10時間入れたって60kWhしか入らない。当然ながら高性能急速充電が必要になってくる。350kW級の急速充電器なら12分くらいで70kWh入るものの、急速充電器+電気代は高い。

そんなことから、当面は1000万円を軽く超えるような高価格帯用の電池になると思う。加えて普及する状況になったとしても、日本製の電固体電池は輸出出来ない(国が農業製品など保護するため強気に出れない)。一方、大量生産で安くなった中国製の全固体電池は入ってくる。価格競争力で勝負にならないです。実際、トヨタはバイポーラ型リン酸鉄電池を主役にしようとしている。

というか安価で燃えず長寿命のバイポーラ型リン酸鉄電池こそ日本車の価格帯の電気自動車用電池としてゲームチェンジャーになると思う。ちなみに全固体電池の普及は10年以上先になるだろう。安価で長寿命の全固体電池が出てくれば、これまたその時点でのゲームチェンジャーになります。電力コストもマイクログリッド用の畜電池として使うことで今よりずっと安くなるに違いない。

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6 Responses to “全固体電池ってゲームチェンジャーなのか?”

  1. アミーゴ5号リボーン より:

    パソコンやネットの世界では、CPUや通信速度が世代毎に飛躍して、世の中をゲームチェンジしていきました。

    その大前提にあるのは、性能やサービスが大幅に向上しても、パソコン価格や通信料はさほど変わらないということ。

    エンジンからEVに大きくゲームチェンジする際も、おそらく同様だと思います。

    全固体電池への期待感が極めて大きいのは、低コストというふれこみだったからですが、値段も相応だとするとなかなか厳しいですね。

    もっとも、本当にトータル(原材料〜製造〜維持〜廃棄)で見て、本当にEVがカーボンフリーで環境に優しいのかどうか、誰も科学的に示していないのではないかと思っています。

    最近の欧州勢の後ろめたさを見ると、バッテリーはバイオ燃料とドッコイドッコイ、いやバッテリーは希少原料やら発電設備を伴う分だけ、バイオ燃料より環境性能で劣るのではないかと、直感的に妄想しております。

    • アイナポイント より:

      EVかICEかという議論ではなく、全固体がゲームチェンジャーにはなり得ないという話。
      ICEにこだわるからこそのバイオ燃料開発。EVもやりバイオもやる、その配分はどうなのか考えないことには、EV専業に追いつけない。全く別物だから、工場を共有するわけにもいかない。

  2. 黄色のジューク より:

    昔、薄型テレビで液晶やプラズマがブラウン管に画質で劣るとされて、それを上回るという評判でCanonが開発中のSEDが本命視されていたときと似ている気がします。
    SEDも夢のディスプレイ、ゲームチェンジャーとしてマスコミで報道されてましたが、開発中に液晶やプラズマの欠点が改良され、かつ量産効果でそれらのコストが低くなり、またSEDが特許でトラブルもあるなどして、結果として評判倒れで終わってしまいました。
    全固体電池も同じ結果にならなければ良いのですが。
    トヨタは現実的ですね。

  3. たかきゅ〜 より:

    まさに仰る通りかと思います。
    何にしても日本はこんなすごいものを開発、実用化しようとしてるぜ、的なことをよく言う方がいますが、実はそれ、中国や韓国、アメリカ他も必死にやってる。

  4. 猫まんま より:

    リチウムイオン電池が全個体電池になっても車の走行系がエンジン+化石燃料からモーター+バッテリーになるだけでゲームチェンジャーとは言い難いと思います。
    PCの世界はそれまでソフトをハードに入れて使用するという運用がブラウザさえ有ればハードに依存しない環境が出来上がってから革命が起きました。それこそ画面サイズさえにしなければほとんどのことはスマホやタブレットでできるようになりました。もはやPCなんて一部のマニアかビジネスの道具に過ぎないです。ナビもgoogleMapとかで十分だしキーボードも音声入力が当たり前に使えるようになりました。
    車の場合はそれこそタイヤを回して走る車が空飛ぶ車になって普及しないと革命では無いでしょう。20年先か30年先あるいは5年先かもしれませんが空飛ぶ車が普及してその動力源として全個体電池が安価に普及すれば世界が変わると思います。
    まあその時点でも日本だけは「安全が確保出来ない」とか「事故が起きたら誰が責任とるのか」とか「うちの管轄ではない」とか言ってて世界に取り残される未来しか見えないんですが。
    日本の一番の問題点は新しいことを認めない役所というか国そのものだと思います。
    かなり昔にどこかの人が水陸両用車を作ったら管轄じゃないから認可出来ないとかで認可されなかったとかありましたね。その後はどうなったんでしょうか?

  5. ボヤキ爺 より:

    クルマを走らせるための燃料や電力は、ガソリンスタンド、水素ステーション、EVステーションというところに行って供給を受けてくださいというのが、トヨタさんの発想なんでしょうね。
    だから、長距離移動を可能にすることを大事にしているんでしょうね。
    でも、それって普通の通常の使用を考えたとき、ちょっと違うんじゃないかと思うのです。
    私がもし満充電で1000Km走れるバッテリーを搭載した車に乗っているとして、どういう充電を考えるかと言うと、「200Vで、3Kwh/時で一晩で満充電近くになるぐらい走ったら充電、それを繰り返すでしょうね。
    つまりは、1000Km走れようが、200Km走れようが使い方は同じということです(これは、あくまでも普通充電での話。急速充電中心で使用する場合は、20%から70%ぐらいの間を使って、充電能力の良いところを効率よく利用すると思います)。長距離の旅行では、そりゃあ1000Kmがものを言いますが、もし宿泊先で普通充電があるのなら、それを計算に入れた途中急速充電を済ませておけば良い。
    そう考えると、40Kwhや50Kwhぐらいのバッテリー容量が、値段やバッテリー重量、使い勝手からちょうど良いのではないでしょうか。
    なので、バッテリー容量より、充電インフラの充実に力を注いだほうが、よりEVの普及のために必要なんではないでしょうか?

    決して高性能なバッテリーの研究や製作を否定しているのではありません。全固体電池が登場したらゲームチェンジャーになるとかってことより、今のバッテリーの能力でも、充分魅力的なBEVが作れるのに勿体ないってことです。だって、多くの人はトヨタのBEVを待ってるのですから。

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